2013年 直島特別例会
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◆森田 育宏(岡山政経塾 十二期生)
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岡山政経塾 直島特別例会レポート
『アートは童心に帰るための魔法』
幼少のころから書道を習っていたためアートに触れる機会が多かったですが、現代アートとなると敬遠してしまう所がありました。それは、私がわけのわからないものと決めつけていたからです。そのため、今回の時間はあまり楽しくないと決めつけていました。それではせっかくのアートに触れる機会が台無しになってしまいます。だから、現代アートに本気で向き合ってみようと意気込んで参加をしました。
1.地中美術館
最初の衝撃は、ジェームス・タレルの「オープンフィールド」でした。ただの白のスクリーンに映っているものとしか解釈できなかったです。しかし、その青のスクリーンの中に入ることができ、しかも奥行きの深いこと。自身が錯覚に会ったように、身体が宙に浮くような不思議な感情がこみ上げてきました。また、どれだけ自身の先入観でものを見てきてしまったのかと考えさせられました。
2.森 弥生氏の講演「VTS」について
1つの絵を見て、みんなで感じるという講義は初めてで2回目の衝撃でした。ここで出るみんなの意見、やはり各々の自身の経験にリンクしていることが感じられました。それよりもまして幼稚園の先生からこれみんなどう思うかなぁって質問されているような風景に私は感じられました。人間の誕生時は、無垢で純粋で心自体は何も違わないもの。変わっていくのは、自分の周囲の環境や社会によって汚されていくだけというのを感じ取ることが改めてできました。また、意見を交わすことで、人それぞれの心の見え方が感じられた瞬間で、みんなの「心のハダカ」を見ているようでした。
3.豊島
私にとってはここが一番衝撃的でした。この現実を知らなかった自分が恥ずかしくなりました。目の前には産業廃棄物の山、これを途中まで許した香川県、本当に腹立たしかったです。自分がされたらどう思うのかという島民の感情を無視したせいで、今も傷ついてしまっている人が大勢います。昔の豊島に戻す姿も見られないままこの世を去ってしまう人の思いも考えたら本当に涙が止まりませんでした。また、産業廃棄物を処理する技術は豊島を元の姿に戻すために本来はできたものではないと思います。ただ一部の人間の私利私欲に翻弄されてしまったせいで作らざるを得なかったものだと考えています。科学技術の発展のために役立ったかもしれないですが、こんな思いをするのはこれから先も豊島だけで十分だと考えます。
そして、その衝撃を忘れさせてくれるような豊島美術館。白い建物と水滴のアートと音楽は、心が洗われたような錯覚に襲われました。このまま時が止まればいいのにと思いました。そして、その時になぜか子供のころに、公園に虫かごを持ってセミを取りに行った風景や幼稚園でみんなと座って授業を聞いている姿を頭の中に思いめぐらせていました。
4.さいごに
アートに触れて、「見る、聞く、体感する。そして考える力を身につける」という部分を理解することができました。最後に残った「発想の転換」ですが、私には未完成のような気がしてなりません。次回は時間を決めずゆっくりと美術館を回れば新しい発想が浮かんでくるのかもしれないですが、今その発想の転換の答えを出すとすれば、子供のころに「なんで?なんで?」と何にでも興味を持つことすなわち童心に帰ることこそがアートの原点なのかもしれません。
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