2006年 100km Walk

 
◆高橋 和巳(岡山政経塾 2期生)

岡山政経塾100km歩行レポート
『2006年24時間100km歩行
     〜旅は道連れ、世は情け道中記〜』





<足掛け2ヵ年のあしあと>

2005年 2006年
後楽園(スタート)  0km 10:00 10:00
沖田神社 10km 11:43 11:48
大富三叉路 20km 13:45 13:56
飯井交差点 31km 15:50 15:49
備前体育館 40km 18:06 17:45
穂波橋前 50km 20:42 20:00
吉永交差点 61km 23:25 22:16
和気橋リバーサイド 69km 01:05リタイヤ 23:59
瀬戸署 82km   03:05
藤井古都宿 91km   05:32
高島保育園 95km   06:47
後楽園(ゴール)   100km   07:36

 このレポートをご覧頂きありがとうございます。皆さまのおかげをもちまして、なんとか歩ききることができました。あらためて感謝いたします。

「旅は道連れ、世は情け」昔のひとはうまいことを言うモンです。今回まさにこれです。   
去年の悔しい思いや再戦の決意はどこえやら、殆ど、練習らしい練習はできませんでした。真剣に歩いたのは正味1km程度でしょうか。あとは、自宅と会社の往復と階段の上り下りくらいです。去年は倉敷ツーデイマーチで20km、鬼ノ城20kmとバーベキュー、直島の植樹の帰りの早歩き等々、えらい差です。去年はやる前にもう疲れてたのかなぁ、なんて考えたりもしています。

 こうやって、データにしてみて思ったことがあります。昔々のいにしえびと、東海道中膝栗毛の弥次郎兵衛、喜多八さんや上方のあきんど、みやびな連中のことです。夜は明かりもないし、ほんとうに怖いので歩かなかったみたいですが、江戸から京都まで約500kmを2週間(1日あたり30〜40km、河川の氾濫とか何事もない場合)ほどで歩いたそうです。飛脚だと3、4日。しかも一説によると、江戸時代中期以降、東海道の往来は年間200〜300万人、ピンキリでしょうが、旅行費用が往復30万円強。

 1日や2日ならまだ馬力も気力も続くかも知れませんが、2週間も毎日続くとなると気が遠くなりそうです。健脚ぶり、そしてなにより、その往来数、人々の心意気に打たれるものがあります。なにがなんでも、どんなことになっても、想像するだけでなく、実際に体験してやろう。この好奇心が突き動かしていたのでしょう。途中で命を落とすことさえ覚悟して、近親者や友人は今生の別れといった思いで次の宿場まで見送ったといわれてます。松尾芭蕉も、「奥の細道」で、旅立つ際の心情を「先行きの思いに胸はりさけそうで、別れの泪をそそぐ」と詠み、結びでは、無事帰った芭蕉を前に門人らが「死んだと思っていた者に会うがごとく」喜んだとあります。すごいモンです。これほどまでの悲壮感、覚悟は今回なかったような気がしてます。

 今では、東京大阪だと、飛行機で1時間、新幹線で2時間40分、車で6時間〜8時間でしょうか。あくなき好奇心は技術革新も生んだんですね。でも、便利さにかまけて、自らの足という人間の能力的には退化ですね。往復30万円(長屋住まいの庶民さんで半年分?)の給料をはたいて、1ヶ月上方見物をする江戸っ子、ウンか月分の給料で1週間海外旅行する若者・・・。ほんとうの心の豊かさはどうなんだろう。隔世の感、なんだかなぁ。



閑話休題

<下見>
 森脇さんの「下見に来ない奴は完歩率が低い」発言のプレッシャーと時間がぽっかりできたので、4月30日能登君の車で新田さんと下見。特に去年リタイヤした和気橋以降のルートを再確認した。ここを歩く頃は、疲れと痛みがピークに達しているであろう自分の姿がありありと浮かび、あまりの距離と変化の少ない直線と車での乗車時間に更に気分が滅入る。

<最年長記録>
 チャレンジャーをチェックしながら、去年できなかった最年長記録のタイトル奪取のため、善木さん、小坂さん、久宗さん、三宅さんを勝手にライバルと定める。結果的に2時間程度タイトルホルダーの栄誉を享受したが、あっさり三宅さんに更新されてしまう。まぁいいや。

<歩き方>
 完歩できた方々に聞くと、先行逃げ切り型の人が多かったのであるが、去年のデータを見ると、31kmの飯井の交差点あたりまでは、参加者の多くが時速4.5km〜6.5kmなのに、交差点以降、上り道となることもあり、時速3km〜5kmに急激に下がっていたので、年寄りだし、あまり最初から無理してもなぁと(もともと無理ですが・・・)、意識してゆっくり目に歩くことを心がけた。それでもデータを見ると、時速5.3km程度で歩いていた。飯井の交差点くらいまでは最後のほうだったと思うので、まわりのあまりの速さに驚く。身の丈が一番だよね。一平君指導のできるだけ力を抜いて自然体で歩くよう心がけたが、到底無理。その通り歩けてたのは、西原幹事の写真撮影時のみか。   

<ウォーキングハイ>
 去年体験して、いい面も悪い面(神様の試練)も見せてくれたのだが、今年も至福の時間を体験させてもらった。閑谷学校で、膝がかくかくはずれそうなので、秋山君と柿本さんに無理言って、両膝の上下にテーピングしてもらった。そのあと、宇野さんに「じいさんみたいになっとる(実際そう見えたに違いない)」と言われ、柳井さんに昨年、布野さんと増田さんを完歩に導いた魔法のストレッチをしてもらう。あまりの体の硬さと痛さに男の悲鳴(微妙)。
 その後、嘘のように、変身しました。そうです。待ちに待ったウォーキングハイの瞬間が訪れていたのです。柳井さん、宇野さん、秋山君、柿本さん、ありがとう。前さんとサポートの洲崎君に続いて、トンネルを抜けるとルンルン気分(今時死語です)で、去年のにっくき、腰をひねった地点を通り過ぎ、リタイヤした和気橋リバーサイドまでひたすら休憩せずに歩く。いつウォーキングハイの状態が切れるか冷や冷やしながら、それまでの足の痛みや疲労が消え、ダイビング中(久しくやっていないので、やりたいです。誰かぁ〜)の浮遊感、いや、雲の上を歩いているような、いや、道路上をすべるように歩いているようなふわふわとした感覚(俺は仙人か)を覚えて悦に入る。
 とはいっても、去年のウォーキングハイ区間(松本橋サンクスから閑谷学校過ぎ)も今年の区間(閑谷学校から和気橋リバーサイド)もデータで見ると、驚くほど早くなっているわけではない。精神上の悦楽というところか。

<その瞬間に立ち会い、垣間見た感動の場面>−順不同−
1 東岡山駅を過ぎ、高架下をへとへとになりながら歩く竹内君に寄り添うように、奥さんと娘さんが一緒に歩いていたこと。(うちの家族は泊まりがけで遊びにいっている。この違いは何か、考えあぐねる。その後、少しして、小山さんに「ラストスパート」と言われ、さらに気分的に「こらえてぇ」状態となる。)
2 金関さんが、最愛の子どもたちのもつテープをきり完歩したこと。
3 横田君が、去年の悔しい思いを内に秘め、最後の最後、旭川沿いの土手をじいさんのよちよち歩きになりながら、ゴールしたこと。
4 チャレンジ中、無理な頼みごとにも笑顔で応え、声をかけてくれたサポーター。
5 吉永のローソンの手前で、極限の寒さのなか差し入れをしていた地元の人。
6 実行委員長の坂本君がぎりぎり滑り込みゴールしたこと。
7 この歩行(苦行?荒行?)が、結構まわりの地域や人に知られていること。
8 スーツ姿の小倉さんが、ゴール手前でネクタイをしたこと。
9 夜滅茶苦茶気温が下がったのと、腰の保護のため、瀬戸署チェックポイントにいた野田君にホカロンないかって聞いたのだが、どこかのバス停で、足にエアサロンパスを振りまくっていたのを柿本さんが見つけ出してくれて貼ってくれたこと。
10 高島保育園で出会ったいつも元気な布野さん。
11 石川君がでかい水ぶくれを何個もつくりながら、自分を産んだオカンの痛みに比べたらと言って泣き言ひとついわず頑張っていたこと。
12 自分のこと。

<本当にありがたかった事>−順不同− 
1 みんなの満面の笑顔と泣き顔、声、姿
2 小山事務局長
3 西原幹事のおしぼり
4 いろんな人からのメール、電話
5 逢沢幹事の定番ピンクパンツ
6 小倉さんの定番スーツ
7 柳井さんのアフロ暴走族
8 いろんなところに出没していた秋山君、林さん、あえさん、能登君、恒本君、xxxさん、・・・言えません。(*^^*)

<本当に申し訳なかったこと>
 竹内君が瀬戸駅で出会って、「道が違いますよ」と言ってくれていたらしいのだが、まわり真っ暗で、人相わからず反対方向(瀬戸駅から万富方面)へ歩いているし、当方ヘッドホンをしていて何を言っているのかわからず無視してしまった。ごめん。

<それでも準備しておいて助かったもの>−順不同−
1 靴:昨年リタイヤして速攻買いしてしまった月星製。その後ほとんど履かずでしたが、慣らしておいたほうが当然よいです。合う合わないもあるし。新田さんは、シューフィッターのいる靴屋(なんと児島)まで選びにきたそうです。完歩おめでとう。
2 夜間防寒用(防水抜湿)フード付きコート:それでも昼と夜の温度差で強烈に寒かった。忠澤君には、なにペンギンしてるんですか、恒本君には魚河岸の人とか言われたが、まわりからみるとその通りだったんだろう。寒くて、コンビニでのおでんが滅茶苦茶ありがたかった。
3 厚手のソックス:テーピングとともに、完歩と靴ずれとならなかった原因のひとつ。
4 一平君と魔法のテープ:昨年の腰をひねった経緯から、足腰にぐるぐる巻きしてもらった。結果、水ぶくれできず。
5 脱毛した足:見慣れない奇妙な感じで、よくみるとパンパンに腫れているような気がするがよくがんばってくれました。テープはがすとき、とても楽でした。
6 はちみつの飴:柿本さんにアドバイスもらっていたもの。同期ありがたし。
7 タオル:日焼けしないように首に巻けたし、1日中あるいて、顔中泥だらけだったので、途中洗面してさっぱり。
8 懐中電灯、夜光タスキ、反射テープ:暗い夜道の必需品。
9 携帯音楽プレーヤー:寂しさ対策で、元気が出そうな歌をかたっぱしから入れてもらった。実際、過去の切ない思い出が頭の中を駆け巡り、痛みからは瞬間的に解放された。なんか御礼がいるな。欠点としては、応援してくれている人の声や夜間の車の音が聞こえないので、迷惑をかけたり、轢かれたりするかも。
10 エアサロンパス:多分2本使い切った。旭川の土手で最後頑張る横田君の応援のため本郷さんに車を出してもらったのだが、臭ったよね。ごめんね。
11 バンテリン、ロキソニン、ボルタレン:痛み止め、結局使わなかったが安心料としては安いもの。
12 長袖のシャツ:去年半袖で、日中かなりへたったので、速乾タイプのものを購入。
13 帽子:日焼け体力低下対策。夜間も被っていたので、フード付のコートとも相まって、それで、忠澤君が何ペンギンしてるんですかと言ったのかと、このレポートを書きながら妙に納得。当時は、想像することすら苦痛で、えへへと薄ら笑い。
14 気持ち:大事。

<準備したけど微妙だったもの>
1 ワセリン:スタート前に塗ったが、その後特に違和感なし。
2 日焼け止め:もう歳だし、もう黒いし、もうシミもあるし。

<謝辞>
 岡山政経塾幹事、関係者、チャレンジャー、サポーター、ご家族のみなさま、大変お世話になり本当にありがとうございました。またの機会には是非サポートをさせていただければと思います。「人」って素晴らしい。


 
ご参考1:江戸時代の道中持ち物
矢立(携帯用文房具)、扇子、糸針、懐中鏡、日記手帳、櫛、鬢付け油(大名行列のときは、髪の乱れを直さんといけんかったらしい)、ちょうちん、ろうそく、火打ち道具、懐中付木、麻綱、印籠(薬入れ、薬)、鉤(なんに使うんだろうとちょいと調べてたら、旅籠などに泊まる際、結構無用心なので、雨戸や襖にカンヌキするらしい)、雨具、足袋、草鞋(消耗が激しく予備が必要なのは勿論のこと、草履の緒ですれて結構血に染まりながら歩くので、難儀だったらしい)、手拭、弁当箱、火打石、旅枕、往来手形(身分証明書)、関所手形(通行証明書)、財布、キセル などなど
旅:ウォーキング今昔

ご参考2:『旅行用心集61か条』1810年(文化7年)八隅蘆菴編著より抜粋(注:編集、脚色)今でも興味深いです。人それぞれですが、特に7など・・・。
1 初めの一歩:「足の点検」:旅の初日はとくに静かに足を踏みしめよう。草履が足になじんでいるかを確かめるようにするといい。足を痛めたら、旅のあいだ苦しむことになる。足は大切。←とても大事。
2 出発前:「荷は軽量」:旅行に持って行く物は、懐中物のほかはなるべく少なく、持ち物が多くかさばると失ったり、煩わしい。
3 出発前:「一筆」:旅は命がけ。家族とは水盃を交わして別れを惜しめ。
4 道中:「食事」:暑いときは、人間の胃腸は具合が悪くなっている。食べ物が消化しにくい。知らない魚や鳥や貝、たけのこ、きのこ、瓜、西瓜、餅、赤飯などは、多く食べないほうがよい。食あたりや日射病になったりして苦しむもとになる。
5 道中:「食べすぎ」:腹がすいたからといって、食べすぎはいけない。特に急いで食べるのはよくない。ゆっくりと落ち着いて食べなさい。ひどく腹がすくと、心臓も疲れ、そこへ食べ過ぎるとたちまち気分が悪く急病になることもある。
6 道中:「飲酒」:空腹のときは酒を呑んではいけません。食後に呑みなさい。暑いときも寒いときの酒は温めて呑むといい。
7 道中:「色欲」:旅行中は色欲は慎みなさい。その筋のひとは病気をもっているものである。暑いときは特に移りやすいのでこわい。また、布団から皮膚病などが移ることもあるから、香りのあるものを身に付け、その害を防ぐとよい。
8 道中:「飲み水」:旅行中はたびたび喉がかわき、水を飲むけれど、きれいな水を選んで飲むこと。山椒や胡椒は、山の中の悪い空気や湿気を取り去ってくれます。
9 道中:「休憩」:旅で疲れはてたあげく、道路や草むらで休憩したり眠ったりする人がいるけど、決してしないこと。害虫に注意。
10 道中:「食後」:食後は絶対に急がないこと。もし転んだりすると、食べたてでは腹の中が落ち着いていないため、気を失ってしまうことがあります。
11 道中:「用足し」:用足しを我慢していると心臓などに負担がかかり病気になったり死んでしまうことがある。
12 道中:「道連れ」:旅の連れはせいぜい5、6人程度までがよい。大勢で行くと、人はそれぞれ考えが違うので、きっとうまくいかない者がでてくる。
13 道中:「道連れ」:道連れにしないほうがよい人は、大酒呑み、癖のある人、癇癪、喘息もち、大変な持病もち。
14 道中:「装身具」:派手なもの、変わった着物や持ち物は身に着けないほうがよい。目立たない格好であれば災難にあうこともない。←柳井さん気をつけて。
15 道中:「御礼」:旅の途中、神社や寺はもちろんのこと、橋や立ち木、大きな石などへの落書き、御札を貼ったりするのは厳禁のこと。←感謝、感謝。