2012年 100km Walk

 
◆荻野 元希(一般参加・ゼッケン:2)

晴れの国 おかやま 24時間・100キロ歩行レポート             2012年5月24日
「人の温かさを知り、友情の強さを教えてくれた100キロ」




 大会前日、能登先生に政経塾へ連れて行っていただいて、事務局長の小山さんに「お前の100キロ歩くにあたっての目標はなんや」と言われました。僕は「目標ですか……無いです」と言うと、「目標がない結果はないで!」と一喝されたのを覚えています。目標どうしようとずっと考えながらそのまま家に帰りました。そして一晩考えた結果。今回の歩く目標は「自分を見つめなおす」に決めました。高校野球が終わってから何か糸が切れたように垂みきっていた生活や自分の心をもう一度引き締めなおそうと心に誓いました。

 大会当日。後楽園に着くと、保育園で仲が良かった祐貴がいました。1人で歩くのかなと思っていたのでとても心強い仲間でした。案外リラックスして祐貴と一緒にスタートをしたのを覚えています。最初の10キロは余裕でした。「これ10回か、余裕だな〜」などとも思っていました。
 20キロもまだ喋りながらどんどん歩ける程度。しかし30を過ぎたあたりから太ももに違和感を覚え始めました。既に嫌な予感でいっぱいです。山越えして備前体育館に着いて、休憩をして、さあ行こうと思い立ち上がろうとしました。しかし立ち上がれませんでした。筋肉がカチコチです。嫌な予感的中でした。

 とりあえず別れて歩いてみよう。と提案され、自分が先行しました。今思い出すと49キロ地点の伊里漁港に着くまで100回は振り返って祐貴を探していた気がします。ここら辺りから日が沈み始め、真っ暗になりました。脚は既にボロボロで一歩が辛く、炊き出し目指して夢中で歩いていました。そしてやっと伊里漁港へ。着いた瞬間、ここゴールでもいいのでは・・とも思った。後に祐貴が来て、少し休憩をして二人で行くことにしました。今思えばここで祐貴を誘わなかったら危なかっただろうなと思います。



 足の痛みに耐え耐え、閑谷学校へ着きました。一番に目にとまったのは大型バス。心の中では「あれに乗ってしまいて〜」と連呼していましたが、なんとか誘惑には負けず歩き始めました。

 そして一番記憶に鮮明に残っている閑谷〜リバーサイド区間。この区間が一番メンタルをえぐられた気がします。暗闇なので自分が歩いた距離感がわからず、2人で「あれがゴールか?」と言って、歩いていって違い。これを10回は繰り返しました。ゴール何処や・・・状態。意識朦朧で歩いていると、あの橋を渡ったら炊き出しだよ!と誘導さんに言われ、炊き出しへ必死に歩きました。着いた瞬間に食らいつきました。食べている途中、サポートの方々が仏に見えました。足はもうプルプルカチコチ、そして大型バスの誘惑。寝袋を渡され「あ、リタイアの流れだ」と思いながら寝てしまいました。

 祐貴は先へ行ってしまいました。「このまま寝よう、リタイアだ」と思っていると、ふとスタートの時の「絶対一緒にゴールしよう」という祐貴との固い約束を思い出しました。と同時に飛び跳ねて、サポートの方々に挨拶し、急いで祐貴を追いかけました。祐貴はすぐに見つかりました。後ろから見ていてもわかるくらい足をひこずっていました。追いついて「やっぱ一緒にいこう」と言って2人で絶対ゴールすることを再確認しました。そしてなんとか冷凍倉庫前へ。祐貴のマッサージを待って、急いで出発。この時、後20キロで残り5時間でした。もう身体は言うことを聞いてくれないけど、何とか足を前に出しました。

 90キロを過ぎた辺りから能登先生が付き添いで歩いてくれました。精神的に助かったし物凄く心強かったです。後輩のじゅんぺいさんも車で駆けずり回って本当に感謝ばかりです。
 途中から先の見えない道ばかりで祐貴が愚痴り始めてきて、いつか併走してくれている能登先生が爆発しそうだな・・・と思ってちょっとハラハラしていたのを覚えています。街中へ入ってクレドを目指してずっと歩きました。いつになっても近くならないクレド。歯がゆさと痛みで頭がおかしくなりそうだったけど、祐貴が足をひこずってまで自分たちをリードしてくれている姿を前にし、「俺も負けるものか」と何度も思いました。そして後楽園が見えてきて能登先生の「よくやった、もう間に合うぞ!」の一言で一瞬グッときました。

 そしてゴールテープを祐貴と一緒にきりました。ゴールした時には両サイドにお世話になったサポートのみなさんが拍手で迎えてくれた。家族も迎えてくれて本当に嬉しかった。
書きながら振り返ってみると本当に100キロを歩いていたら自分のダメなところが見えるなと思いました。きつくなってすぐに弱音を吐いて少し休憩すること。やっては駄目だとわかっていたのに誘惑に負けて仮眠をとってしまったこと。弱い自分がとことん出た100キロだったなと思います。そして自分を見つめなおすこともできました。部活とはまた違うキツさ。そして達成感。これは生まれて初めて味わったものでした。この経験は一生忘れないだろうなとゴールの瞬間に思いました。

 今回、祐貴とサポートの方々には言葉では足りないくらい感謝でいっぱいです。24時間いつくるかわからない人をずっと待つのは本当に大変だろうな。と歩いていてずっと思っていました。炊き出しをしていただいた方も、誘導をしていただいた方も、マッサージをしていただいた方も本当にありがとうございました。そして祐貴も本当にありがとう。1人じゃ絶対に歩けなかった。そして能登先生。こんな自分を見つめ直せる企画へ参加させていただきありがとうございました。
 そして、次はサポートしてもらった自分がサポートする番だと思い、次はサポーターとして人の役にたつと決めました。