2003年 直島特別例会
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◆吉田 英司(岡山政経塾 一期生)
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「岡山政経塾 直島レポート」
7月12・13日に、岡山政経塾特別例会が、香川県直島文化村で行われた。
私の今年の直島での目標は、「リフレッシュ」だった。
私は、少しばかり疲労がたまっていた身体と心を休ませるために直島に行った。こんなことを書けば崇高な目的を持って島に向かわれた方々の反感を買うかもしれない。しかし実際私は、日頃の忙しない時間を忘れ、ぼーっとする時間を得て、肉を食べ、お酒を飲んで、早々と眠りについた。だから真夜中の喧騒は知らない。その頃私はベッドの中で心地良い夢を見ていたと思う。
さて、このレポートについてだが、一期生で同じ分科会のメンバーである片山千恵美が、「安藤忠雄!安藤忠雄!」と連呼するのに反発し、「松浦亜弥」というアイドルについて述べたいと思う。
彼女は兵庫県出身で、ハロープロジェクトのオーディションに合格し、現在TV界をはじめ、いわゆる「業界」という世界で人気を博し、熱狂的なファンを持つ17歳のアイドルだ。かくいう私もファンの一人だが、何故彼女がこのような人気を得ることができたのか、その理由を考えてみた。
もちろん、彼女の圧倒的で人間離れした外見が多くの男性を魅了しているのは間違いない。しかし彼女は、同性からも支持を得ているのだ。私は理由をこう考えた。
「生まれながらの才能と、職業と、彼女の意思が完璧にマッチした、稀有な例なのではないか」と。
彼女が小さい頃からアイドルになりたかったというのは、彼女自身がいくつものインタビューの中で話している。そして、オーディション合格後に見せたTV番組(歌番組、藤井隆とのバラエティー番組等)やコンサートでの、アイドルとしての躊躇なき言動は、職業と才能の奇跡的な出会いを表している。その証拠に、彼女の現在のアイドルとしての地位は、他のハロープロジェクトメンバー、上戸彩らの追随を許さない。
さて、彼女は学歴エリートではない。現在日本では、「学歴崩壊」という状況がおこっていると言われているが、他に頼りになるモデルケースが十分提示されていない。この状況では、それでもまだ学歴にすがるか、自分探しをしながらフリーターになる人も多いと思う。
だが彼女は新しい、しかし普遍的な、これからの世の中に求められる事例を提示している。
学歴に頼らず、ややもすると夢見がちな自分探しに陥ることなく、自分の適性を見極めつつ目標に向かい努力をした。その結果、彼女は現在、TV画面で、スクリーンで、書籍で、輝いている姿を見せているのだ。
私達は、輝いている姿をとりたててメディアにとりあげられる必要はない。重要なのは輝いているかどうかだ。一流大学を卒業し、一流企業に就職するというレールをなぞるのではなく、「何をしている時が自分にとって一番輝やいているか」を考えるのがこれからは重要だということを、彼女は自分自身で図らずも示していると言えるだろう。
「最近の子供は、子供を生きていない」と、直島で安藤氏は語った。また、東京大学の教授も務める安藤氏はその著書の中で、「最近の学生の案は、良く出来ているものもあるが、もう一歩踏み込みがない。本当に最高のものを作りたいのなら、冷静な判断をし、そこからさらにもう一歩上を行かなければいけないのに」とも語っている。
夢中になるような時間、何もかもが嫌になるような絶望、未来が全て自分の為にあるような希望、を、最近の子供は体験していないと言いたいのだろう。冷静な判断からさらに歩を進めるためには、我を忘れる、自分を捨てる瞬間が必要とされるからだ。
今からの日本で、生きるか死ぬかの体験や、明らかな絶望や希望を感じることは突発的な事件以外難しいだろう。だが、何かに夢中になることはできる。松浦亜弥は、アイドルという職業に夢中になり、そしてその才能を開花させた。
私が直島で感じたこと。それは、相変わらずの風景と、それを愛することのできる心の健全さへの安心。講演された方々の話に説得力があるのは、想いの強さと、彼らが積み重ねてきたからであるということ。真夜中の出来事はなんだったのかということ。朝食後の風呂は格別だということ。豊島の悪役は松浦という男だったということ。来年できる新しい美術館にも是非来たいということ。
何度来ても直島は、また来たくなる場所です。
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