2006年 100km Walk
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◆三宅 雅(岡山政経塾 5期生)
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岡山政経塾100km歩行レポート
「24時間100km歩行レポート」
10:00 後楽園出発
当初からマイペースで行こうとしていたのですが、皆さんがかなりのハイペースでスタートしていたので、東山を超えるはるか前から最後尾集団におりました。「どう、調子は?」と後ろから声をかけられたので振り返れば、逢沢一郎幹事でした。「そう言えば、逢沢先生のお宅はこの辺と伺いましたが・・・」と話を向けると、「そう、これこれ」と正に先生の家の前でした。あれこれ子供時代の周辺のお話を伺いました。
11:56 沖田神社前、10km地点。
ブービー集団で第1チェックポイント到着。自分としては予定通りか、少し遅いか、という(まだ余裕のある)ペースでした。最初のサークルKで皆さんが昼食タイムに入っていましたが、自分は歩くのが遅い分、歩きながら食べるつもりで殆ど休憩を取らずに先へ進みました(専らカロリーメイトやお握り。これが良かったのか、逆効果か?)。
13:27 大富三叉路、20km地点。
10km地点が少し遅めという意識があったせいか、若干ペースを上げました。ただ、その分「歩き疲れ」が出始めたのもこの頃です。そのため、休憩の意味で時々「走り」始めたのもこの頃からです。
「歩き」続けるための筋肉(以下「歩筋」)と、「走り」続けるための筋肉(以下「走筋」)は、結構違います。ゴール後、小山事務局長が「歩くより、走る方が楽なんてことがあるかヨ!」と仰いましたが、少なくとも自分にとって同じ距離を移動する手段としては、「走る」方が楽なのです。おそらく、「歩筋」が人並み以下である分、長年続けたジョギングの成果として「走筋」が人並みより(少し)発達しているためでしょう。
ただし、そのまま100km走り続けられるかと言えば、それは別問題です。また、「走筋」を使っている間は、大半の「歩筋」が休んでいる上、走るための心肺機能活性化、血流向上により、疲労物質減少に効果があります。何よりも、走るポーズ(拳を握り、腕を直角に曲げて振る)はファイティングスピリット高揚に欠かせません。実際の速度は歩く速度程度でも、「走る」ポーズをとる方が、マラソンの場合、経験上長続きします。
また、「走り」続けるための足腰の関節、骨、足の裏の耐久性、靴の選択・セッティングについてもマラソン経験の有無が効いていると思います。実際、不安があった左ひざの故障跡の再発や足のマメ発生も殆どありませんでした。
15:43 飯井交差点、30km地点。
思い返せば、この辺りが一番快調だったように思います。多くのサポーターの皆さんの声援を受け、ほぼ予定通りのペースを刻んでいたかと思います。
合同下見の時にはかなりのアップ・ダウンによる苦戦を予想していましたが、適度に「走り」ながら「休む」、という戦法により、思いの外順調に備前市体育館に到着できました。
17:35 備前市体育館 40km地点。
トイレ休憩を含め、ここで10分休憩しましたが、この辺りから体の冷えを感じ始め、ウインドブレーカーを着ました。暗くなってきたので、品川白煉瓦あたりから懐中電灯を点灯しましたが、まだ比較的順調であり、その後の異変の前兆が忍び寄っていることには気付きませんでした。
19:53 備前市穂浪橋、50km地点。
目標であった、10時間で中間地点到達を達成!「よしよし」と気を良くした瞬間、不運の連鎖が始まっていました。「あれ、足が動かない」そう、通称「ガス欠」です。筋肉運動のエネルギー源である体内貯蔵グリコーゲンが尽きると、後は燃焼効率の悪い脂肪をエネルギーとして筋肉を動かさねばならないため、急激に筋肉が「動かない」状態になるのです。ここで無理をして動かそうとすると、筋肉が「攣(つ)る」か、最悪「肉離れ」を起こして、取り返しのつかないことになります。
マラソンでは、普通の人の体内貯蔵グリコーゲンは、約20km走ると枯渇すると言われています。フルマラソンで42.195km走りきるためには、グリコーゲンを節約しつつ、出来るだけ効率的に脂肪を燃やして走るべく、多くの工夫、提案がされています(結局は正しいトレーニングの積重ねですが)。しかし、「歩く」「走る」の違いはあれ、その2倍以上の距離である100kmについては、自分にとって全く未知の世界であることを再確認しました。
そして、想定外の状況を認識しました。時々「歩筋」を休ませるべく、「走り」たくても走れなかったのです。備前市界隈の夜道はとりわけ暗く、小さな懐中電灯一つでは足元が良く見えないのです。ランニングは微妙な体重移動の連続ですので、視認出来ない僅かな路面の高低差が「つまづき」のきっかけとなり、いつ転倒するか分かりません。まして、疲弊した脚力、不案内な道路事情では怖くて走れないのです。
さらに不幸は続きました。備前市の市街地を過ぎ、いよいよこれから閑谷学校に向かう道となり、街灯も殆ど無くなって来た頃、突如懐中電灯の電池が切れました。全くの暗闇に包まれ、電池の交換すらままならず、なんとか入れ替えたものの何故か点灯しません。「万事休す」でした。
23:00頃 閑谷学校前、60km地点。
暗闇のため、さらに歩行速度が低下し、それに伴う体温低下でいよいよ足が動かないという悪循環の中、まさに「這うようにして」閑谷学校前に到着しました。サポート隊長の秋山さんに懐中電灯を見てもらったところ、電池を入れる向きが逆になっていることが分かり、以後使えるようになりました。
峠のトンネルを過ぎ、公園の自販機コーナーの明かりの下で、やっと持参したアンダーウェアを着込むことが出来ましたが、冷え切った体が温まるには至りませんでした(もっと早く着ていれば、とつくづく思いました)。
01:30 リバーサイド、70km地点。
ここに辿り着くまでの長かったこと。4期・滝口さんや、サポーターの北川さん、小山事務局長などの激励を受け、出発しました。途中何度か、サポーター・田中一平さん等の激励を受けました。時々、地元の深夜ドライバーや「族」っぽい単車のニーチャン達に、質問されたり激励されたりしましたが、そんな交流も思いの外、精神的な支えとなりました。
04:00頃? サンクス万富辺り?、約80km地点
記憶もかなり散漫になってきていました。そろそろ夜明けが近い時刻でしょうか?サンクスで5期・杉本さん、4期・坂本さん等にあったような気がします。杉本さんは足を引き摺り、かなり辛そうでした。
自分はどういう状況だったのか、実は良く分かりません。それなりに足を進めているつもりなのですが、次から次へと後続のチャレンジャーに抜かれて行きます。思っている程、足が進んでいないという事でしょうか。瀬戸駅を過ぎて、暫く行ったあたりで4期・高田裕司さんに抜かれたように思います。かなり辛そうな足取りでした。
しかし、メデオを過ぎ、もう直ぐ東平島交差点といった辺りから、一つの異変が起きていることに気付きました。朝日が昇り、気温と共に体温が上がり始めたのか、少しずつ足が「動く」感じが出始めたのです。
それは丁度、絶体絶命のピンチの中、太陽エネルギーを浴びたウルトラマンが逆転の必殺・反撃に出るシーンの如き変化でした。加えて、体温上昇に伴う発汗により足腰に塗りこんだサロメチールが機能し始め、ターボチャージャーの如く熱く血行を促進したのです。正に「ランナー三宅」の復活でした。
ナカシマプロペラ前あたりから、少しずつ歩行を早めながら時折軽いジョギングを交え、新幹線ガード下の道案内をして下さったサポータの方(すいません、お名前分かりません)に先導して頂いた頃には、(時間的余裕が少なかったこともあり)かなりペースを上げることが出来ました。
東岡山駅から高島駅に至る頃には、3期・湊成巳さんや秋山サポート隊長の手厚い応援を受け、気力を維持することが出来ました。途中で、5期・横田俊介さんや杉本さんと激励し合いつつ、3期・布野浩子さんのサポートを受けながら、ついに最終ストレートである旭川土手に至りました。
旭川土手では、ただゴールの後楽園のみを見定めつつ、大半走っていたように思います。ゴール直前の橋の前でついに4期・坂本委員長を抜いてしまいました(あれ、ゴール前だったんですね。既にゴールインして近所にタバコでも買いに行った帰りかと思ってました)。
09:45頃 後楽園ゴールイン
小山事務局長、西原幹事、その他多くの皆様の盛大な祝福を受け、ゴールインできました。ただ、ただ、感謝です。素晴らしい経験をありがとうございました。
後記
このような自己の体力、気力との戦いは、10数回のフルマラソン完走で充分経験したつもりでおりました。しかし、「歩く」という苦手分野、しかも100kmという未踏距離での体験(ある意味、地獄)、そしてサポーターの皆様の暖かい支援の数々は、得難い貴重な経験となりました。
反省点もたくさんあります。下見の準備不足(何度となく道に迷いかけました)、ペース配分、夜の寒さ対策など、よくまあ完歩できたものと思います。これも万全のサポート体制の賜物ですので、来年以降のサポートに反映できればと考えております。
実はフルマラソン完走と言いましたが、(週1程度の5−10kmジョギングは続けているものの)既に数年のブランクがあります。これを契機に今シーズンから再チャレンジをしようかとも考えております。多分現状では完走は不可能と思いますので体のつくり直しが必要です。100km歩行とはまた違った、しかし、100km歩行にある程度役立つ、気力・体力を養うに有益かとも思いますので、幹事、塾生、OBの方々もいかがでしょうか?有志がいらっしゃれば、同好会設立を提案してはと思います。
本当に皆様、ありがとうございました。
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