2008年　100km Walk
　
◆大原　祥正　(岡山政経塾　６期生)

岡山政経塾100km歩行レポート
『特別例会の伝えたもの』
　　　2007・100km歩行⇒直島⇒松下政経塾⇒2008 100km歩行


I. はじめに
　2007年、チャレンジャーとして何とか“24時間以内100km完歩”できた私の2008年は、同期の平田さんの伴歩約30kmと、行程終盤の高島保育園前でのタイムチェックである。昨年、彼女はリタイヤを選択せず“24時間完歩”を成し遂げている。今年は午前10：00に自分のいる場所が何処であるかが大きな問題であった。2008年5月4日午前9：28、彼女はあこがれの後楽園に辿り着いた。
　自らがんばった証を示してくれました。おめでとう。そしてありがとう。

　伴歩者（サポーター）として参加する2008年、チャレンジャーの皆さんがスタートするまで昨年とは比べ物にならない重圧を感じることになりました。2007年、100km歩行⇒直島⇒松下政経塾という特別例会を体験し、そして2008年 100km歩行例会にて再確認できた無形の財産は、改めて私の心の中に深く刻まれる事になりました。
　
II. “2008年100km歩行”伴歩者（サポーター）として何ができるか

① 仮説
> “24時間以内100km完歩”チャレンジャーの目標達成に向け自分の役割を整理する
“自分がコントロール出来ないものはあきらめる”
私がチャレンジャーである昨年はこの言葉通りにすぐに気持ちを切り替えることが出来ました。そうせざるを得なかったのです。しかし伴歩者（サポーター）である今年はそうはいきません。“24時間以内100km完歩”という、平田さん・西美さん・私の3人のチームとしての責任。そして6期生としての責任が存在し、個人では無く組織全体での成果が求められていたからです。昨年、“24時間以内100km完歩”が未達成に終わった平田さんをサポートされた5期生のレポートを読みました。木下龍太郎さんはレポートの中で次のように述べられていました。『ここで、ひとつ私が反省するべき点は、（中略）不明確な部分があった状態でサポートしてしまったことでした。サポートをする際の心構えとして、挑戦者の力を最大限に引き出せる為の、こころのサポートが重要なのだと実感しました。』100km歩行をできるだけ詳しく分析し、不明確な部分をできるだけ潰し、その結果チャレンジャーを午前10：00までに後楽園へ導くための準備が伴歩者（サポーター）の私には必要でした。

> イメージづくりへ向けた歩行プランの作成
　私自身から不明確な部分を取り除き、チャレンジャーの力を最大限に引き出す為には、データに基づいた歩行プランの作成が必要でした。
　昨年の100km歩行を前半と後半に分け、それぞれの所要時間を男女別に見てみると、女性チャレンジャーは男性に比べ後半のロスが少ないことがわかりました。後半マイナス前半の時間はおおよそ１時間30分。男性は20分から3時間40分までまばらでした。おおよその女性チャレンジャーが後半にロスをする1時間30分に、さらに30分の余裕をみて2時間とすると、24h=前半×2＋2ｈ、すなわち“24時間以内100 km完歩”達成の為の中間点通過タイムのデッドラインは21：00と認識しました。
　平田さんの目標は午前9：00ゴールであるとスタート前日までに確認していました。中間点通過タイムは20：30になるのですが、あえて体力のある前半の勢いに期待し、20：00とし、前半は2.5kmを30分、後半は2.5kmを39分［実際は38分。9（苦）より8（八＝末広がり）のほうが縁起が良い］に設定しました。確実に起こる後半のペースダウンに対し、後半の2.5kmあたり8分の余裕は、本人と伴歩者の焦る気持ちを沈めてくれると期待しました。イメージが出来上がりました。

> 伴歩者のみができる現場でのアドバイスを行なう
　“夜道は楽しい会話でチャレンジャーの気分を紛らわせ、痛み止めとする”伴歩者の必須条件であると聞いたことがあります。それならなぜ私が選ばれたのか？私は口下手。あいにく楽しい会話のセンスを持ち合わせていない。そういう意味で平田さんには運が悪かったと諦めてもらうしかない。
　“がんばれ”はありがたい言葉であるが、30kmに亘る区間で伴歩者からたびたびこの言葉を聞かされると、おそらくチャレンジャーの気分は良くならないと思う。それまでの疲労を少しでも軽減し、そしてその後の歩行に自信を持ってもらえるようなアドバイスを、最も適切と思われる場所でたった1度だけ行なう。伊里中ローソンから閑谷学校までの区間、チャレンジャーにとって辛い上り坂が続くこの区間こそが最も適切であるとイメージができました。

② 検証
　平田さんは“24時間以内100km完歩”を達成しました。彼女は昨年のレポートで“［～したつもり］で満足してはいけない！！”と記しています。しっかりと練習し、心構えをもってスタートラインに立った結果であります。もし、“24時間以内100km完歩”を達成できていなかったら、本人よりも西美さんと私に大きな後悔をもたらしたと思います。
　歩行プランがあることで、歩行中2.5km・40回に亘りに自らの現状を把握し、修正できたことは伴歩者にとってもプラスでありました。また、たった1度のアドバイスも55km～57.5kmの2.5kmの区間を32分で通過し、運良く結果が出ました。伴歩者（サポーター）としてこの例会に参加し、昨年とは比べ物にならない重圧受け、そして結果が出たことに感謝するばかりです。
　
III. 特別例会の伝えたもの
　昨年の直島例会では『個人が幸せになっても本当の幸せはつかめない』と福武講師から教えていただきました。大意をもってご指導頂いたと思います。100km歩行にあてはめると、自分自身よりも仲間の“24時間以内100km完歩”に大きな喜びと充実感を感じます。
個人の幸せよりも、もっと大きな幸せの一端を実感することが出来ました。
　また、松下政経塾における例会において、松下幸之助さんの『人をつくる』という経営哲学の本質に触れ、人に興味を持つことで人のやる気や適正を引き上げることの重要性を学びました。『人をつくる』という意識は、100km歩行において私に、昨年の平田さん本人のレポートそして彼女を伴歩した5期生の先輩方のレポートを読ませ、自分自身がなすべき事を明らかにしてくれました。
　2007・100km歩行⇒直島⇒松下政経塾⇒2008年100km歩行と続いた特別例会は、自分以外の人の幸せの延長線の先に、自らの幸せがあることを私に伝えています。
　
IV. 『狂気』と『侠気』
　『狂気』とは常軌を逸するほどの意欲。『侠気（きょうき）』とはその意欲を見て機会を与えてくれた人を大事にする心。2007年11月例会でご講演頂いたAMDAの菅波理事長先生は2008年5月14日付日本経済新聞34面にて、自らの活動を続けることが出来たのは『狂気』と『侠気』の賜物であると伝えています。
　今年は『狂気』をもったチャレンジャーが多く存在しました。その結果がリタイヤ者ゼロ。そして24時間以内に7期生は参加者全員完歩、5期生も残っていた1人の方の完歩により未完歩者がゼロになりました。6期生地域活性分科会も未完歩者がゼロになりました。皆様本当におめでとうございます。また、『狂気』をもったサポーターもたくさん存在しました。フルサポートを行なった人だけでなく、仕事⇒サポート⇒仕事⇒サポートを繰り返した人もいらっしゃいます。その結果、複数回のチャレンジの末に“24時間以内100km完歩”を達成した先輩方が存在し、多くの感動を頂いたのだと思います。
　自分自身の事しか考える余裕の無かった2007年、少しばかり自分の周りを意識する事が出来た2008年、そして2009年はもっと大きな視野を持たなければなりません。100km歩行は今後も続いていくことでしょう。『侠気』、まさにこの言葉の意味するところを忘れることなく、来年の自分の役割を全うしたいと思います。