岡山政経塾 研究科
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◆岡山政経塾10周年記念 シンポジゥム◆
〜 シンポジゥムにて研究発表 〜
2.研究発表 (5) cocokara研究科 食からつながる心と体
〜未来を生きる次世代の幸せのために~
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cocokara(ココカラ)プロジェクト メンバー
岩井正美 榎本尚子 江草聡美 佐藤千景 永野範子
横道由記子 瀧友子 清水陸代 宮原史織 藤井美子
目 次
1. はじめに
2. つながる食
(1)教育とつながる食
(2)農林水産とつながる食
(3)医療・福祉とつながる食
(4)経済・環境とつながる食
3. 知識をつなげる
4. おわりに
1. はじめに
「食べることは生きること。
心と体の声に耳を澄まし、良く食べることは、良く生きること」
みなさんは、今年1年、「良く食べた、良く生きることが出来た」と胸をはって言えますか?
答えがNOなら、それは 「自分の責任」 です。
人は、食べることで「いのち」を繋ぎます。
そして、女性であり母である私たちは、愛と夢を胸に、「いのちをうみ、はぐくみ、つたえる」そして「家族の心と体を守る」使命があります。
食とは「人に良い」「人を良くする」と書き、
食事とは「人に良い事」と書きます。
私達に繋がるすべての人々が健やかで、笑顔であり続けるために
生活の質を高め、今を生きることの喜びを実感するために、
未来を生きる次世代の幸せのために、
私達cocokaraの名前は、
「ココロとカラダ」「ここから始める」という意味で名づけました。
食べることの大切さを問い、
人間社会の在り方を研究し、社会に啓発していきます。
未来を生きる次世代のために行動を起こします。

2. つながる食
私たちは、さまざまな問題を解決する一つの指針として、
生きていくことの原点である食を、
教育、農林水産、医療・福祉、経済、環境の中心にすえて考えてみることにしました。

(1) 教育とつながる食
まず、食生活と教育の問題です。
表@は朝食の摂取と学力調査の平均正解率との関係を示したものです。
この調査から、毎朝ご飯を食べる食習慣が整っている児童の学力が高いことがわかります。朝食という一つの生活習慣が、エネルギーを補給するということだけの意味にとどまらず、学力向上につながることが示されています。
表@

順位 |
都道府県 |
正解率 |
1 |
福井県 |
68.3 |
2 |
秋田県 |
67.6 |
3 |
富山県 |
66.1 |
〜中略〜 |
34 |
岡山県 |
61.5 |
35 |
京都府 |
61.4 |
36 |
福島県 |
61.2 |
37 |
佐賀県 |
60.9 |
38 |
北海道 |
60.8 |
39 |
和歌山県 |
60.8 |
40 |
福岡県 |
60.8 |
41 |
大分県 |
60.8 |
42 |
岩手県 |
60.7 |
43 |
長野県 |
60.7 |
44 |
鹿児島県 |
60.6 |
45 |
大阪府 |
59.1 |
46 |
高知県 |
58.0 |
47 |
沖縄県 |
52.1 |
その中で、岡山県は公立小学校・中学校の学力は2010年の全国学力テストで半分に満たないところに位置しています。皆さんは、これを見てどう感じられるでしょうか?
もちろん、朝食だけが学力を左右するわけではありません。しかし、教育の基盤に位置付けられている食生活を家庭・学校・地域で大切にすることは、未来を担う子ども達にとって重要だと思います。
表A
文部科学省,
平成2010年度全国学力・学習状況調査の結果
(中学生)
(2)農林水産とつながる食 
次に、農林水産とつながる食生活です。
みなさんは、お米を食べていますか?
朝ごはんにお米を食べましたか?
昼ごはんはどうでしょうか?!
昭和50年には、国民一人あたり茶碗5杯食べていましたが、今は3杯と少しです。
日本は豊かになり、パン・ハンバーグなど、小麦を中心としたお米以外のものが多く食べられているのです。よって相変わらず減反政策が続いて、そこには巨額の税金が使われています。
同時に、耕作放棄地が増えている現状があります。(表B)
表B(出典)2010年世界農林業センサス結果の概要(農林水産省)

表C 都道府県別
米消費ランキング
(2008年 総務省
家計の調査)
順位 |
都道府県 |
消費量(s) |
1 |
静岡 |
104.85 |
2 |
富山 |
104.18 |
3 |
石川 |
102.80 |
4 |
岩手 |
98.70 |
5 |
和歌山 |
98.54 |
6 |
山形 |
97.66 |
〜中略〜 |
38 |
鳥取 |
75.49 |
39 |
山口 |
74.83 |
40 |
高知 |
74.18 |
41 |
宮城 |
72.98 |
42 |
鹿児島 |
72.90 |
43 |
東京 |
72.32 |
44 |
茨城 |
71.86 |
45 |
香川 |
70.06 |
46 |
兵庫 |
68.59 |
47 |
岡山 |
66.82 |
米消費量ランキングによると、岡山県は全国
最下位。みなさんご存知でしたか?!
しかし日本人の主食は、米です。
お米を食べれば、野菜を中心とした副菜も必ず
食べるでしょう。稲作や畑作を持続可能なもにすることで増え続ける耕作放棄地に歯止めをかけることができるでしょう。そして、海産物なども消費拡大をすることで、そこに関わる人たちの生活も救われることになります。
食生活を見直していけば、農林水産、それぞれで抱える様々な問題も解決の方向に向かいます。日本の未来は、生産者はもちろん、私たち消費者も一緒に作っていくことができるのです。
(3)医療・福祉とつながる食
もう一つ、医療・福祉とつながる食は、
私たちにとって最も身近な問題です。
例えば、食生活と深く関係する生活習慣病。
厚生労働省は2011年、これまでの4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)に精神疾患を追加して「5大疾患」としました。
2008年のデータでは、国民の125人に一人は「うつ病」と診断されています。うつ病患者は摂食障害になる人も多く、進行すると他の疾患を引き起こしかねません。
表D 患者調査(2008年 厚生労働省)

現在、国民医療費は増加の一途をたどり36兆円を超えています。
忘れがちですが、医療費の70%は税金です。
2025年には国民の医療費は69兆円に達する推計もあります。

36兆67億円
(前年度比3.4%増)
表E 国民医療費の年次推移
(2009年度 厚生労働省)
生活習慣病の増加、高齢者医療費の増加を考えると、(表E参照)
「何を食べるかはわしの勝手。ほっといてくれ!」ですませてはなりません。
未来の子ども達に負担を残さないためにも、そして何より、私たちが「ピンピンコロリ」の人生を全うできるためにも、今日の食生活が未来の幸せにつながっているという自覚を持つことが大切です。
(4)その他、経済・環境とつながる食
ほかにも、TPPなど外交・経済にも関係する食料問題や、残飯・ゴミと関係する環境問題など、食を中心にすえて物事をとらえると、日本が抱える様々な問題につながります。
食生活を正していけば、日本の未来を明るくすることができます。
私たちは、自らが学んだことを、多くの人と共有し、食生活を変えるべく行動します。
3. 知識をつなげる
活動の始まりは日本中を震撼させた平成23年の3月11日でした。
ちょうど事務局にて小山事務局長にcocokaraの構想を相談していたところでした。この日をきっかけに地域や家族の絆、日々の生活の大切さを真剣に考え、それを早く多くの人に伝えたい気持ちが高まり、9月には第一回のイベントを開催しました。
これは地域キャラバンとして、県内の市町村に出向き、命につながる食を参加者ともに考えるためのイベントです。
第一回は風光明媚な牛窓の歴史ある服部邸にて開催。
ジャンルごとにゲストとの熱い討論会、そして牛窓産の食材を中心にした料理を美味しく頂きました。
参加は45人で、食に対する意識がさらに高まったと多くの方に言っていただけました。

第二回は平成24年2月19日に開催しました。
カキをはじめ多くの海産物が水揚げされる寄島で、「魚からつながる食と健康・教育」を、参加した33名の皆さんとディスカッションをしました。焼きカキの試食や、地元のお母さんたちが作った料理、全国スイーツコンテストで優勝した高校生達の手作りスイーツを堪能し、さまざまな意味で食の大切さを共有しました。

今後はcocokaraメンバーの持っている専門知識を共有できるような月一回の小規模な勉強会も開催していきます。食に対する意識と知識を高め、個々の活動の場でさらに多くの方々とここで得た学びを共有していきます。
また、食の生産現場に出向き、そこにある問題点を探り、生活者として何が出来るか、何をすべきか、さらには多くの方につたえていくために私たちはどうあるべきか、食からつながる様々なことを提言していきたいと考えます。
5. おわりに
私たちの国日本は、今、医療、教育、農業、経済、環境など、食からつながる様々な分野において、深刻かつ待ったなしの問題点を抱えています。
今を生きるものの役目として、さらに次世代に命をつなぐ使命として、今ここにある食の危機を見逃すわけにはいきません。
一つ一つの抱える問題は大きくても、根本にあるもの・中心となってそれらをつなぐものは、毎日の食事です。一人一人が毎日の食事を大切にすることで、大きな問題を解決していく力になる。そして、それは次世代の幸せにつながるということを、多くの人に伝えていきます。
また、2012年2月、世界無形文化遺産へ「和食」を登録するよう提案書が出されました。
そこには、
〈1〉 新鮮で多様な食材
〈2〉 米食を中心とした栄養バランスに優れた構成
〈3〉 自然の美しさを表現する
など、日本人が大切にしてきた食文化が記されています。
このような素晴らしい食文化を享受している世代の責任として、まずは、岡山の食文化を未来の子ども達へ伝えていく。地域とつながっている食の大切さを伝えて行くことも、私たちcocokaraがはじめていきます。
私たち一人一人が、食からつながる健康な心と体を得ること。
食を大切にする地域を作っていくこと。
それは、未来の子ども達への、すばらしい贈りものなのです。
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