2021年 直島特別例会レポート(直島・豊島)
10月第2回例会 直島合宿レポート
2021.10.24
芦田泰宏
(岡山政経塾 20期生)
1.概要
日時:2021年10月24日(土)~25日(日)
(ただし、衆院選応援や倉敷市内の行事参加のため、24日夕刻から25日朝まで離脱)
場所:ベネッセアートサイト直島関連施設(香川県直島町)
講師:(講義)岡山政経塾 塾長 ベネッセホールディングス名誉顧問
福武 総一郎氏
(アートサイト直島案内)ベネッセハウス地域統括部長 西美 篤 氏
2. 要旨:
(福武塾長講義)
日本の政府に絶望中。山積する問題に有効な対策はとれていない。 しかし、政府に頼らず、自分たちで動いて良くする方法もある。直島、豊島、犬島が好例。
住民が幸せになるには、「よく生きる」こと、幸せなコミュニティを作ること。
直島が国際的にも高く評価されるポイントは、自然+環境+アート+建築 (=「直島メソッド」)。
全体を貫くポリシーは、「自然が最高の教師」、「あるものを活かして、ないものを創る」、「経済は文化の僕」、である。 また、東京では絶対に作れないものを創りたいという反骨精神の体現でもある。
東京への文化的・経済的依存から脱することを目指せ。
(アートサイト直島見学から)
そもそも美術の鑑賞は、頭の普段使わない箇所をマッサージしてくれるかの快感あり。 それが瀬戸内の島という癒しの空間と組み合わされ提供される経験は、間違いなく独特の体験型のリゾートとなっている。しかも豊島や犬島、遠くは塩飽諸島本島まで散らばる作品群を鑑賞するには、必然的に瀬戸内を面で感じることになる。素晴らしい仕掛けである。
3.所感及び今後の取り組み
直島は今回3回目。
それにも拘わらずまだ行きたいと思うのは、ここに来るのが文句なく非日常へのトリップで、直島メソッド(自然+環境+アート+建築)に浸る滞在体験が快感だから。 気持ちいいことには飽きないどころか、繰り返したくなる。 ここでしか経験できないと思わせることも大切。
快感体験は、アートの他、食、スポーツ体験、音楽、ヒーリング(瞑想、スパ、森林浴、タラソテラピー)などいろいろあり得る。 癒しのスケールを確保することが大事で、景観オンリーでは足りないと認識すべき。
プロジェクト前、安藤忠雄氏の評価は今ほど確立されていなかったはず。 同氏を新進気鋭でかつ元プロボクサーと認識していたという福武氏に、進取の気性とファイティングスピリット、反骨心を感じた。
本当の破壊力を生むのは、行政ではなく民間の集中投資であろう。行政主導は予算の制約もあり、「公平・公正」等の原則が足かせになると感じる。議員が言うべきではないが、行政は民間の投資誘致(地域のプロモートやインセンティブ用意)や規制緩和などで力をふるうのがあるべき道だとも考える。 その方向で今後の活動を先鋭化させていきたい。
4. 内容詳細
1) 日程
添付別紙のとおり
芦田は塾長講義の後、いったん直島を離れ、翌朝朝食後再合流。
2) 福武塾長講義 (直島町営つづじ荘にて、在二―ジーランドの塾長とオンラインでつながる)
日本の政府に絶望している。 コロナ感染対応策への不満、 経済的な豊かさ、特に平均給与の国際ランクの大幅低下、国民の政治不信、食料やエネルギー自給率の低迷等々枚挙にいとまない。それに対して、有効な対策が講じられないままである。
政権を安住させてはいけない。国会での勢力が拮抗すれば、国民の政治に対する関心も高まる。 また個人では副業、兼業、投資など積極的に取り組みたいところ。(大勢に身を任すのではなく、能動的に幸福追求をしろという意味だと理解)
政府に頼らず、自分たちで動いて良くする方法もある。直島、豊島、犬島が好例。
幸せになるには、幸せなコミュニティに住むことが大事。幸せなコミュニティとは、お年寄りの笑顔があふれているところ。 この島々はまさにそうなった。 やればできる。
アートサイト直島は、1987年から始まった。フジタ観光が手放した島の南部に、国際的な子どものキャンプ場を創ろうとした、先代福武哲彦氏から引き継いだ。 東京中心の過度な集中、また社会の工業化に対するアンチテーゼとしたかった。
近代日本の文化創造の乏しさも残念であったため、美術の一大拠点も作りたかった。 日本が世界に誇る文化(もしくは文化遺構?)は、ほとんどが江戸以前のものであることを知らなければならない。
直島が国際的にも高く評価されるポイントは、自然+環境+アート+建築 (=「直島メソッド」)。
全体を貫くポリシーは、「自然が最高の教師」、「あるものを活かして、ないものを創る」、「経済は文化の僕」、である。 また、東京では絶対に作れないものを創りたいという反骨精神の体現でもある。同じことをしても勝てないのも現実である。
当初、アートの設置は島の人たちから反対にあった。島外資本は、乱開発をして、金だけ島外に持ち出すとみられていた。 毎週現地に行った。 信頼を得るのに10年かかった。
東京への文化的・経済的依存から脱することを目指せ。地方議員は地域に住んでいる人が一番大事である。
3) アートサイト見学
今回見学したのは、主に地中美術館、本村家プロジェクト(6カ所)、ベネッセハウスミュージアム、安藤ミュージアム。 政経塾OBで、ベネッセハウス/西美部長が解説してくれ非常に理解が深まった。
まず、地中美術館にあるモネの睡蓮の5作品に圧倒された。 睡蓮の連作は300あると言われるが、この5作だけで個人的には繰り返し来る価値を感じる。
その他、特に印象に残るものは、護王神社、南寺、オープンフィールド、タイム/タイムレス/ノータイムなど。
アートは、その場で制作した移動できない作品もしくは、他の場所の環境、空気では合わない作品(「サイトスペシフィックワークス」と呼ばれる)にこだわり、ここだけでしかみられないものを演出している。 また、額に入った絵画よりも、家屋、ホール全体などの大規模な作品、屋外で自然の光や風景と合わせてはじめて成立する作品が多いのも特徴。
モダンアートや建築美と、穏やかで美しい島の風景が、交互に目の前に現れるのは、確かに他では経験できない経験。
直島では、ベネッセグループ全体でプロパー社員約100人、アルバイト40~50人が働くとのこと。 雇用を含め島の経済へ堂々たる貢献をしている。 また直営ホテルである、ベネッセハウスの稼働状況は既に平日7割、土日休前日はほぼ満室だそうで、時機を考えれば、非常に強力な集客力であること間違いない。