2010年 100km Walk

 
◆池田 幸三(岡山政経塾 7期生) サポート隊 隊長

岡山政経塾100km歩行レポート
『一人は皆のために 皆は一人のために』




<サポート隊長としての準備>
 平成22年2月13日、8期生の2月例会後の懇親会にて小山事務局長に2010年度の100k歩行サポート隊長の要請を受けました。この時点の私は、若輩者の自分が大役を務めることが出来るはずがないと思い、その要請をお断りさせていただきました。しかし、私が政経塾と出会い、今の自身があるのは誰のおかげなのか?などの自問自答を繰り返し、『ご恩を形で返す』決意で引き受けさせていただきました。
 サポート隊長を務めるにあたり、最初に取り組んだ事は100K歩行の趣意を再確認し、心に刻む事でした。『24時間内で100キロを無事完歩する事』・『限界を超え、未知の領域に挑戦し、勇気と精神力を養う。』私達サポート隊がチャレンジャーの目的のため、安全に歩行できる環境を作る事。そして目的達成のため、サポートをもってゴールに導く事をサポーターの共通認識として臨む決意をしました。私自身サポートを行う上でチャレンジャーの顔と名前を覚え、人間を観察し、一人一人のサポート体制を配置する事が望ましいと考え、出来る限り練習会へ参加しチャレンジャーとの交流を図り、一人一人の考え、性格などの把握に努めました。
 私がサポート隊長として行った最大の準備は、チャレンジャーそれぞれの思いや、考えを担ぐ準備でありました。その準備をする事が必ず本番のサポート采配を決断するうえで不可欠な要素になると考えました。チャレンジャーのための3つの準備にあるように、『心』・『体』・『物』この中で最初に書かれている通り、『心』の準備がサポート隊長にも、最も必要であると考えました。


<サポート>
 チャレンジャーの目的達成をサポートする上で、重要な事はサポート方針を明確にするという事でした。昨年のサポート隊役員の先輩方が決めた方針に『過剰なサポートは行わない』とありました。政経塾は自習自得で研鑽を行い、100k歩行では自己責任で歩くとあります。私を含め役員は過剰なサポートとは何か?という議論を幾度も繰り返しました。しかし、過剰の線引きをするのが難しく、答えを出す事が出来ませんでした。ただ言える事は、目的達成のために努力し、一生懸命に歩く姿を目の当たりに感じたとき、良識の中でサポートする事に過剰か否かの判断は重要ではなく、サポートを行う人間の気持ちを尊重したい思いがありました。その視点から、『全てのサポートはチャレンジャーのために! サポーター個々のサポートの尊重』を掲げ臨む事としました。
 また、主催者、サポート隊役員、実行委員と共に議論をした中で、完歩可能性の低いチャレンジャーのサポートを、どのように対応するかと言うことも幾度も話し合いました。私の政経塾での恩師はいつも言います『努力は必ずしも報われないが、成功者の全ては努力している』この言葉から、努力した人間の成功への可能性を高めるサポートを行う事を胸に誓いました。


<それぞれの挑戦>
 5月2日、清清しい快晴とは裏腹に、私の心には不安と緊張がありました。
 見透かされたかのように、主催者から『声が小さい!!!』と一喝、私のサポート隊長としての挑戦が始まりました。
 序盤、昨年や一昨年とは違い、全体がコンパクトに進んでいた分、40K地点過ぎまでは大きな問題も無く進みました。今回の最大のポイントは2つありました。1つ目のポイントは、50K地点(伊里漁協)で負傷者が多数重なった事でした。最後尾から8名のチャレンジャーが同時に休憩に入り、その中には心が折れかけの人や、身体の負傷が大きい人など、隊長としての判断を要求される場面に遭遇することになりました。私は判断として、リバーサイドから8期生の川口さん・岡山市内から3期生の田中さんを伊里漁協まで来るように指示を出し、8名に対し肉体マッサージ・テーピングの処置をお願いしました。きっと、ここから先の50Kは心の勝負であると感じ、最後となると思い、身体のケアを命じました。
 2つ目のポイントは、82k地点(JA瀬戸支所)以降の判断でした。本番前日の予測の中で、必ずタムリミット4〜5時間前の判断がチャレンジャーの完歩に繋がると感じ、82k地点からのゴールまでの歩行タイムを逆算していました。その中で厳しいと思われた、野田氏(9期)・片山貴氏(9期)・古賀氏(8期)・三島氏(8期)・源氏(5期)・木下氏(5期)・栗原氏(NHK)以上の7名に対するサポートに注視していました。そして、この7名に対し伴歩者をつける判断をしました。私は、この7名の完歩に対する強い思いを感じていました。
 9期野田氏は、事故による後遺症から思うように足が動かない状況の中、自由に動かない身体に言い訳することなく歩く姿、皆を思い卵に込めた完歩への熱きメッセージがありました。9期片山氏、練習会への参加は少なかったが、独自の練習と目的達成のためにコツコツと努力してきた姿。8期生三島氏・古賀氏、昨年歩けずに悔しい思いを1年間心に持ち続けて過ごした気持ち。5期生源氏・木下氏、辛くても必ず二人でゴールすると誓い合った同期の友情。栗原氏(NHK)、3年前に共に歩き、叶わなかった完歩への思い。それぞれの思いは違いますが、チャレンジャーの完歩に対する思いを強く感じていました。
 チャレンジャー26名の目的は違いますが、この100k歩行を完歩したいと思う気持ちは強く、この成功体験をそれぞれが未来に繋げ、活かすことができるようにするためにも、一人でも多くの完歩者を輩出するための手助けを行う事が、サポート隊長としての最大の挑戦でありました。


<100km歩行を通しての学び>

『全チャレンジャー26名中、24時間以内完歩者21名、リタイア4名』

24時間以内全員完歩としての目標は達成することができませんでした。これはチャレンジャー自身の問題も当然あると思いますが、サポート隊長として後悔が残る結果でもありました。しかし、毎年100k歩行では感動と学びをいただいています。今年、最後のチャレンジャーを伴歩者と共に囲み、旭川沿いを歩いていた時、熱い鼓動と共に、頬から流れ落ちる涙がありました。100名近い関係者が一つの行事に対して、また一人のチャレンジャーが自身の目的と皆の気持ちを背負い、ゴールへと足を進める姿に、『強い絆』と皆様に対する感謝の気持ちでいっぱいでした。『一人は皆のために 皆は一人のために』こんな強い絆で結ばれた関係が、地域や企業、そして家族の中に築けたら、どんなに素晴らしく、どんなに幸せな人生が送れるだろうと強く感じました。
若輩者の私を支えてくださいました、西原幹事・小山事務局長。先人の知識と経験を与えてくださいましたOBの皆様。勇気と感動をいただいたチャレンジャーの皆様に心から感謝申し上げます。そして、一番近くで見守り支え続けてくれた、難波さん・端山さん・櫛引さん・西江さん・波夛さん。

ありがとうございました。