2010年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆高田 尚志(岡山政経塾 九期生)

『自衛隊体験入隊で学んだこと』




◇時の人となれ

駐屯地の門をくぐったとき、違和感を覚えた。
倉敷市児島にある家を出て、岡山で仲間と合流するまではいつもの生活。
期待と不安に胸を膨らませながら車中で交わした会話も、いたって日常的。
車窓を流れる風景も、見慣れた景色とは違ったが日常生活そのもの。
しかし、駐屯地の門をくぐる時、そんな日常生活から完全に遮断された、これまでに感じたことの無い重く身の引き締まる何かを感じた。

          「日本の安全保障・危機管理の現場を学ぶと同時に
                        団体生活で規律心・協調心を体得する。」

なるほど、ぴったりの目的だと思った。これまで、少し浮かれ調子だった自分は、この瞬間から覚悟を固めざるをえないと感じた。自衛官の方々の日に焼けた肌、隆起した腕の筋肉、盛り上がった背中、スキの無い表情。

            「時の人となれ」

自分も100%のめり込もうと決意した。


◇目的意識を持て

自分は、なぜここに来たのか。
政経塾で掲げているこの度の目的を学ぶことは理解していたが、具体的ではなかった。
「自分は、ここでの体験を通じて、何を得ようとしているのか」
安全保障についての知識を得て、自衛官の方々の生活を知り、体を酷使することで、自分の生活に何か関係があるのか?学んだことを自分の言葉に置き換えて、「アンゼンホショウやキキカンリ」に無関心な人達に、防衛費の必要性を説き理解してもらうことなのか?
どちらも大切なことだ。それは間違いない。しかし、それは表面的なことのように思えた。だが、その疑問に対する自分なりの答えを、入隊2日目の防衛講和の最後に、中隊長が与えてくださった。その言葉は当たり前のことだったが、しかし確実に自分がここで学んだ意義を見出してくださった。

          「悩んだら、初心に戻れ。」

自分は、なぜ日本原駐屯地に来たのか。本目的を自身の頭と体で体験すること。しかし、その根本には何があったのか。
『自分が岡山政経塾に入塾する際に決意した人間となるために、ここでの学びを生かす為』
駐屯地での学びは、これまでに自分が使ったことの無い筋肉と脳ミソを使う機会を与えて下さった。自分の生活に置き換えることも出来た。
目的意識を持つからこそ、行動に移せるわけだ。しかし、その一歩はなかなか踏み出せない。だからこそ、次の言葉が大切なのだということを学んだ。


◇一致団結せよ

全ての行動をともにすること。自分たちだけがよければ、それでいいわけではない。仲間が困っているときには、一緒になって悩む。手を差し伸べる。仲間が汗を流して歯を食いしばっているときには、大きな声で本気で応援する。2日間という短い時間ではあったが、100キロ歩行とはまた違った一致団結の素晴らしさを学んだ。そして、自分という人間はやはり弱い人間で、仲間がいなければ自らを奮い立たせることが出来ない人間であることも改めて知った。しかし、逆に、仲間と一緒に目的を共に出来れば、自分はその為であればがんばれる人間なのかもしれないとも思えた。


◇具体的な学び

いくつもあるが、特に「10年後のわが国に脅威」についてしっかり推測し議論することは、『国家戦略』を立てる上で本当に大切なことであると感じた。
社会保障・医療・福祉・教育・環境、どれも欠くことの出来ない大切なテーマだ。しかしそこに「安全保障」という、日本人の感覚からは少し離れたテーマも見逃すことの出来ない重要なテーマであることを初めて知った。

「人(労働力)・物(物資)・金(財源)」。人口が減少していく中で、どのようにしてこれらの問題を解決していくのか。少子化対策に力を入れるのか。あるいは、世界の人口が増えてくる中で、海外からの人による援助を求めるのか。少人数でまかなう為にも科学技術の進歩のためにお金を使うのか。財源はどうするのか。

これまで、色々な側面から物事を見るようにしなければ成らないと考えてはいたが、そこに「安全保障」というテーマが加わると、軍事面・外交面からという観点からみても、タレント議員ではどうにも解決できそうに無い、日本が直面している問題の根深さを知った。 

◇最後に


国家の目的とは何か?
座学を経て、グループディスカッションをし、ここまでレポートを書き、もう一度このテーマに触れてみると、このテーマがいかに素晴らしい問いであったかを思い知らされる。
参議院選挙を間近に控えた今、一人の有権者として何が出来るのかを考えている。まず出来ることは、候補者を知ることかもしれない。体験入隊で学んだ、日本国の脅威を脅威として感じておられ、その脅威に対抗するための計画を持っており、実行に移すための志のある候補者がどれほどいるだろうか?
私は、事前課題の中で国家の目的を「日本国民を将来の長きに渡り、繁栄存続させること」とした。グループディスカッションを重ねたが、概ね皆の意見と一致してはいたが、これが正しいかどうかは分からない。しかし、己の体裁しか考えておらず、ビジョンも、計画も無い政治家が「国のために、任務を遂行するだけだ。命もかける」と言われた自衛官の方々の崇高な命を預かっていることが、歯がゆくて仕方ない。

日本国民は、日本国の目的をはっきりと示せるリーダーの下に一致団結しなければならないと思う。