2011年 100km Walk

 
◆西村 公一(岡山政経塾 7期生)

岡山政経塾 100km歩行レポート             2011年5月12日
「100キロ歩行に思う」



人と交わり人に学ぶ

 人間を独りにさせないで、さらには、よい人との人間関係を結び、心を鍛えることを応援する世界があります。それは岡山政経塾という組織です。
 政経塾には、苦悩や迷いによって小さくしぼみかけた心を、すっと大きくしてくれる力があります。その力とは、塾生を信頼し、心配し、成長させようと思ってくれる人の存在のことです。人間は「自分は一人ではない」という実感がわけば、どんなに苦しくても必ず立ち上がっていけます。生命が本来持っている、この力を引き出してくれる人の結びつきが政経塾にはあります。
 どんなに優秀な人でも、独りでは心を鍛えることはできません。たくさんの仲間をつくれる人が一番成長する人であり、成功者になっていく。政経塾には「人間は、人間の中でしか自分を磨くことはできない。人と交わり、人に学ぶ中でこそ、自分を鍛え、向上していける」という思想が脈打っています。
 100キロ歩行は、人と交わり人に学ぶことで自分を鍛え、仲間の幸福に尽くす中に自分の幸福もあることを体得できる人生修業の場です。これからも満天の星のごとく優秀な人材が100キロ歩行から輩出されていくことでしょう。



100キロ歩行を未来に生かすために

練習は嘘をつかない
 「一番苦しんだ人が、一番幸福になる権利がある。一番練習した人が、一番100キロ歩行を楽しむことができる」と信じています。
 今回は、塾生全員の無事完歩という偉業が達成されました。時間をこじ開けてでも練習に取り組まれた成果の現れでしょう。私も、ささやかな練習を繰り返し、100キロ歩行を十分に楽しませていただきました。
 練習は嘘をつきません。継続された努力は必ず実を結びます。

 胆(はら)のくくり
 地面に幅30センチ、長さ10メートルの板を置き、この上を歩けと言われれば、誰でも歩けます。でも、この板を20メートルの高さに上げたら、渡れる人はいないでしょう。同じ板なのだから、同じように歩けばいいにもかかわらず、「落ちたらどうしよう」という恐怖が足をすくませます。
 100キロ歩行でも、「歩けなくなったらどうしよう」という不安が芽生えた段階で心は乱れ、平常心を保てなくなってしまいます。私のような小心者にはなおさらです。
 ならば、どうすれば平常心でいられるのか。どうやら胆をくくって居直るといいようです。「足が痛くて歩けなくなったら、トラックに飛び込めば楽になるじゃないか」と覚悟する。最悪の事態を甘受しようと自分に言い聞かせ、居直る。100キロ歩行は、何をやっても最後には、胆のくくりが物を言うことを教えてくれました。

 恩返し
 誰しも100キロを歩く過程において、「あの人の助けがなかったら、歩けなかったはずだ」という恩人が必ずいるはずです。
 しかし身勝手なもので、助けてもらったときは恩人だと平身しておきながら、時が経てば感謝も薄らいでいき、自分一人で歩いた気になっている。それではだめです。
 乞食が軽蔑されるのは恵んでもらうからではなく、恩返しをしないからです。いかに100キロを歩けても、恩返しをしなければ、「忘恩の徒」と蔑まれても仕方がない。
 では、どのようにして恩返しをすればいいのか。それは、今後の100キロ歩行で、心のこもったサポートをすることに尽きると考えます。サポートは、恩返しとともに、仲間のために尽くす中に自分の幸福もあることを体得できるいい機会になります。誰も見ていないところで、仲間のためにコツコツと尽くす作業には、何かと大変なことが多い。だからこそ、人間を磨きあげることができるのです。
 今回、サポーターの皆さまからいただいた、たくさんのご恩は、今後の100キロ歩行で、しっかりと恩返しさせていただきます。

 たまごに書かれたメッセージ
 100キロ歩行スタート前に、政経塾第9期生の野田裕一郎さんから、ゆでたまごをいただきました。たまごには「何のために歩いてるのか?」、「強い気持ち!!」とのメッセージが書かれていました。
 「何のために」という目的意識があれば、一念が定まって、歩く勇気と希望が湧いてきます。
 「強い気持ち」があれば、苦難や苦痛に負けることがありません。
 野田さんは、一つ一つのたまごに、愛情のこもったメッセージを書くことで、100キロを歩く者に、最大の知恵と励ましを与えてくれたのだと思います。
 ゆでたまごには、白と茶の二種類の塩まで添えられていました。どこまでも繊細な心配りに心が震えました。
 野田さんのような塾生と学び合える私は幸せ者です。




おわりに

 100キロ歩行のルートには、先人が育んできた文化・伝統・歴史が息づいています。瀬戸内海から閑谷学校へとつながる壮大な自然の恵みがあります。
 私は信じています。岡山政経塾100キロ歩行は、岡山が誇るべき貴重な財産を巡る人生修業の旅路であると。