2008年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会
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◆山田 浩三(岡山政経塾 二期生)
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『岡山政経塾 自衛隊体験入隊レポート』
はじめに
岡山政経塾で自衛隊の体験入隊が実施されるとは、思ってもいませんでした。その当日も「ホンマか?」と感じながら日本原駐屯地に向かったくらいです。
永岑先生の安全保障講座はありましたが、世間では人によって大きく意見に差があるのが自衛隊という組織です。
今日の日本の繁栄があるのも「平和」であったこと、曲がりなりにも「自主独立の維持」があったからです。アフガニスタンやスーダンのように国内が内戦・混乱状態にあれば、いかに優秀な人材がいても成果を出すことは出来ません。平和がなければ、岡山政経塾のような塾は誕生しにくいと考えます。
このような意見を表明するだけで叩かれることが多いのが、平和ボケした日本です。
スイスを含め、あらゆる国が安全保障のために、血のにじむような努力をしていることを語るだけで「変わり者・右翼」と呼ばれていただけに、自衛隊体験入隊は私にとって歴史的なものとなりました。
各訓練項目についての感想・私見
被服交付
塾生に名前の入った袋が支給されましたが、中を見ると迷彩服はともかくとして、合羽と飯盒とライナーがあることに、ギョッとしました。ズボンはファスナーに慣れていただけにボタンがなかなかとまらないうえに、大事な部分のボタンがとれるなど前途を感じる着替えとなりました。着替えも訓練。
申告式・教官紹介
厳粛です。あらためて敷居をまたいだことを感じました。
基本教練
事務局・写真撮影担当という立場であったために、列の中に入ることは少なかったのですが、「礼」と「かたち」の大切さを感じました。それは、「礼」と「かたち」が人に与える影響力です。
これは写真係という第三者的なポジションにいたために、特に感じることが出来たのだと思います。国賓を接遇する場面はテレビなどで拝見しますが、この教練の延長線上に「国としての礼とかたち」があるのだと思うと震えました。
テント設営・缶メシ
教官の「私たちが手本を見せますから、皆さんはしっかりと手順を覚えて実施してください」に驚きましたが、協調した行動に「さすが岡山政経塾生、見事なり」が感想です。
防衛講話
UNDOFについての講話でしたが、私が強く感じたのは花嫁の荷物を送り届けたというエピソードです。そのとき花嫁と家族が「JAPAN」を目にしていたら忘れることはないでしょう。
例えは悪いかもしれませんが、私が海外で被災などした場合に「日の丸」が助けに来てくれたら、その瞬間の安心感は語るまでもありません。二度と忘れることはないでしょう。
インドネシアなどでの救援活動でもそうだと思います。私が助けられた被災者であれば、私はその国を永遠に忘れません。韓国軍に助けられたら、大極旗に感謝するでしょう。英国軍に助けられたらユニオンジャックを忘れません。
その意味において、国軍は最高の外交官であると思います。命がけの外交官です。
体力検定・自炊訓練・入浴
体力検定は心苦しい時間。膝の具合もあり3000mは棄権。腕立てと腹筋のなさに痛感。
教官が驚かれました。それは、周回遅れの塾生に対する伴走が自然に起きたことです。塾生には普通の行動であり、仲間を思う気持ちからの行動ですが、一般の老若男女の集りでは確かに少ない行動なのですね。助手の方のびっくりに私がびっくり。
カレー奉行に教官が苦笑い。実は撮影していて「塾生、スゴイ」と感じ始めたのが自炊訓練です。自分から出来ることを探し、ムダな時間を作らない姿勢に胸が熱くなりました。
入浴は2分で頭と身体を洗い、30秒湯船につかるという早業。やれば出来るものです。
起床・徒歩行進
午前3時はこんなにも暗いとは。行動までに30分の時間が与えられましたが、この体験入隊では一番の余裕です。トイレにゆっくりと行けるのはよいものです。平和はいいなぁ。
術後でリハビリ中の膝が心配でしたが、20キロを歩くことが出来ました。来年の100キロへの試金石と考えていたものでしたから、ほっとしました。
装備展示・基本教練
いろいろなオドロキがあった中で、最高にたまげた(この表現を使わせてください)のがこの装備品展示です。行進訓練中に、テント前に配置されたFH70。そして89式。
もちろんそれまでにも中隊長の心は感じておりましたが、本気レベルが尋常でないこと。こんな異例な対応に驚きました。中隊を超えた準備と対応にあらためて感謝。
テント撤収・食事・戦車試乗
チームワークは如何なく発揮され、予定時間より早く売店に案内されるというオマケがありました。隊員食堂での食事、座って食べられる幸せを感じました。
学びの意識
今回「日本の安全保障・危機管理の現場と団体生活の過ごし方や規律を体験」するのが目的であり、組織構成、価値観、規律、目的など、私たちが過ごす社会とは違う自衛隊において、極めて短い時間の体験で何を持ち帰ることが出来るか、がポイントでした。
何を学べるのだろうか、何を学ぶべきか、事前にシュミレーション出来ることはなく、また現場では指示された時間の中でいかに動くかでアップアップになりました。まさに体験こそが学びとなりました。
余裕のない自分に比べ、岩手・宮城内陸地震が発生により、日本原駐屯地では出動態勢がひかれていたと聞きます。イザとなればわずかな時間で出動していた組織ということを後で聞きました。
学ぶにはある程度の余裕が必要であるということを学びました。
団体行動と規律
火砲 説明を受けたFH70は、9名で操作するものでした。
「眼」となる役割、「通信」の役割、「実働」の役割。すべてが自分の役割を認識し、そのうえで極めて高い集中力のもとで操作出来るのが火砲です。中途半端な操作では全体の安全を阻害することになります。
「連携」と「信頼」と「自覚」を学ばせていただきました。
戦車 自家用車のようにドライバーだけで動かせるものではありません。車長・砲手・装填手・操縦手の4名の連携があればこそ動く。お互いの信頼感と覚悟と技術がないと動きません。
ビジネス現場において、「報・連・相」をさんざん言いながら、どれだけ本当に連携し、コミュニケーションをとっているのかを考えたとき、考えさせられました。
あらゆる組織には、その組織のルールや行動があります。自衛隊が特別とは思いませんが、ここまで基本と人を大切にする組織が自衛隊なのか。これは予想とは異なりました。
指揮・規律・協調がないと装備が動きません。人があってこその装備であり、人が活用しなければただの鉄の塊り。活用するために必要なのは「人」と「情熱」でした。
心構えと教官
私が先任だったら、助教だったらと考えながら教練を受けました。
私の年齢からすれば、若い隊員の皆さんです。彼らの堂々とした言動、自信に支えられた存在感、ハッキリとした指示には「へぇ〜」と感嘆するしかありません。
私が同じ年齢構成の団体を指揮しろと命令された場合、ここまで出来るだろうか。嫌われたくないからと、ニコニコと笑顔で行動するのではないだろうか。
仮定の話ですから、わかりませんが、「仕事にたいする覚悟」が「かたち」になるのだと実感しました。
ある意味「逃げられない」覚悟も必要と感じた時間です。
雑 感
自衛隊はその成立ちからして政治に翻弄されてきた組織です。
多くの国では、「軍人は国益と尊厳を守るために自己の生命を犠牲にする人」であるため、社会的地位が高く、英国では法律により軍人の地位を貴族の次に定めています。
国民が拉致されても平気であり、国の尊厳と国民を売るようにすら思える政治体制の中において、己を鍛え有事に備える自衛官に対して、私たち国民は何を為すべきかを考えさせられました。
納税者として国の組織である自衛隊に対する効率を求めるのは当然ですが、その前に、国民として整えるべきことがあると思います。
「日本国憲法及び法令を遵守し 一致団結 厳正な規律を保持し 常に徳操を養い人格を尊重し 心身を鍛え 技能を磨き 政治的活動に関与せず 強い責任感を持って専心職務の遂行にあたり 事に臨んでは 危険を顧みず 身をもって責務の完遂に務め もって国民の負託に応えることを誓います」 〜服務の宣誓より抜粋〜
反 省
反省だらけです。準備の不備、集合時間に遅れたことは見積りと段取りの悪さでした。
次回?の実施は考えたくないところではありますが、この体験を活かしたいと考えます。
ひとつひとつを振り返っていたら、まるで中学生日記で、稚拙な文章になってしまったレポートも反省のひとつです。
感 謝
最後に自衛隊体験入隊が実施出来たことに対し、担当部隊の皆さまと熱い情熱で対応してくださいました田住中隊長以下教官の皆さま。
やきもきしながら見守っていただいたのではないかと思いますが、包容力と繊細なフォローをしてくださいました永岑先生。
カッチリとした連携で対応していただいた7期の担当塾生の皆さん。
大きな度量と要所要所で指示をいただき、最大の支えとなっていただきました小山事務局長に感謝いたします。
「情熱」と「絆」
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