2012年 100km Walk

 
◆山本 博己(岡山政経塾 11期生・ゼッケン:49)

晴れの国 おかやま 24時間・100キロ歩行レポート             2012年5月11日
「自信過剰、練習不足が痛みを生む」



1.100km歩行に向けて

 岡山政経塾11期生として、まず乗り越えなければならない壁だった。100km歩行の過酷さは何となくは分かる。先輩方の体験レポートを拝読しその過酷さを想像もしたが、明らかに自分の体への過信があり、余裕で完歩できるとの根拠のない自信があった・・・ 



2.準備・本番において良かった点

 (1)「ゴミ拾い」を宣言、やり遂げた!
  入塾式後の懇親会で「ゴミ拾いをしながら完歩します!」と宣言していた。心が揺れないようにMLなど文章上でも宣言し、ゴミ拾いが理由でのリタイアも含めて覚悟を決めていた。歩行中は、ゴミを拾いながら歩くということでサポーターの方々や同期、一般参加の方々からも励ましていただき、それが歩く活力となった。結果、0-50kmおよび95km-ゴールの区間においてゴミを拾いながら歩けた。

 (2)ゆる体操、および歩き方の改善
  友人の整体師に指導してもらった。まず全身の筋肉を緩める。そして、大腰筋とその拮抗筋であるハムストリングスの上の方を使うことを意識することで、筋肉や関節への負担を減らすことができた。また、運足、体重を載せる箇所を意識することで、筋肉をできるだけ緩めることができ、練習会などで筋肉の張り、関節などの痛みを感じることはほとんどなくなった。

 (3)バイクでの下見
 下見会だけでなく、バイクで100kmコースを1周。どこで曲がるかを熟知できた。かなりの心の余裕につながった。

 (4)靴
  NBのランニングシューズ(M993 USA)、およびオーダーメイドのインソールをすでに購入し、3ヵ月ほどかけて足に慣らしていた。同じNBでも足裏部の裁縫がセンターになされており、踵が左右に揺れないようになっているモデル。そしてオーダーメイドのインソールで足裏のマメはゼロ。

 (5) 物の準備
 ・ボルダ―スポーツ
 ワセリンと同じ効果を持つボルダ―スポーツを足裏、乳首、肩、腰、臀部、太ももの裏など、服との接触でよく擦れる箇所にしっかりと塗りこんでおくことで、マメや服ずれを防ぐことができた。
・5本指ソックス
 マメの防止には必須。
・ パワータイツ(CW-X)
 および膝や腰への負担が軽減されたと思う。
・タオル
 腹巻代わりにしていた。お腹が弱い方には必須かも。

 (6) 歩行中、こまめなエネルギー補給
  喉が乾く前にスポーツドリンクを一口、10km毎に持参した玄米梅干しおにぎりかバナナ、25km毎に脂肪の燃焼を促すヴァームを摂取。エネルギー切れは無かった。
 
 (7) 政経塾11期生のネットワーク、情報共有
 MLや facebook 、共有ドキュメント、そしてグループミーティングなどを通して100km歩行に向けての情報を11期生で共有していた。心と物の準備の面で非常に助けられた。諸先輩からの情報も11期で共有することができ、前述の(5)(6)などはまさしく共有していた情報からセレクトしたものである。グループのネットワークを作る積極的な働きをしてくれた同期の岸川さんに感謝する。




3.悪かった点

 (1) 練習不足 「自信過剰がリタイヤをもたらす!」
 2週に1度ほど参加、練習総量80km程度で明らかに練習不足。週2回は必ず参加、そして計200km以上は歩いておくべきだった。自信過剰が練習不足を生み、練習不足がラスト25kmでの関節や靭帯の激痛をもたらした。 練習会の意義はただ単に速く歩けるようになることではなく、100kmもの長距離歩行に耐えうる足腰の筋肉、関節、靭帯を鍛錬するものである。一度に20km以上を歩く練習は関節や靭帯などを鍛える意味では必要かもしれない。100km歩行に参加を決めたら早いうちに一度30〜40km程度歩いておくべきかも。自分の体がいかに弱いか知ることができ、その後の練習への取り組み方が明らかに変わると思う。

 (2) ペース配分のミス
  練習会で8.0km/hほどで歩けてしまったばかりに自信過剰になり、前半で速度を上げすぎた。



4.100km歩行本番

 (1) 0-30km
  まったく余裕。ゴミ拾いも順調。10kmまで速度は6.2km/hで明らかにハイペース。20kmと30kmのチェックポイントで家族が応援に来てくれていた。これほど力になるものはない。

 (2) 30-40km
  足全体に痛みが出てくる。歩き方の工夫からかペースは落ちない。

 (3) 40-50km
  ゴミを拾う量が激減、日没を前に気持ちが萎えてくる。途中、事務局長の「おい!がんばれ!」の声に涙が出る。

 (4) 50-75km
  中間地点での炊き出しで元気が出る。寝て体をしっかり緩める体操をし身体の痛みを軽減。歩き方がさらに変わり、自然と「なんば歩き」に。股関節の動きがしぶいながらもスピードを落とさずに歩けた。ゴミを拾う余裕はない。

 (5) 75-90km
 75kmあたりから疲労の蓄積でペースが落ちる。80km地点で50km地点と同じく寝転んでしまった結果、すでに限界だった筋肉・関節等が硬直。凄まじい痛みでさらにペースが落ちる。あまりの痛さ、苦しさに一歩ごとにうめき声が出る。その時「頑張れがんばれ、父ちゃん♪」と息子が太鼓をたたき応援する動画がメールで送られてくる。涙が出る。10秒ほどの動画をひたすら繰り返し見ながら、泣きながら歩く。

 (6) 90km-ゴール
  たったの1kmがこれほど長く感じたことはない。ただ、法界院駅を過ぎ街中に入るとなぜか体が軽やかに。ゴミを拾う余裕も生まれ、今までで最も大きな袋をいっぱいにできた。そして涙のゴール。



4. まとめ

 最後の10kmで私を颯爽と抜いていったのは65歳の方。人生における先輩にゴール後お聞きすると、毎日10kmの練習、後半の50kmを一度練習として歩行、本番では最初から最後まで5km/hで歩かれた、とのこと。完敗である。完歩をもたらすのは練習である。若さやスポーツ経験ではない。計200-300kmは歩いておくべきである。


5.感謝

 サポーターの方々、沿道の方々、同期のみんな、そして家族に支えられることで完歩できました。ありがとうございました。感謝の気持ちで一杯です。今は、人から支えられていることを感じることなしには完歩は不可能ではないか、とさえ感じます。
 人を支えるとはどのようにすることか、この100km歩行を支えられながら歩くことで実感として感じました。これからは人を支える人間になりたい。そのために具体的に何をすべきか、100kmを終えた今、分かる気がします。