2008年 直島特別例会

 
◆香山 祥一(松下政経塾 四期生)(熊本県立熊本高校社会科)
犬島、直島、豊島合宿レポート
  岡山政経塾 犬島・直島・豊島合宿に参加して



 瞼を閉じると、遠く瀬戸内の海に浮かぶ島々、静かに波が打ち寄せる砂浜と海岸線。
 堤防の突端には、黄色いかぼちゃのオブジェ。ここ直島は島全体が「アート」である。
 朝5時。まだ開いていない海辺のレストランのデッキチェアに身を沈めながら、私は、昨日からの出来事を思い出していた。ふと、目の前を、散歩中の西村さんが、さわやかな会釈とともに通りすぎていく。毎年5月の連休に開催されるという岡山政経塾恒例の100キロ歩行を淡々と完歩されたという西村さんは、日頃からこうして歩くことに親しんでおられるのであろう。

 宇野港を出て着いた「犬島」。そして「直島」。美術館のカフェからの展望、モネをあれほどまでに大切に鑑賞させてくれた地中美術館、そのエントランスに象徴される安藤建築のエレガンスさ。案内人のソフトな語り口もここちよかった。一転バスに乗り、「家プロジェクト」。時間がなく一か所しかいけなかったが、静かな島の「まちの佇まい」とよくマッチしていた。場所を移しての福武幹事の講話からは、直島発世界、この国の将来を憂いつつ、ふるさと瀬戸内の大自然、岡山、日本を愛する熱い思いがその実践例とともに伝わってきた。夕食のバーベキュウーはことのほか美味しかった。おそらく、各人の「思い」の語り合いがその「味」を引き立てたのであろう。翌日の講演者村田教授や逢沢幹事を交えた懇親の宴は、その後大広間に移動し、夜遅くまで続いた。

 2日目は、卓見溢れる同志社大学村田晃嗣教授による「米大統領選と日米関係」の講話。
 「外交史」浅田ゼミきっての秀才の村田先生は1964年生れ。まず「スケジュールから政治を考える」と日本政治の今後の展望を切り出されたあと、今回なぜオバマがクリントンに勝ち得たのか、アメリカの歴史と国民性、政治風土に根ざした見事な分析とわかりやすい語り口で90分はあっという間に過ぎていった。
 その後、岡山政経塾のみなさんがチームに分かれ、今後の活動方針発表会。各チームの発表に福武幹事、小山事務局長、卒塾生の北川氏等からアドバイスが続く。
 最後は、「豊島」。産廃現場・処理施設の見学ののち、「資料館」にて駆け付けてこられた石井元県議による「島を守る闘いの歴史」について、これまた熱いお話。小山事務局長が最後にこの日程を入れ、この合宿を締めくくられようとされている意図と愛情を感じる。そう、政治はつらく厳しい現実との対峙の中で、堅く厚い板にキリで少しずつ小さい穴を開けていくような作業なのである。

 政経塾は「政治=government」と「経営=management」を学び合う場所。「経営」とはヒト・モノ・カネそして情報をいかに最大限活かしていくか。「政治に経営感覚を!」といわれて久しい。「学習」と「交流」はその人自身を整理する。何かに好奇心を持ち、観察し学び始めると世界が広がる。そして、「交流」することで、自分の内面も、より深くのぞけるような気がする。「交流」の対象は、志を共有するヒトでも、自然でも、アートでもいい。その中で自分の持ち味や役割を知り、できるところから始めていく。
 そういえば、教育哲学者森信三先生は、「人間は生まれたときから、出会うべき人とは出会うようになっている。しかも一瞬も遅からず、早からず。」といっておられる。今回の岡山政経塾での、数多くの「出会い」は、私に多くの「気づき」と「感動」そして「明日への活力」を与えてくれた。この会への参加を誘ってくれた松下政経塾の後輩宮川さん、そしてこころよくお許しをいただいたばかりでなく送迎等でもお世話になった小山事務局長はじめ岡山政経塾の関係者の皆さん、そして2日間離れず終始語り合ってくれた仁戸田君、そして美しい瀬戸内の大自然に心より感謝したい。ありがとう、ナオシマ!。
 
 
 
 岡山政経塾 犬島・直島・豊島合宿 
       2008年7月12日(土)〜13日(日)
 
                     2008年7月31日記す。