2013年11月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆溝手 宣良(岡山政経塾 十二期生)   2013/11/24

『覚 悟』




 「これから○○に××を頂きに伺います。どの様な手段を用いてでも目的を達成させて頂きますので覚悟を決めておいてください。」とこの様な予告状が我が家、または職場に届いたら、皆様ならどの様に対処なさいますか。

 現実の世界でこの様な予告状を受け取ることはまず無いので、小説かTVドラマの世界であって自分には関係無いと思われるでしょう。しかし、現実はもっと厳しく、ある日ある時、何の予告も無く突然に大切な何かを奪われてしまうものです。それが物なのか人の命なのか、或いはそれら以外かは人それぞれでしょうし、ここで大切な物は何なのかを追求する気はありません。とにかく大切な何かです。
 その何かを守るため、どの様な対策をされていますか。家や物置の戸締りを厳重にする、セキュリティ会社に依頼するなどが思い浮かぶのではないでしょうか。或いは大切な何かを奪いに来た相手に遭遇してしまった場合を考え護身術を習得したり、護身用に大音量のアラームを携帯したり、催涙スプレーやスタンガンを持つ事も考えられると思います。
 これらの備えをする事はいけない事なのでしょうか。否、私は大切な人や物を守る為なら当然の事と考えますし、いくら備えても万全という事は無いと思います。皆様はいかがでしょうか。

 ここで話を国家に変えて考えてみます。国家にとって大切な何かとは何でしょうか。たくさんありすぎて一つに絞る事は難しいと思いますが、例えば国民一人一人の生命、財産や住環境等が挙げられます。その他も含めそれらを国益と考えます。
この国民と国益を脅かす存在は何でしょうか。そうです、天災と他国です。天災を完全に防ぐ事は残念ながら出来ません。先の東日本大震災は記憶に新しいところですが、その他にも毎年多くの方々が被災されています。
 ここで防災や災害からの復旧を担当するのは各地方自治体で、警察、消防、消防団など形態は様々ですが頼もしいと思います。しかし想像を絶する被災をしてしまった時、自治体だけでは対応しきれず応援を要請します。自衛隊の登場です。
 隊員の方々が復旧作業に従事されている姿をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、本当に頼もしく、力強く、丁寧で、頭が下がりますと同時に誇らしく思います。
 一方、天災と違い他国からの攻撃は未然に防ぐ事も可能です。自衛隊の本当の仕事は災害復旧ではありません。前述しました国民と国益を脅かす他国から自国の国民と国益を守る事にあります。民間に置き換えるならセキュリティ会社の様な存在かもしれません。
 ただ明らかに違うのは、隊員の方々は親子や兄弟でも無ければ友人や知人、恋人でもない、利害関係も無い全くの他人の為に文字通り命を懸けている事です。
 大袈裟では無く、日本の周りにはいつ日本に対し攻撃を仕掛けてもおかしくない国が複数存在しています。先述の予告状は国家間では宣戦布告に当たります。最近では世界各地でテロも多発しています。つまり、いつ出動し命を落としてもおかしくない状況にあると言えます。そんな日々を送る隊員の方々の行動様式や訓練の場を見学させて頂き、またグループ討議等で生の声を聞けた事は大変有意義でした。

 命を懸ける、言うのは簡単ですが実際はどうでしょう。命を懸けるという事は死ぬ覚悟を決めるという事です。しかも他人の為に常にです。その為の訓練や教育を日々受けられている隊員の方々の行動は、食事や就寝に至るまでがその事の為にありました。規律正しく、無駄が無く、合理的かつ実戦的で、私達の日々の生活がいかに恵まれているかが感じられたと同時に、平穏な日々は彼らの頑張りの上に成り立っているのだと思いました。
 私達国民は、もっと本気で国防について考える事が必要なのではないでしょうか。そして議論し、彼らの覚悟を知り、その上で幸せになる事が、彼らの覚悟をより強くし、思いに報いる事に繋がるのではないでしょうか。そうすれば結果として他国も日本に対して攻撃を仕掛けにくくなり、より平和な国に近づくのではないのでしょうか。
 私は死ぬ覚悟は出来ていません。そんな私達を快く受け容れてくださり、優しく親切に接して頂きました日本原駐屯地の皆様、ありがとうございました。
 私は皆様の事を頼もしいと思うと同時に誇りに思います。皆様が命を懸ける価値がある国を、誇りの持てる国を目指し、自分に出来る事を探して、覚悟を決めたいと思います。