2013年 100km Walk

 
◆瀧 友子(3期生・サポーター)

晴れの国 おかやま 24時間・100キロ歩行サポート・レポート           2013年5月19日
「100キロ歩行という冒険で得られるもの」



 プロスキーヤーの三浦雄一郎さんは、80歳になる今年(2013年)エベレスト山頂を目指している。出発前の記者会見で、80歳で登頂すれば世界最高齢となるが、「記録はどんな場合も破られる。僕自身はあまりこだわっていない」とし、「メタボで狭心症で余命どれだけか、という状況だった65歳のとき、『命を燃やすような大きな目標を持ちたい』とエベレスト挑戦を決意し、不可能だと思ったことができた。夢をみて、チャレンジし、成し遂げようとすることが80歳の私自身のテーマだ」と述べた。
 彼の様なエベレスト登山という「命を燃やすような大きな目標」は、誰もが持つことは難しい。時に彼のように何か大きな目標を掲げ成し遂げる人たちに勇気や元気をもらいながら、私たちは、小さく前進していくことで命を燃やしている。
 
 そんな私たちにとって、24時間で100キロを歩く、ということは「ささやかな冒険」である。年齢、性別、社会での立場の垣根はなく、ただ「完歩」という共通のゴールを目指す、シンプルな冒険。チャレンジャーの皆さんは、それぞれの思いを抱き、この5月3、4日にこの冒険に参加されることを決め、スタートに立たれたことと思う。

 チャレンジャーの中には、100キロ歩行を人生に重ね合わせ感想を語られる方も少なくない。確かに、何か目標を定めた後の、準備からその目標達成までの道のりは、人生の中で大なり小なり繰り返される。チャレンジャーが「100キロ完歩」に向けて取り組む姿勢には、実際の人生の目標、一つ一つへの取り組み方が透けて見えるように感じる。たとえこの100キロ歩行への挑戦が、もっと大きな挑戦への準備に過ぎなかったにしても、である。
 私はかつて一度リタイヤした経験があるが、その時の、100キロという距離に対する根拠のない自信は、若さゆえの甘さでしかなかった。食べたこともない物を走り読みした文章で知った気になり、おいしいよね、と語るような乱暴な自信。結果、自らボタンを押して足元の床を外すようなリタイヤを経験し、自分の覚悟の甘さを突き付けられた。「本気で取り組む」という事がいかなるものかを垣間見ることが出来たように思う。たのしむ余裕もないままに1回目の冒険は終わってしまった。
 2度目の冒険は、目標を持ち、それを達成するための過程を確かにたのしんだ。ともに歩く仲間、それを支えてくれる仲間、家族、天候、草木にも感謝の気持ちがうまれた。‘目標に向かって本気でチャレンジすること’がその気持ちを抱かせたのだと思う。

 「限界への挑戦」という言葉がパンフレットに上がっているが、100キロという距離は果たして誰にとっても限界か?といえばそうではない。ただ、そのチャレンジする思いや姿勢に限界があるのだ。完歩することによって、また、リタイヤすることによって、その限界はもっと遠のいていく。どんな100キロ歩行にするか、その目標が距離への限界突破以上のものをもたらすことになるのだと考える。それが100キロ歩行という冒険で得られる宝物だと思う。

 私は今年、実行委員のメンバーとして、大会当日までの準備に関わらせていただいた。掲示板への回答、電話のお問い合わせへの回答、申し込みへの対応など…これらに丁寧にこたえていくこと、新しい冒険への不安を少しでもなくしていただくこと、これが私にとっての今年の「100キロ歩行」だった。最後になったが、今回の100キロ歩行でも、多くの方々の支えがあったことを書かせていただきたい。
 歩く方への配慮にあふれた夜中の炊き出しには有志の方々のあたたかい想いがつまっていた。コース沿いにお住まいの方の温かい応援、トイレ休憩にご協力いただいたお店のスタッフのみなさん、90キロ以降、太陽も照り付ける中、足元の不安なチャレンジャーに伴歩してくださったサポーター。チャレンジャーを応援すべく、昼夜問わず応援団ポイントに足を運んでくださったチャレンジャー関係者のみなさん…。
 サポーターの中に、昨年のチャレンジャーも数名おられた。このチャレンジを実際に体験し、サポーターとして参加してくださった方は、実行委員会メンバーの私たちにとって大変心強い存在だった。100キロ歩行は未経験だが、サポーターとして参加してくださった方も、夜間の寒い中、また早朝から5月の気持ちの良い一日をこのチャレンジを支えるために費やしてくださった。何が欠けてもこの大会は成り立たなかったと感じている。

 事故なく無事終えることが出来たことに満足せず、参加していただいた皆さま、応援してくださった皆さまに感謝し、とともに大会を育てていくことが新しい冒険へつながっていく。この大会に関わっていただいたすべての皆さまに感謝申し上げます。