活動内容

ACTIVITY

2016年12月 男木島・女木島・小豆島合宿

男木島・女木島・小豆島視察レポート

2016.11.26

春名 充明
(岡山政経塾 15期生)

1.はじめに

 瀬戸内芸術祭の後、瀬戸内の島嶼はどのように変化したのか、現地に行き、人々にふれあい、その魅力を感じるために、視察に参加した。
参加日程:平成28年11月26日(土)~27日(日)
視察内容:男木島図書館、女木島座談会、小豆島町長講演ほか

2.「芸術祭をやったから、島が元気になったわけではない。」

 今回の視察に同行された、福武幹事の言葉。
 視察が終わってからも、その言葉の意味を考えている。視察が始まるまでは、単純に芸術祭で観光客が増えた、島が活気づいたと思っていたが、そのような表面的なことだけでなく、島の歴史や現状、将来的なことまで、探求していかなければ、本当の意味で、島の人たちが元気になった要因をつかめないと感じた。瀬戸内を他の地域のモデルとして、考える際には、何度も現地を訪れる必要があるのではないかと思う。
 今回の視察で感じたことは、「島の人々が、観光客に対して歓迎の意を示す意識を持ってもらうことが芸術祭の目的の一つ」だったのではないだろうかということである。「この島は気軽に訪れてもいいのだ」と、観光客に思ってもらうこと、地域の人々が外部からの人間を受け入れる様相を見せていることが魅力ある地域にとって重要ではないかと思う。地域の人々の意識の変化は、観光客との対話から始まるのではないかと感じた。

3.「空き家を図書館にする発想力!」

 2016年、男木島の空き家が図書館に変身した。移住者の住居やカフェに改修することはあっても、図書館は初めて聞いた。地域の人々が集まる場所は、コミュニティにとって、最も重要である。一般的には公民館がある。しかし、図書館でも良いのではないか。図書館は、あらゆる年代の人々が集まる施設であり、なおかつ教育の場でもあり、まさに理想的な場所になると感じた。
 男木島図書館の理事長を務める福井氏の講演では、男木島の移住者の現状を聞いた。手に職を持って移住する人も多いのだとか。必ずしも地場産業の漁業の後継者を集める必要はないとの話だった。これには、未だに疑問が残る。将来的に見ても、男木島と漁業は切り離せないのではないかと、思う。食は暮らしの原点であり、漁業は生きる統べではないだろうか。福井氏は、島に移住者が入れ替わり立ち替わりに住むようになる可能性を示唆していたが、本当にそれでいいのだろうか。再びこの島を訪れて、探求していきたい。

4.「最高のロケーション」

 女木島は、高松からフェリーで15分の場所にある島である。自治会長ら地域の人々との座談会では、夜景や花火大会の眺めが抜群という話があり、一泊二日でゆっくりと女木島を訪れるのもいいのではないかと思った。
 座談会の中で、フェリー便の確保が芸術祭の成果として挙げられた。たしかに、高松と女木島は近いが、フェリーの本数は少ない。近いといえども、泳いで行くわけには行かないし、島にとって交通の確保は最重要なのだと感じた。芸術祭の期間中のフェリー運行状況と観光客数を島ごとに比較した(表-1)場合、便数と観光客数は比例する。今後、女木島の観光客数が増加すれば、フェリーの増便も十分考えられる。
 女木島と男木島は同じフェリー便で行き来できるため、ライバル意識よりも、一体となった取り組みができれば、もっと人が増えるのではないかと思った。座談会の中で、民泊の提案もあったが、フェリーから夜景を見ながら食事ができ、そのままどちらかの島に宿泊するプランがあっても、魅力的であると感じた。

5.「美作市のライバル小豆島!(向こうは思っていないかもしれないが)」

 視察が終わってから、美作市と小豆島(小豆島町及び土庄町)人口の推移を比べると、驚きの数字が出た。


 国勢調査の結果を並べてみると、平成12年よりお互いの人口はほとんど同じ値だった。しかし、直近の平成27年の値に差が出ていることがわかった。これは、政策の差なのか?芸術祭の成果なのか?
 塩田小豆島町長の講演の中で、印象的だったのは、「芸術祭によって、住民の自信が取り戻された」、「芸術祭は、次の時代の入口である」という言葉だった。たしかに、中央の行き詰まり、地方の活性化への転換期であるとは認識しているが、具体的に、各自治体が目標や目的を明確にできているとは思えない。その中で、芸術祭をきっかけに移住者を取り込み、年間に人口の1%以上の移住者を確保する目標を立てていることが、美作市との人口の差に表れているのではないかと感じた。
 今後、10年、20年と移住者を継続して確保するためには、確立された政策と、他にはない魅力が必要不可欠である。国の政策においても、「小さな拠点づくり」が始まっており、情報を集め、成功事例に学ぶことが持続した地域の第一歩ではないかと考える。

6.「地域の悪いところも魅力に変えるべし!」

 これは、福武幹事のアドバイス。まさに、目からウロコだった。例えば、美作市を魅力ある地域にする場合、きれいな景色、おいしい食べ物など、元々地域のプラス要素になりそうなものだけを、伸ばそうと考えていた。しかし、瀬戸内の島嶼と芸術祭が目指し、実現したものは、そうではなかった。過去の歴史上、負の遺産として捉えられるものまでを、ひっくり返してしまった。発想力、構想の厚みが少し感じられた言葉だった。「表面的なことだけを見るな!」とも、おっしゃられていた。
 まずは、美作の歴史や、文化を振り返ってみることが、魅力づくりのスタートではないかと感じた。

7.「元気な高齢者たち」

 瀬戸内島嶼の島ごとの人口や高齢化率、芸術祭のデータを表-1に示す。
 これをみて、最初にびっくりしたのは、各島の高齢化率だった。美作市よりもかなり高齢化率が高い。だが、多くの人が訪れる島になっている。
美作もやれば、必ずできると確信した。