活動内容

ACTIVITY

2021年 直島特別例会レポート(直島・豊島)

魂を揺さぶる光の力

2021.10.23

江尻 直樹
(岡山政経塾 20期生)

1 はじめに

 令和3年10月23日(土)、24(日)の2日間直島合宿に参加させていただいた。私は昨年に続き2回目の参加だが、昨年感じた直島の魅力、現代アートの素晴らしさに加えて新たな気付きや学びが多くあり、現代アートとは何か地域活性化とは何かを考えさせる機会になった。

2 地中美術館

 自然の美しい景観を保つ為に建物の大部分が地下に埋設した建物であり、その発想に驚かされた。建物は安藤忠雄氏によるものであり、地下にありながらも自然の光が差し込んでいる。自然の光を利用しているので時間帯や天候により作品の見え方、感じ方が違うのも魅力だと感じた。実際に今回は日没の時間に合わせたナイトミュージアムにも参加させていただき、日中に見た同じ美術館内とまた違った貴重な体験をさせていただいた。

地中美術館 出所:ベネッセアートサイト直島HP
・モネの睡蓮
 部屋に入ると真っ白な空間に自然光が差し込み、モネの睡蓮が圧倒的な存在感を出しており印象的だった。それを演出するために、モネの部屋に入る前にもう一部屋の暗い部屋と壁を作っているということだった。実際に薄暗い場所から自然光が差す部屋に入ったときの驚きはすごかった。絵画と空間を一体化させる為にどのような構造にするのかまで考えられていることに感銘を受けた。
また、モネは日本の浮世絵に影響を受けた人だと知り、その目線で作品を見るとまた違った感情が自分自身に沸き親近感をいだいた。


出所:ベネッセアートサイト直島HP
・ジェームズ・タレル
 光そのものをアートとしており、実際に鑑賞すると不思議な感覚を受けた。日常的にある自然光を使って非日常的な体験をした。光をコントロールすることで私たち人間の知覚をコントロールしている。普段生活している中で光を意識することは少ないが、作品にふれあうと光とはなんだとうという気持ちになった。作品を見る人によってそれぞれ感じ方は違うとは思うが、私自身も昨年見たときとは何か違う感覚を受けた。そのときの状況や自分の心の状態でも変わると感じ、アートの持つ魅力を考えさせられた。


ジェームズ・タレル 出所:ベネッセアートサイト直島HP
・ウォルター・デ・マリア
 教会の中にいるような大きな空間に金箔を施した27体の立体を配置しており、階段の中央広場には圧巻の直径2mほどの球体が置かれている。様々な角度から見ることで違った印象も受けた。下から見る光景は天井からの自然光によって左右の立ち位置で見ると異なる様相を提示しているように見え、上から見る光景は同じ光でも見る角度が違うので全く違う印象を受けた。部屋全体は神秘的な感じで心が落ち着く空間だと感じた。


ウォルター・デ・マリア 出所:ベネッセアートサイト直島HP

3 福武總一郎塾長講演

  初日の午後から約1時間、福武總一郎塾長による講演を聞かせていただいた。冒頭では日本の政治の在り方、新型コロナウイルスへ対応に関して福武塾長の考えや想いを聞くことができた。講演の中で今の日本のままではこの先はないという危機感を強く抱いていると言われたのが印象的だった。世界視点から日本という国を見ており、今の私にない気付きや問題点を多く学ぶことができた。直島の取り組みにおいては「自然」「環境」「アート」「建築」「人々」全てが重なることで相乗効果を生み出している。幸せになるには幸せなコミュニティーを作る。それには人生の達人であるお年寄りの笑顔が溢れるまちを創る。また自然こそ人間にとっての最大の教師であり、「在るものを活かし無いものを創る」ことが大切だと学んだ。最後に質疑応答の時間を設けていただきとても有意義な講演であった。

4 家プロジェクト見学

 家プロジェクトは空き家を利用し、現代アートとして生まれ変わらせており、どもアートも印象的なものだった。第1号の「角屋」の作品はLEDの数字の変わるカウンターのスピードは島民が参加して作った作品ということに大きな意味があると感じた。当初は現代アートに反対的な人も今より多くいたと思う。しかし自分自身が作品に関わることで徐々に意識の変化に繋がってきたと推測される。実際に町を歩いていると自分の家に工夫してアートをしている家が何軒もあった。話しを聞くと島に訪れる観光客の方に少しでも島を楽しんでほしいとのことで島民自ら主体的にアートに関わっていくようになったということだ。 
また、私が家プロジェクトを見学していて最も印象的だった作品は「南寺」である。南寺はかつて実在していたお寺が人々の精神的な拠り所であったという記憶をとどめようとしている場所である。作品は暗闇の中で時間と経過とともに見えるものが変わってくるもので不思議な感覚だった。自分では変わったと思った現象は実際には最初から何も変わっていないことにも驚かされた。


家プロジェクト 角屋

5 おわりに

 私が学生時代の頃の直島と今の直島はすごい差だと感じる。その当時において直島が世界で注目され取り上げられる島になると誰が予想できたのだろうか。福武塾長の未来を創造する力、実行力が大きな成功を生んだことには間違いないことである。福武塾長の言葉で自分の住んでいる地域を元気にすることが大切だと言われたのが深く心に響いた。地域の在るもので魅力を創っていくことでよりその地域の良さが生まれ町が元気になると感じた。また2日間の研修を通じて岡山政経塾OBの西美さんの案内がなければ同じ作品を見ても気付かないことも多くあったと思う。西美さんの的確な説明を聞くことでより多くのことに気付け学ぶことができたことは塾生にとって大変貴重なことだと感じた。次回参加ささてもらう機会があれば実際に今直島に住んでいる島民の方とふれあい話しを沢山聞いてみたいと思う。
最後になりましたが、今回直島合宿で素晴らしい学びの場を与えてくれました福武塾長、小山事務局長はじめ関係する多くの皆様に心より感謝申し上げます。