2009年 直島特別例会

 
◆榎波  仁(岡山政経塾 八期生)
ベネッセアートサイト直島合宿レポート
             2009/07/11〜12
  犬島・直島・豊島合宿に参加して学んだこと



Utilize existing elements and create elements that do not exist.
あるものをいかし、ないものをつくる。

―福武 総一郎



建築を通して地球のディテールを考えることに興味がある。

―三分一 博志



〜日本を日本の真姿に戻して、そこで死ぬのだ。生命尊重のみで、魂は死んでもよいのか。生命以上の価値なくして何の軍隊だ。今こそわれわれは生命尊重以上の価値の所在を諸君の目に見せてやる。それは自由でも民主主義でもない。日本だ。われわれの愛する歴史と伝統の国、日本だ。〜

―三島 由紀夫



社会の変化を受け止める許容力、そして時間をつないでいける強さこそが、

消費文化に侵されきった現代の建築に、今もっとも必要なものだろう。

―安藤 忠雄



「廃棄」ということに結論を持たずに現代の営みは行われているのでないか。

「現在の便利さ」は、「次の世代の権利」を先に享受しているということである。

―石井 亨



犬島
直島
豊島

犬島、直島、豊島合宿の目的は、
「見る・聞く・体感する。考える力を身につける。発想の転換をする。」ことです。

犬島での精錬所/三島由紀夫の檄文
直島での家プロジェクト/地中美術館/ベネッセミュージアム/福武さんのお話
豊島での産業廃棄物廃棄場所/石井さんのお話/過疎化が進む島内の見学

を巡る今回の合宿は、「圧倒的な量のメッセージ」を浴びる合宿となりました。言葉として、ビジュアルとして、空気として、、、様々な強いメッセージに触れ続けた2日間でした。前述は、その中でも特に印象に残ったメッセージです。


「見る・聞く・体感する」場は本当に何回もありました。

「あるものをいかし、ないものをつくる」ことを体現した犬島の精錬所。
 ここでは福武さんを初めとした犬島に関わられている人々が作り出したい「ないもの」とは何か、それを考えさせられました。表面上だけではないもっと大きな、深いものがあるのだと思いましたし、もしかしたら、受け取る側一人ひとりに応じて「作り出されるないもの」は違うのかもしれないと感じました。帰ってきた現在も模索中です。

三島由紀夫の檄文。
 「三島由紀夫」という人物について、国語か歴史の授業ででてきたなぁとは思いましたが、まっすぐ正面を見据えて考えたことは実は今までありませんでした。檄文の内容は衝撃的でしたが、それが1970年代に書かれたものであるということがショックでした。100年も昔のことではないのです。先日の自衛隊体験入隊の時にも感じたことですが、日本において戦後の経済発展の裏で、他に何が変化していったのだろう、ということが強く気になりだしました。相当に大きな変化があったのだと直感していますが、それに多くの日本人が気づいていない、大きな問題とは認識していない、という印象があります。あわせて日本の教育では何を教えたいのだろうか、現代において何を教えるべきだろうか、ということも「檄文」から考えさせられました。

三分一さんの自然のエネルギーを活用した建築より。
 「建築を通して地球のディテールを考えることに興味がある」という言葉も強く心に残りました。三分一さんにしても、福武さんにしても、「地球の中の建築物」「地球の中の自分」「地球の中の街」など、そうした捉え方をされているということを感じました。考える視点の原点として、自分でははっきりと持てていなかった視点であると気づかされました。

直島での数々の現代アート。
 これも「あるものをいかし、ないものをつくる」を体現したものだと思います。しかし、現代アートについて自分はよくわかっていません。メッセージを受け取れているのか、受け取れていないのか、そもそも一方的に作品から発せられるものではなく自分の受け止め方が大事なのか、、、。夜の懇親会において、「古典アートと現代アートの違いは何か?感性を磨くために直島におくのは古典アートではだめなのか?」と福武さんに問いかけたところ、「古典アートは既に何かしらの評価がある。現代アートは自分で考えられるところがよい」とのお話をいただきました。直島の現代アートから、何かしらの感覚をうけとりつつも、ここはもっと自分の感性を養わないといけないと感じた場面でした。

安藤忠雄。
 安藤さんの建築物をたくさん拝見して、安藤さんという方に非常に興味を持ちました。安藤さんとはどういう人物で、そして建築で何を表現したいと思っているのか、それを学ぶために直島にて安藤さんの自伝を購入しました。今回の合宿で肌で感じた感覚とこの自伝とあわせて考えていきたいと思います。

豊島で考えた環境問題?
 豊島では産業廃棄物の廃棄場所を見学しながら、その問題の解決に長年ご尽力されてきた石井さんのお話を伺いました。石井さんのお話には大変な感銘をうけるとともに、また大きなショックもうけました。お話の中、今までの島の方のご苦労の中に、単に環境問題というだけでなく、行政としての責任など、色々な問題が含まれていると気づいたからです。中でも冒頭のページでも書かせていただいた、「廃棄ということの結論を持たずに現代の営みは行われているのではないか」、つまりこの問題とは「現在の産業構造・人々の意識全てが集約された問題ではないか?」ということは深く考えさせられました。自分自身の生活や意識はどうか?その辺りから考え直す必要がある問題だと感じました。

過疎化と農業の問題
 豊島の島内を見学している中で、耕作されていない農地を多々目の当たりにしました。島民の高齢化と過疎化によって、中々耕作できない状態にあるとのことです。現代の日本では第1次産業が衰退し、第3次産業中心の社会となっていますが、今回の合宿で色々と私が受け取ってきたメッセージとあわせて考えた時に、21世紀半ばに向けてそれでいいのだろうか、と改めて強く感じました。今後の世代では、農業体験者自体がどんどん少なくなりそうです。また農業への意識自体が弱い世代が増えていくと思います。それでよいのか。ここは政経塾での後半期の私のメインテーマとして、考えを深めていきます。


今回の合宿では前述してきたように多くのことを「見る・聞く・体感する」ことができました。また多くのことを「考え」ました。また「発想」についても多くの転換のポイントに気づかせていただいたと思います。それによって「今後も再現可能な考える力をつけられるようになるか」、「常に発想を転換しながら物事を見られるようになるか」が大事だと思っています。今回はそのきっかけを与えていただいた場だと思いました。

 福武さん、石井さんを初め、愛媛県弓削島においてしまおこしに取り組まれている兼頭さん(しまの会社http://www.kibounoshima.jp/kaisha/)、長崎県大村市で最年少市議会議員として頑張っている村崎さん、、、本当に多くのすごい方、情熱を持って頑張っている方がいるんだということを実感した2日間でもありました。すごく元気がでる旅・体験でした。

 西美さんを初め、今回の合宿をコーディネイトしていただいた方に本当に感謝です。また同期の皆さんと一緒に意見を交わしながらまわれたことで、自分一人で訪れるよりも100倍深い合宿になったと感じています。同期の皆様、ありがとうございます。
 最後に、100キロ歩行・・・自衛隊・・・直島合宿、、、このつながりを持って、岡山政経塾のプログラムは本当に最高だと感じました!とんでもなく深く、重要な学びの場が確実にある。それを成長につなげられるか?自分が問われるプログラムだと今回を持って実感しました。