2021年11月 
 豊後高田市(まちづくり・教育)現地視察

昭和でつながるご縁

江尻直樹 (岡山政経塾 20期生)

1 はじめに
 令和3年11月27日(土)に大分県豊後高田市の視察を行った。
「住みたい田舎」9年連続ベスト3にも輝き、全国からも注目されるようなまちになったのはどのようなことを取り組んできたのかを本レポートにて報告致します。

2 昭和のまち
 昭和40年代半ばまでは国東半島で最も栄えた商店街であったが、その後の大型店進出などにより、「犬と猫しか通らない」と言われるほど衰退していた商店街である。2001年に町おこしの取り組みで9店舗が昭和イメージの外観にしたことから始まり現在は53店舗までになっている。コロナ禍前においては年間40万人の来訪者を迎える商店街である。視察した感想はどこか懐かしく落ち着く商店街だと感じた。昭和の時代に過ごした人もそうでない人も昭和という時代を肌で感じられと思う。衰退した商店街の7割が昭和30年代以前の古い建物であったことを逆に強みにし「昭和」という一つのテーマを持たせたことが素晴らしいと感じた。福武總一郎塾長に教えていただいた「在るものを活かし無いものを創る」に通ずると思った。

昭和のまちの風景


3 豊後高田市の取り組み
 午後からは教育長の河野潔様、学校教育課長の衛藤恭子様、地域活力創造課の小野政文様に豊後高田市の取り組みについてご講和を頂いた。市の人口は令和3年11月時点で22,309人と年々減っている状況ではあるが、近年は市への転入者数が転出者数を上回る社会増を実現している。平成23年から10年間で586人の社会増を実現している。その大きな要因は子育て支援策にある。幼稚園・保育園・小学校・中学校の学校給食費無料、高校生までの医療費無料、子育て支援拠点「花っこルーム」を市内4か所に整備など、子育て世帯を市でサポートする体制が充実している。子育て応援誕生祝い金も他の市よりも高く最大で100万(第4子以降)の支援があり、子育て支援の財源はふるさと納税を活用しているとのことである。年間約5億円のふるさと納税を子育て支援策のみに活用している点は素晴らしいと思った。様々な分野に分散して予算を使うよりは子育て支援のみに特化して使うことでまちの強みにもなり、結果的に移住者も増えたのではないかと推測される。
 次に豊後高田市の「教育のまちづくり」の取り組みを学ばせていただいた。学びの21世紀塾は平成14年(2002年)から取り組んでおり、子供たちに多様な学びの場を作っている。この学びの21世紀塾は「いきいき寺子屋活動事業(知)」「わくわく体験活動事業(徳)」「のびのび放課後活動事業(体)」の3本の柱からなっている。多種多様な学びの場があることで子供たちにも多くの選択肢があり能力を伸ばせていけると感じた。また私が何よりすごいと思ったのがこの取り組みの地域の力である。令和3年度の講師登録者数は348人で大学生や地域で以前そろばん塾を経営していた方もいる。事例の中で、小学生の頃に年上の大学生に教えてもらったことを恩に感じており、自分が大学生になった今において今度は自分が教える番だということで登録する大学生も何人もいるとのこと。地域の絆を感じることができたし、何よりこの学びの21世紀が20年継続してやり続けていることによる成果だと感じた。長年積み重ねてきたからこその強みもあり、また現在においても時代に合わせて授業の内容などを改善し続けている。取り組みの形は真似をすることはすぐに出来るとは思うが、そこに携わる人々の心も含めて本質的な中身の部分は今回のように直接お話しを聞く機会がないと気付けないだろうと感じた。

4 おわりに
 今回の視察でまちづくりの可能性を感じることができた。少子高齢化時代で人口減少は避けられない中ではあるが、地域で知恵を出せばまだまだやるべきことは沢山あると感じた。まずは自分たちの住んでいる町の現状をしっかりと目をそらすことなく把握し、次に強みや特色をどう作っていくかを真剣に取り組めば必ず道は拓けると思う。目の前の課題をこなすことも大切だが、20年後、30年後の視点を持ちビジョンを示すことも大切だと感じた。最後になりましたが今回このような貴重な学びの場を与えてくれました関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。