2009年 100km Walk
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◆吉田 龍一(岡山政経塾 8期生)
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岡山政経塾100km歩行レポート
「私にとっての100km歩行」
『頑張ってください!』『大丈夫ですか?』『いいペースですよ』『あともう少し!』
『大丈夫です。お疲れ様です、ありがとうございます』
サポーターの方々と会話を何度繰り返しただろうか?
午前3時20分にゴールした瞬間、私の身体は限界ぎりぎりまで自分の力を出し切った満足感で満たされていました。
本レポートでは今回の100km歩行への取り組みが私にとってどんな意味を持った体験となったかを自分なりに、自分の言葉で述べてみます。
私の家庭は妻と2人娘の4人家族ですが、義父がマラソンを趣味とし毎年ゴールデンウィークには100kmウルトラマラソンにチャレンジしていました。一方私はそのような趣味は全くありませんでしたし興味もありませんでした。しんどくて辛いことをわざわざやる理由を深く考えたこともありませんでした。そんな義父が3年前に急逝しました。義父はもともと今の私と同じく外科勤務医でありましたが、いつの頃からメスをおき、いわゆる東洋医学を中心とした終末期医療を実践するようになりました。遠方からも末期癌患者が集まる小さな医院で、義父は静かに温かく患者さんに語りかけ、そしていつも祈っていたように記憶しています。強く意識してきたわけではありませんが、義父が何故、何を求めて毎年ウルトラマラソンに参加していたのかなぁと時々考える自分がいましたし、岡山政経塾に入塾して最初の大イベントがゴールデンウィークに開催される100km歩行ということで、自分の力を出し切った時に義父が感じていたであろう何かを少しでも体感することができないかという淡い期待感を抱きながらの100km歩行への取り組みとなりました。
本番当日
正直いって自分の甘さがあり、充分に事前準備を整えられませんでした。5日前に車でコースを1周最後の下見をしましたが、この100kmコースを歩き切る自分を具体的に想像できない程長く感じる距離でした。歩行速度の詳細な設定もしていなかったので、10時にスタートを切った時の決意はただひとつ、『限界にチャレンジしてみる』だけでした。行ける所まで行ってみて、ゴールでは全く余力が残っていない状態をイメージしてのスタートとなりました。
スタートから10kmまでは、どうもいつもと違って足の指先が窮屈で痛くなってしまい、5本指ソックスにさらに登山用のソックスを重ねて履いたためと分析。登山用ソックスを脱いだ後は、いつもと同じ感覚で歩けるようになりましたが、快適に歩行できたのは30km地点まででした。以降の70kmはとにかく両足裏・両足首が痛くて痛くてたまらない状態がゴールまで続きました。休憩は閑谷を越えた地点で炊き出しをいただいただけで、それ以外は歩き続けました。足首ってこんなに痛くなるもんなんだと半ば感心しながらの残り70kmでした。今振り返ってみて、そんな状況で最後まで歩き続けることができた原動力は何だったのでしょう?何が自分の足を前へ進ませる原動力となったのでしょう?それは大会を支えて下さった全てのスタッフの方々からいただいた数えきれない励ましの言葉とサポートでした。
・各チェックポイントでサポーターの皆様にかけていただいた励ましの言葉
・車内からかけていただいたたくさんの励ましの言葉
・下見会で歩いた区間での同期塾生との会話
・全体のコース下見で熱心にコースのポイントを解説していただいた大原さんの言葉
・炊き出しを御馳走になった吉永の皆様の温かい出迎え
・小山事務局長から声をかけてもらった時の何とも言えない力が漲ってくる感覚
・西原幹事にいただいた言葉と温かいおしぼり
・病院の後輩の谷口からの差し入れ
・ゴール近くで練習会で大変お世話になった西村さん・荻野さんにかけていただいた言葉
残りの70kmは絶えず辛いものでしたが皆さんに言葉をかけていただくと、不思議なことに痛みやつらさを忘れて『大丈夫です。お疲れ様です、ありがとうございます』と元気に応えることができるのです。ほとんどカラ元気でしたが(笑)。直後には耐え難い苦痛がすぐに襲ってきました。その繰り返しを積み重ねた100kmでした。
午前3時20分にゴールした瞬間、私の身体は限界ぎりぎりまで自分の力を出し切った満足感で満たされていました。それと同時に自分の力の及ばないところで少しでも歯車が狂っていれば完歩できなかっただろうなと感じました。ゴールした後は、肉体的には立つこともできない程の両足の痛みがあるにも関わらず、精神的にはこの100km歩行を支えていただいた皆様への感謝の気持ちがどんどん大きくなって、自分の中になんとも表現しがたい心地よいエネルギーが漲ってきました。
私にとっての100km歩行
今回の挑戦を通して、若輩者の私なりに感じたことをまとめてみたいと思います。
私は普段医師という立場で患者さんに接するわけですが、元気な時なら特別な感情も湧いてこないような暖かい励ましの言葉やちょっとした親切、医療スタッフのいわゆる業務以外の部分でのプラスαの関わりといったものが、患者さんにとっては目には見えないけれど大きな支えとなるのではないかと漠然と思っていました。
私は100km歩行を通して皆さんにいただいた励ましの言葉に不思議なパワーを実感し、そして自分の中に湧き上がってくる表現しがたい心地よいエネルギーを実感しました。今回私は普段とは逆に自分が励まされる立場になるという疑似体験をしたのかもしれません。
義父はウルトラマラソンに参加することで自分の施しに対する患者さんの気持ちを無意識の内に再確認していたのではないか・・・そして沿道の皆様の声援に『目には見えない不思議な力』を貰っていたのではないか・・・その不思議な力を次に出会う患者さんに注いできたのではないか・・・そんな想いに至りました。
何だか大げさな表現になったかも知れませんが、今の私の頭で考えたことを私の言葉で綴ってみました。今の気持ちを大切にしながら岡山政経塾での今後の活動に取り組んでいきたいと思います。
皆様ありがとうございました。
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