2007年 100km Walk

 
◆西美 篤(岡山政経塾 6期生)
僕の歩いた道〜24時間の筋書きのないドラマ〜」



24時間ジャスト(という記録)でゴール。最終チェックポイントを時間内ゴールは絶対無理といわれるタイムで通過した自分がなぜゴールできたのか。そこにはドラマがありました。



「第1話」(プロローグ)
・物の準備・・先輩方のお話と過去のレポートを何度も読み返し、靴屋・スポーツ用品店・薬屋と何度も通い、お金の許す限り購入。当日持って行かなかった物もあるが、まずは物の準備は完了。
・体の準備・・次は、7km練習に数回参加。仕事の忙しさもあって長距離練習や自主練習ができなかった上、日頃から蓄積された疲れでふくらはぎがパンパンのまま、当日を迎える。体の準備はいまひとつ。
・心の準備・・合同下見会に参加。後日有志でもう一度復習。物の準備を始めとして、不安材料はゼロにしたい。小さな傷が24時間で大きなヒビになり、心が折れるのはいやだった。
 10日ほど前から、徐々にモチベーションアップ。部下に、社長に、「僕は100km完歩します」宣言。一番忙しいG.W.にホテルにいないのだから、完歩しなければ顔向けできません。さまざまな人の思いを胸に、心の準備は完璧。

「第2話」(旅立ちの時
迎えた当日。空は青く晴れ渡り、心地よい風が吹いている。これから100kmに挑む我々チャレンジャーを祝福してくれているかの様。はやる気持ちを抑え、「帰ってくるぞ」と心に誓いながらスタート。沖田神社を過ぎ、永安橋を渡り、ポプラで最初の休憩。この時点で既に膝裏に違和感を覚えていた。

「第3話」(混沌の時)
実は、この休憩後から東平島までの記憶が混沌としています。スタートからほとんどを一人きりで歩いたせいもありますが、全体がぼやっとしていて、歩いているときも思考が停止している感じでした。
ただ気持ちは前へ前へと身体を押しやり、ペースは遅いながらも一歩一歩進んでいきました。

「第4話」(試練の時)
リバーサイドでおかゆをいただきながらテーピングをしてもらいを、通過。万富のサークルKサンクスで時間を確認。「かなりぎりぎりだけど、このままのペースで行けば大丈夫。」の言葉を胸に出発。少しペースを上げた分、足に負担がかかっていた。

「第5話」(挫折の時)
夜が明けかけた頃、睡魔に襲われ、歩行姿勢が乱れたせいか、ずっと痛みを感じ続けていた膝がついに爆発。一歩ごとに激痛が襲い、歩幅は30cm以下に。思い通りにならない身体がもどかしく、悔しくてどうしようなく流れる涙。「あぁ、もう間に合わない」「24時間完歩を目指そう」心が半分以上折れていた。

「第6話」(復活の時)
東平島の交差点近く、サポーターの皆さんが来てくれた。田中一平さんと妹さんにテーピングを受けながらも、この時点ですでに心の中の目標は「24時間完歩」。しかし、右足を固め、左足に移ったときの一平さんの一言。
「急いでやりますからね。もう少し待ってください。」
「えっ?でも。」
「大丈夫。間に合います。」
その目は真剣でした。僕のゴールを信じていてくれる人がいる。後楽園で待ってくれている仲間がいる。サポートしてくれるみんながいる。折れていた心が復活しました。
しかし、しばらくはハイペースで進むも酷使した身体はもうボロボロ。徐々にペースが落ちつつ、古都のローソンへ到着。時間は既に9時をとっくに回っていた。

「第7話」(奇跡の時)
古都のローソンで待っていてくれた秋山さんと能登さん。最後のドラマの幕開けでした。お2人の完璧なサポートでハイペースのまま、高島を過ぎ、竹田橋を渡ろうとしたとき、後楽園が見えました。いや、実際には見えない場所なので、頭の中のイメージだったのでしょう。そしていつしか僕は走り出していました。途中で待っていてくれたみんなの伴走を背中に感じながら、ただひたすらゴールへ向って。

「最終話」(エピローグ)
誰かが叫んでいた。「あと10秒!」
明日歩けなくてもいい。足が千切れてもいい。そんなことも考えながらのラストスパート。
10:00ジャストのゴール。本当に24時間100km完歩の瞬間でした。

僕の歩いた道。他の人にはただの道ですが、100km歩行に携わった人たちにとっては特別な道です。
いままでも多くのドラマを生み出してきた道。来年この道を歩く人にはどんなドラマが待っているのでしょう。
それはまた来年のお楽しみ。
                                          (完)



この100km、24時間で気づき、得たものは本当に大きなものでした。

限界は自分の心が生み出している。
この100km方向の目的に「限界を超え、未知の領域に挑戦し、勇気と精神力を養う」とありますが、この限界は誰かが決めるものではなく、自分が決めていることに気づきました。「もう、だめ。」この言葉は弱い心の象徴です。心の強さがその人の強さではないでしょうか。

思いがあれば、何でもできる。
完歩できたのは、物や体ももちろんですが、やはり心の部分が大きく占めていることに気づきました。時間のことを考えた時、ほとんどあきらめていたのは事実です。ただ、「リタイヤだけは絶対にしない」この思いの心は折れなかったので、最後に復活できたのだと思います。もちろん復活できたのはサポーターを始めとするみなさんがいたからです。

人は一人では生きていない。
今回気づいたことの中で一番大きかったことです。政経塾の皆さんを始め、その職場の人たち、街の人たち、友人、家族、本当に多くの人たちのおかげでこの100km歩行は成り立っています。そして、何か一つ欠けても完歩できなかったでしょう。人に生かされている。そして自分も誰かのために生きている。日々是感謝。

100km歩行の話をいろんな人にしたとき、「本当にいい経験をしたね。」とか、「うらやましい。」とか「もう、何でもできるだろう。」って言ってくれました。その言葉を聞き、改めて100km歩行、岡山政経塾の素晴らしさを認識しました。僕は幸せ者だと思います。

最後になりましたが、この100km歩行を成功に導いてくれた全ての人に限りなく感謝すると共に、まだ見ぬ7期生を始めとする来年のチャレンジャーの皆様を全力でサポートすることを誓います。チャレンジとサポート、両方できて初めて、僕の本当の100km歩行です。 「ありがとうございました。」