活動内容

ACTIVITY

2018年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

2018.08.04

春名 充明
(岡山政経塾 17期生)

1.はじめに

 人・文化・アート・自然をかけ合わせた特別な場所として、多くの観光客で賑わう直島、豊島を訪れ、島の人たちとふれあい、その魅力を肌で感じるため、直島・豊島合宿に参加した。
参加日程:平成30年8月4日(土)~5日(日)
視察内容:地中美術館、福武總一郎塾長講演、家プロジェクト、ベネッセハウス、豊島美術館ほか

2.笑顔あふれる島、直島

 もう何度目の来島になるのだろうか、すっかり四国汽船の時刻表も覚えてしまい、乗船までの手続きも慣れたものだ。直島に向かうフェリーから見る、青い空と直島の遠景は、真夏の太陽から注がれる光と一体となり、一つの芸術作品のようだった。
 昨年までの岡山政経塾の合宿では、観光客数の増加や、地域の変化を感じてきた。今年は、その後の様子と、住民たちの声を聞くことをテーマとして、合宿に臨んだ。それから、福武塾長のお言葉にある、「人間らしさは自然の中から生み出される」、「自然こそが、人間にとって最高の教師である」を感じ取れるよう、そして、私の住んでいる美作市もこれらの地域を模範として、魅力ある地域にするために、訪れた。


写真-1 今年3月16日に就航した四国汽船フェリー「あさひ」


図-1 直島町の観光入込客数(直島町観光協会より)

3.データから見る、直島

 私は毎年、直島の観光客数、平均所得、町税の推移を調べている。今年注目した点は、以下のとおり。
(1)直島町の観光客数は、第1回瀬戸内国際芸術祭の前と第3回瀬戸内国際芸術祭の後を比較すると、360,087人から508,044人に、約40%の増加を達成している。これは、瀬戸内国際芸術祭というイベントを行わない年においても、訪れる観光客が増えていることがわかる。
(2)直島町の平均所得は、平成25年から上昇傾向であり、平成29年は316万円となっている。これは、香川県内第3位(17市町中)であり、岡山県第2位の倉敷市305万円を上回っている。
(3)直島町の町税も増加傾向である。わが町美作市は減少傾向・・・。
 以上のことから、直島町の観光客数の増加が、着実に町民のくらしにつながってきており、その結果、平均所得や町税の数値に表れている。


図-2 平均所得の推移(総務省:市町村税課税状況等の調より作成)


図-3 直島町及び美作市の町税(市税)の推移(直島町H.P,美作市H.Pより)

4.直島・豊島はどのように変わったのか

 今年の合宿は、OBとしての参加であったため、比較的スケジュールに余裕があった。そこで、空いた時間を利用して、直島・豊島の3つの場面で5人の住民に声をかけてみた。
(1)本村港周辺空き缶アート店員 60代女性
 以前本村港を訪れた際に、面白いお店を見つけた。空き缶をダンスや音楽をしているように加工した置物を売っていた。今回、ふとそのお店を思い出し、立ち寄ることとした。
 「こんにちは」
 「以前もこちらで商品を買わせていただいて・・・」
 「そうですか」
 「直島は、変わりましたか?」

 「観光客が増えたから変わったわけではない、30年かけて少しずつ変わってきた。」

 何か、意味深い回答だった。以前、福武塾長も同じようなことをおっしゃっていたように思う。
店を後にしながら、店員の言葉を反芻していた。手には、新しい商品を持って・・・。なかなか商売上手な店員さんだった。



(2)つつじ荘周辺海岸 散歩中 70代男性
 合宿2日目、朝食前につつじ荘前の海岸を散歩していると、向こうから男性が歩いてきた。
 「おはようございます。」
 「あんた、どちらから来たの?」
 「岡山からです。よく来るんですよ。」
 「直島は、変わりましたか?」

 「元気になった。」
 「でも、日本の政治家たちは、地方に目が向いてない!今の首相の・・・」
(以降、男性の政府に対する不満を聞くこと、約10分)
(3)豊島唐櫃港周辺レンタサイクルショップ店員 60代~90代女性3名
 豊島での散策時間に、唐櫃港で自転車を借り、豊島美術館まで行ってみることにした。ケチって電動付いてないママチャリを借りたため、道中の上り坂と炎天下で倒れそうになる。美術館から帰り、自転車を返却する場面
 「ありがとうございました。自転車はどこに置いておきましょうか?」
 「その辺に置いといて!あんた、すごい汗じゃな、お茶でも飲むか?」
クーラーボックスから冷えた麦茶がでてきた。
 「いただきます。」
 「あんた、岡山から来たんじゃろ?しゃべり方でわかるわ。」
 「たくさんの観光客と接しているんですか?」

 「こうやって、お客さんと話しするのが、楽しみなんよ。そっちのおばあさんは、90歳だけど、こうして話しに加わってるんよ!」

 「豊島は、変わりましたか?」

 「変わったかどうかはわからんけど、良かった、また来たいといってくれる観光客の言葉を聞くと、うれしくて。」
「観光客と接するのが、わたしらの生きがいじゃな。」

 そのときの店員さんたちの笑顔は、ステキでした。

5.おわりに

 今回の合宿でも、私は多くのことを学んだ。
(1)年々観光客が増加している直島は、平均所得及び町税の向上によって、より豊かで笑顔のあふれる地域となっている。
(2)元気な直島・豊島の住民と接してみると、この地域を訪れる観光客が多いのは、これらの住民のおかげであることがわかった。
(3)今回初めてベネッセホテルに宿泊した。目が覚めて、テラスでみる朝焼けは、直島で最も価値のあるものの一つだった。
(4)市税が減少している美作市で働く私の所得は、上がる見込みがないのかもしれない(泣)。