活動内容

ACTIVITY

2019年5月 丸亀町商店街視察 2019年

新しいまちづくり

2019.05.25

和田 万里奈
(岡山政経塾 18期生)

はじめに

1991年に始まった経済の低迷により、我が国とりわけ地方の経済・社会が激しく疲弊した。日本全体の活力を上げるための「地方創生」という政府の支援があるとは言え成果を上げるには一筋縄ではいかない。しかし、困難を乗り越えようと地域再生の試みが各地で行われている。今回、全国でも成功モデルと言われている中心市街地再生の先頭を行く高松丸亀町商店街を視察した。

まちの疲弊

 大型ショッピングモールが郊外へ出店を続け、かつて賑わいを見せていた地方都市の中心市街地は衰退傾向にあるが、高松丸亀町商店街もバブルによって地価が高騰し、空洞化が進んだ。更に瀬戸大橋の開通により大手資本が一気に流れ込みまちの中心が疲弊した。
 この状況に対して、業種転換・商品開発・廃業に踏み切ったことにより現在の成功モデルが成り立っている。

成功の鍵は地元主導のディベロッパー

 近年、中心市街地の再開発が進んでいる。ほとんどの場合、民間のディベロッパー主導の開発の為、どこも同じ3セット(分譲マンション・商業床・ホテル)がお馴染みである。分譲マンションは購入する世代が被る場合が多く、高齢化など一度に起きる可能性がある。更には地元の声を聞かず、開発を行うと商業床が埋まらない場合もある。高松丸亀町商店街は、自らまちづくり会社を作りコミュニティの声を聞きながらまちなかを再生し成功をしている。
 特に有名なのが、土地の所有と利用を分離する定期借地権である。この制度により地権者の所有権と利益を守りながら生活者を取り戻す再開発事業が可能となった。最近では、東日本大震災の住宅復興で定期借地権が活用されている。

ライフスタイルのブランド化

 高松丸亀町商店街は再開発によって、中心市街地の顔である広場、イベントホール、診療所や健康レストラン、保育園など様々な都市機能が商店街に導入された。物販や飲食を主とする「従来の商店街」の概念を取っ払い市民や地域の人々が集まり、生活をし、誇りに思う場所(豊かな暮らしを支えるプラットフォーム)へと作り替えた。
実際に商店街の中を歩いてみると活気を感じる。
ナショナルチェーンの出店を即すだけの再開発では地域の経済社会への向上や市民の満足度向上にはつながらない。

次世代の商店街に向けて

 キャッシュレスやIoTは次世代の商店街に求められる。香川県は県を挙げてかがわWi-Fiという無料公衆無線LANサービスを行っている。接続後には自動的に香川県公式観光サイトである「うどん県旅ネット」が表示される。外国人観光客へ向け様々な言語に対応しており、観光に関する情報を手軽に取得できるよう工夫されている。商店街側はWi-Fiの利用ログを分析してアーケードへ来る人の日別・月別の利用状況をはじめ、言語別利用者数やヒートマップなどの観光動線の分析が可能となった。総務省の支援事業を活用して整備したとのことだが、観光面だけでなく災害時の情報伝達手段となるため岡山県にも整備を検討して頂きたい。
 Wi-Fi以外にも商店街内で外国人観光客向けのマップやメニューの看板、POPやキャッシュレスサービスなどインバウンド対策を行われていた。


おわりに

私は現在、再開発の計画がある岡山駅前商店街の活性化に取り組んでいる。
高松丸亀町商店街のように定期借地権を利用した再開発を真似するのはなかなか難しい。しかし、ディベロッパーに全てを任せるのではなくどのようなまちにしたいか・住みたいかを明確にして一人ひとりが真剣に取り組み、更には周りを巻き込んでまちづくりに向き合うことが必要だと考える。どれだけ優れた施策や支援やリーダーがいても、地域のコミュニティが崩壊していたら開発は難しい。今あるコミュニティを大事にするとともに、新しいまちづくりに向けてのコミュニティ作りにも取り組んでいきたいと改めて思った。