2004年 100km Walk

 
◆林  保幸(岡山政経塾 一期生)

「100キロ歩行を終えて」


【はじめに】

 「あらためて100キロという距離を考えてみると想像以上に長い距離であったと感じています。しかし今回の体験から人間の可能性は計り知れないものだと強く確信できたのも事実です。」

 私は、昨年挑戦して85キロ地点でリタイヤしました。リタイヤした時、すでに両足は曲げることもできずなんとか立っているという状態でした。真っ暗な坂道で縁石に腰を下ろし一人うなだれながら同期の宇野さんに連絡をして迎えに来てもらい車中で涙を流したのを今でも覚えています。「悔しい!どうして?」あきらめず完歩しようと懸命に前進している人達の顔を見ていると自分の意思でリタイヤを決めた事が情けなかったです。「自分は歩けないかもしれないけどタイムリミットまでリタイヤをしない事は出来たはず。」昨年は、苦い経験をしました。

 そんな私もサポーターの方々やこの企画に関係するすべての方々のおかげで今回100キロを歩き切ることができました。前回の失敗と今回の成功を比較しながらレポートをすすめます。


【当日までの準備】

・リタイヤした前回
 春と秋には、趣味のアメリカンフットボールで汗を流していたので普段特に運動をされていない方よりは走りこんでいたし「おそらく歩けるだろう」と思っていました。
そう言った自信から特に100キロ歩行へ向けたトレーニングもせず靴も普通の運動靴を履いて当日を迎えました。

・完歩した今回
 「運動しているといった自信は100キロを完歩するうえで関係ない。それよりは、100キロを歩き切る為に何をやったかと言う事が大切だ」と言う心構えを持つことが出来た。
 4月の初旬から10キロを1時間30分くらいで歩く練習を始め4月15日から4月末まで毎日このペースで歩いていました。4月18日には、同期の宇野さん、三期生の恒本君、秋山君と私の4人で岡山駅西口から清音駅まで歩きました。この時、長い距離を歩くと足に痛みを覚えました。「やばい!毎日10キロを歩いている時は痛みが無いのに・・・。長距離に弱いんだ」と危機感を感じ本番までにもう一度長距離を歩いておこうと決意しました。そして本番1週間前の4月25日に40キロを6時間で歩き練習を終え、後は軽く調整の為に歩いて当日を迎えました。もちろん靴には神経を使い中敷を敷いて通気性のよいものを選びました。

 塗り薬で最後まで迷った物があります。それは獣医さんが動物の筋肉や関節炎の鎮静に使用する“カンメルパスタ(人間用の40倍)”か“バンテリン(市販品でもちろん人間用)”です。カンメルパスタは、即効性は抜群ですが長時間の運動に適しているかどうか?どちらを携帯するか最後まで悩み結局バンテリンにしました。



【当日】

・リタイヤした前回
 「はじめから飛ばそう」と考え、走っては歩き走っては歩き・・・。備前の山を走って下りました。休憩はひんぱんにとっていましたが案の定、閑谷学校手前から足が曲がらなくなりリタイヤ地点までは靴のサイズほどの歩幅で歩いていたと思います。

・完歩した今回
 「走らない!マイペース!!」と考えながら歩きました。閑谷学校までは、一度も休憩をせず時間的な貯金をしました。ここで初めてゆっくり休憩をとり後は足の痛みとの戦いでした。「どんなペースで歩いても足は痛くなる。痛みとどう向き合っていくか」とスタート前から覚悟はしていました。やはり考えられない程の激痛が一歩一歩前進するたびに体の中を電気のように走っていました。意識はボ〜としながら少しづつ前進していました。
 フッと気が付くと昨年リタイヤした地点まで到達していました。ここでしばし縁石に腰を下ろし昨年のリタイヤした時の気持ちを思い出し「今回は、まだまだ歩ける!絶対にリタイヤしない!!」と再度誓い歩き出しました。

 そして一位で恒本君、二位で宇野さんがゴールした知らせを聞き、次は自分が必ずゴールすると自分に言い聞かせながら靴幅くらいの歩幅で前進しました。自分の後ろにはサポーターのあえさんが車で私の歩幅に合わせ運転してくれていました。
 自分の為に歩く気持ちと支えてくれている方々の為にも歩き切ると言った気持ちが交差しながら旭川の土手が見えて来たときには涙がでてきました。そして後楽園が近づいてくるとみなさんの姿が段々と見えてきて「あっ!やっとゴールだ!」と最後の最後まであった危機感と緊張から開放され涙が止まらず泣きながらゴールしました。



 【終わりに】
どうして歩き切る事が出来たのだろうとあらためて考えてみるとサポーターや関係者の方々による支えがあったからです。
 そして「かならず完歩する」と心に決めて準備をした事、そのハートがゴールまで自分を運んでくれたんだと思います。

 足の痛みが無くなった今、言えることは「痛みは数日で無くなるけど勝利は心の中に永遠に続くもの」だと体感できたこの経験をこれからの100キロという長い人生でリタイヤせず前に進んでいく布石にしていこうと思っています。

ほんとうに皆様ありがとうございました!