2010年 100km Walk

 
◆西村 公一(岡山政経塾 7期生)

岡山政経塾100km歩行レポート
「100キロ歩行を未来に生かすために」




はじめに
 今年の100キロ歩行にサポーターとして参加するにあたり、私には二つの課題がありました。一つ目はチャレンジャーにどのような声かけをすれば元気に歩いていただけるのかを考察すること、二つ目は完歩される方と途中リタイアされる方の違いを見定めることでした。


声かけ
 サポートのやり方にはいろいろあります。飲食物を提供することやマッサージをすることなど、サポートも人それぞれです。
 私の理想とするサポートは、チャレンジャーの完歩への望みを高め、足や体の痛みを緩和させ、まだまだ自分はがんばれるぞ!という心の状態にしてさしあげることだと考えています。そのために有効なのが、声かけであると考えました。そこで次の三点を大切にしました。

1 前向きな言葉、安らぐ言葉で声をかける。
   私たちの脳と体は、言葉の影響を非常に強く受けると思います。実際、前向きな言葉をかけると、ドーパミンという物質が脳に作用し、やる気が起こり、行動が活発になり、集中力を増進させるそうです。また安らぐ言葉をかけると、セロトニンという物質が脳に作用し、焦りがなくなり、平安な気持ちになり、落ち着きが出るそうです。とすれば、チャレンジャーに前向きで、安らぐ言葉をかければ、しっかりと着実に歩くことができるのではないかと考え、次のような声かけをしました。「○○さん、すごくいいペースで歩かれていますね。大したものですね。このペースだと絶対に完歩できますよ。ゴール手前の旭川はきれいでしょうね。○○さんのゴールをみんなが待っていますよ。」。この言葉を聞かれたチャレンジャーは、元気百倍で歩き始められたように見えました。言葉ってすごいな!とびっくりしました。 

2 具体的な数字で声をかける。
  チャレンジャーから多く寄せられた質問は、「このままのペースで歩いていて時間内にゴールできますか?」というものでした。その時、「大丈夫!大丈夫!」と言っても、相手からは素直に信じてもらえません。そこで私は具体的な数字で語ることにしました。例えば「○○さん、安心してください。昨年あなたのタイムでここを通過した人は、余裕を持って時間内に完歩しています。あなたの現在の地点からゴールまでは約13キロ、今のあなたの歩行速度が時速約4.5キロぐらいですから、このまま歩けば約3時間後の午前9時15分ごろにはゴールできますよ。いいペースです。がんばってくださいね。」と声かけしました。その結果、心から納得して元気を振り絞って歩き始めてくださるのですから、具体的な数字で声かけをすることは、すごく効果があると気付きました。
  よくサポーターが「ファイトです!」とか「ガンバレ!」という声かけをしている場面に遭遇しますが、100キロ歩行も終盤になり、チャレンジャーの心が折れそうになったときには、具体的な数字で声かけをすれば、それは魔法の言葉になるのではないでしょうか。

3  心をこめて声をかける。
  いくらサポーターが声かけをしても、心がこもっていなければ、チャレンジャーにすぐにばれてしまいます。私は100キロ歩行練習会に積極的に参加させていただきました。今年は雨が多かったのですが、雨の日も風の日も一緒に歩かせていただきました。その中で、年上の塾生は自分の兄貴のような、年下の塾生は弟のような奇妙な感覚が芽生えるとともに、チャレンジャーの顔と名前が頭の中にしっかりと入っていました。このため、本番当日は「○○さん、いいペースで歩かれていますね。」というように、相手の名前を呼んでサポートができ、また、いつも一緒に歩いた仲間からの声かけであるので、私の心が少しは強くチャレンジャーに伝わったのではないかと思っています。サポーターにはチャレンジャーを思いやる心、サポートできることへの感謝の心が大切ではないでしょうか。

4  私の未来に生かすために
人は一人では生きてはいけません。私の職業は公務員ですが、着実に仕事をするためには良好な人間関係がとても大切です。また家族との人間関係や岡山政経塾生との人間関係もこの上なく大切です。人と人を結ぶものは言葉ですから、言葉をうまく使うことで、自分も周りの人も楽しく幸せにできるのではないでしょうか。今、この瞬間から、汚い言葉や否定的な言葉は捨て去って、前向きで、安らぐ言葉、具体的な言葉、心のこもった感謝の言葉を口から出すようにして、私の未来を明るく幸せにしたいです。



小事が大事
 大きなことを成し遂げるには、小さなことの積み重ねが大切であると考えています。今年、完歩されたチャレンジャーの多くは、事務局から課題として与えられた練習会に積極的に参加されていました。しかし一方で練習会に全く、あるいはほとんど参加されない方もいらっしゃいました。このような方は不思議と完歩できていません。
 また、100キロ歩行本番の前に、チャレンジャーの方が、どのような決意を持って政経塾で学ぼうとされているのか、同塾のホームページで拝見させていただきましたが、決意文が未掲載の方が数名いらっしゃいました。このような方は、これまた不思議と完歩できていません。
 どうやら、「やるべきことを、やるべきときに、やるべきようにコツコツとやる。」ことが成功の種となり、結果として現れるという法則が成り立つようです。まさに小事の積み重ねが大事であると思います。
 私は成功者でありたいと願っています。100キロ歩行のサポートで学んだ「小事が大事」という教訓を、私の未来に生かしていきます。
 

未来に向けて

 私は2008年にチャレンジャーとして100キロ歩行に初参加し、完歩させていただいたことで、大きな自信を得ることができました。この自信が仕事や人間関係にもよい影響を与えてくれたと感謝しています。2009年、2010年はチャレンジャーのサポートをさせていただきました。しかし私の100キロ歩行はこれからがスタートです。来年度からは、チャレンジャーとして後楽園に姿を現したいと考えています。
 目標と目的は違うと思います。私にとって100キロ歩行の目標は24時間以内の無事完歩ですが、目的は100キロ歩行での学びを未来に生かすとともに、人間の器を大きくし、心と体に馬力をつけることです。また、車に定期点検が必要であるように、人にも心と体の定期点検が必要であると考えます。100キロ歩行には、私自身の定期点検をするという目的も込められています。
目的が明確であれば、具体的な目標に立ち向かう意欲も高まります。目先の目標達成だけに汲々としていると、いつしか自分の視野が狭くなり、目標達成がつらく苦しいものになってしまいます。100キロ歩行の目標と目的は何か?この二点を絶えず自分に問いかけていきたいです。
ゴール時刻の早い遅いはあくまで副産物であって、それ自体にあまり意味があるとは思えません。次回からは、ゆったりとしかし着実に歩き、チャレンジャーやサポーター、沿道で応援してくださる皆さまとの心のふれあいを大切にしたいと考えています。
未来に大きな夢と希望を抱き、岡山の美しい自然や野鳥のさえずりに心満たされながら、私は歩き続けます。



おわりに

100キロ歩行のルートには、先人が育んできた文化・伝統・歴史があります。瀬戸内海から閑谷学校へとつながる壮大な自然の恵みがあります。私は信じています。岡山政経塾「24時間100キロ歩行」は岡山が誇るべき貴重な財産を巡る人生の旅路であると。