活動内容

ACTIVITY

2019年5月 丸亀町商店街視察 2019年

【高松丸亀商店街視察レポート】

2019.05.25

木下 仁志
(岡山政経塾 18期生)

1. はじめに

高松丸亀町商店街は高松市の中心部に位置する総延長2.7kmの400年余りの歴史を誇る商店街であり、地域の一等地で商売をするなど、「町の顔」として存在しており、祭りを開催するなど地域活性化の担い手、地域コミュニティを形成する「場」として地域に貢献してきた。かつては市中心部5km圏内で高松市の税収の75%を賄うなど、集積度の高いコンパクトシティであったにも関わらず、中心市街地は空洞化していった。その衰退の要因として ①バブルによる地価高騰で空洞化 ②瀬戸大橋の開通(交通インフラの整備)による大資本の参入(郊外への大規模小売店舗の出店が進んだ) が挙げられる。更に近年では、情報技術の進展によりリアル店舗とネット販売の競争も起こるなど、商店街の業況はますます厳しくなっているにも関わらず、高松丸亀商店街は民間主導の再開発で劇的な復活を遂げた。全国的には再開発の失敗が多数あるにもかかわらず、なぜ高松丸亀商店街は四国随一の商店街として復活を遂げることが出来たのかを商店街を視察し、商店街振興組合理事長古川康造様の講話を聴かせて頂くことで、その成功要因について学んだことを報告いたします。

2. 商店街再開発が成功した要因

 高松丸亀町商店街が成功した要因として、1)土地問題を解決した  2)居住人口を増やした 3) 魅力ある商店街づくり が挙げられる。その主な内容について検証した。
 
2.1 土地問題の解決
2.1.1 土地の所有と利用の分離
土地の所有を変えずにビルの床をまちづくり会社が取得・運営する事業スキームとし、土地費をイニシャルコストとして事業費に顕在化させない仕組みにすることで、土地問題を解決した。この仕組みは地権者がまちづくり会社と定期借地権契約を結び、それぞれの土地を貸し出し、建物はまちづくり会社が所有し運営します。まちづくり会社は、家賃収入から、建物の管理コストなど必要な経費を除いた分を、地権者に分配します。つまり、地権者はこの事業に土地を投資し、地代という形で配当を得ることになります。また、まちづくり会社が建物全体を一体的に運営することができるので、マネジメントが合理的かつ体系的にできるメリットもあります。このような形態においては、日本人特有の土地に対する執着心を持つ地権者の合意を得ることが最大の課題であり、地権者は、個々の権利を主張するより全体の利益をシェアしたほうが得と気付いてもらうためには、地域のコミュニティが大きなポイントになっています。



2.1.2 オーナー変動地代家賃制度
 この制度は、地権者(オーナー)が土地を「投資する」することで、地権者はテナントの売上から家賃収入(リターン)を期待できるが、その額は一定ではなく、テナントの売上によって増減するリスクを含んでいることです。このようなしくみの下、地権者は、テナントと協力をして売上増に努める必要があり、建物を管理・運営するまちづくり会社も、その能力の向上を目指さなくてなりません。地権者とテナント、まちづくり会社が同じリスクを背負い、「お客様満足の向上」という同じ目標を目指して協同で真剣に商売に取り組んでいくことになり、町全体の魅力を高めていくことになります。
つまり、すべてを行政に任せるのではなく、自分たちの街を自分達で自らリスクを負い自治権を持って運営していこうという新しい自治組織にすることで、業種の再編成、イベント、組織との連携、住宅整備、安全な街づくり、すべてが可能になる『エリアマネジメント』が可能になった施策である。


2.2 居住人口を増やした
2.2.1 コンパクトシティ実現への取り組み【人が来る街から人が住む街へ】
 コンパクトシティとは、都市機能がごく狭い範囲に集中している街のことである。 郊外へ散らばってしまった人々を中心部に呼び戻すには人々が住みたいと思う街を作らねばならない。高松丸亀商店街の街づくりの根幹を「医食住」に注目した。そのための取り組みとして丸亀町商店街が行ったことは、老後をハッピーに暮らすために必要な施設をつくった。

2.2.1.1 「医」と「住」
商店街の中に入院施設のない往診回診の診療所がある居住マンションを作った。400戸の入居者のほぼ100%が高齢者で、違った視点で見れば、みんなクリニックのお客様である。しかも24時間対応でリハビリセンターもある。誰しも長期入院するくらいなら自宅に帰りたいと思うが、ここでは自宅=病室である。しかし、病室≠(ではなく)自宅なのだ。また買い物に来ている間に500円で気軽に検査できる検査施設や、リハビリセンターも完備し、病院らしくない雰囲気である。また、車を使うことなく徒歩圏内で買い物ができる。

2.2.1.2 「食」と「住」
根本的な流通を変革する要として、商店街に「市場をつくる」ことだ。公募によぅて生産者からの応募で生鮮4品が集められ、地産地消する仕組みをつくった。また「住」に関していえば、箱もの自体の基本は踏まえつつ華美なものにしない。また、住まいのいい環境づくりのために、商店街の近くに温浴施設の建設を予定中で、「自分達が住みやすいような環境にする」ことが計画の本筋である。

- 2.3 魅力ある商店街づくり
商店街のコンセプトとして、機能や空間を整備し、市民の期待に応えていくことが生きのびる唯一の道と確信する、とした。高松丸亀町商店街は、A~Gの7つの街区に分かれている。それぞれに、セレクトショップゾーン、美と健康といった風に強みを持たせつつ、商店街全体を1つのショッピングセンターに見立てて業種の偏りを解消し、顧客のニーズと合致した店舗が置かれている。アーケードも商店街ごとに異なるデザインとなっており、商業用途として利用されている低層階をまるまるアーケードで覆っているため低層部分のテナントはすべてストリートから伺える。またガラス屋根であるのも特徴で、一般的には日中でも電気がないと暗いアーケードも、ここは太陽の光が直接入ってくるため日中は太陽光を感じ、夜になると街灯や店舗からの照明が浮かび上がるといった同じアーケードでも時刻によって異なる印象を与えている。



広場も、市民の大切な場所として機能している。高松市中心市街地のノードとして市民が集まる丸亀町壱番街前ドーム広場は3つの商店街の交差点にあり、大型ポスターその先にあるクリスタルドームがその空間にインパクトを与えている。広場は公共スペースであるが、あくまで民間の土地であるため、市民は公的スペースのような制約に縛られることなく、自由にこの場所を活用することができる。また、この広場は商店街における憩いの場となってもいる。丸亀町商店街が過去に調査したところ、商店街に行きたくない理由の上位が「休憩する場所がないこと」「トイレがないこと」であった。そういった声に応えるべく、丸亀町商店街はこの広場のような公共スペースにも力をいれている。



丸亀町グリーンの中心にあるのが「けやき広場」であり、けやきの木がシンボルとして広場の中心に植えられている。けやき広場には椅子とテーブルが置かれており、路面店のカフェスペースとして利用でき、さらに再開発事業では1階店舗へのオーニングの設置を義務付けておりただの壁面に温かみを与えている。さらに丸亀町グリーンには低層部分の屋上に屋外広場「テラスガーデン」が一般開放されており、暖かいシーズンは芝生の丘は子どもたちの遊び場として、夜にはガーデンの一角にあるレストランのテラス席として利用されている。


3. 終わりに

 今回の視察及び古川氏のお話を伺って、地権者中心となって設立された「高松丸亀町まちづくり株式会社」によるマネジメント(エリアマネジメント、タウンマネジメント)が、これからの人口減、高齢化社会に対応するまちづくりを実現させることが出来た大きなポイントだと感じている。他地区の街づくりの失敗事例を徹底的に分析し、商店街を「消費の場」から「生活の場」への発想を転換させ、商店街のコミュニティーを活用しながら実現していく。行政主導ではなく、地元主導のまちづくりにこだわり、商店街に住んでいた人たちが結束して、自分たちの将来を考え知恵を出し、一軒一軒説得して回り、計画実行を実現させた熱意を持って行動をおこしたことが、丸亀町商店街エリアの賑わいを生み出しているという印象を受けた。私は今回の視察で得た知識や気づきを参考にして、経営視点を広げ、課題に対する取り組み方や進め方などで活かしていきたいと思います。貴重なお話を聴かせて頂き、感謝いたします。

以 上