2010年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆賀門 俊裕(岡山政経塾 九期生)

『自衛隊生活体験入隊での学び 』




0.はじめに

 今回の陸上自衛隊日本原駐屯地 第13三特科隊第一中隊に2日間の生活体験入隊を通じて、国家の防衛,安全保障,危機管理,規律と協調等の大切さなど多くの学びがありました。
これまでは、国家の防衛,自衛隊の役割について真剣に考えたこともディスカッションしたことは一度もありませんでした。日本は他国との戦争や内紛もありませんが、岡山政経塾の塾生としての自己研鑽に励み、会社や家庭での日々の生活ができるのは、いま暮らしている日本が平和であり、一人ひとりの生命や財産を守られているからできることであると気づきました。
 国家の防衛や自衛隊の役割等の重要性を学ぶ機会を与えられたことに感謝いたします。


1.矢野秀樹三等陸佐からの精神教育

 矢野中隊長からは、冒頭に下記のお話がありました。今回の生活体験入隊は岡山政経塾での活動や会社での仕事にも活かせるものであり、自分のなりに以下のように咀嚼しました。

(1)時の人になれ(いまを生きろ)
…いまは一瞬たりと戻ってこない。周囲の期待は何か、そのために自分の役割を全うする。

(2)目的意識を持て
…目的は何か,何のために行うのか,手段や方法になっていないか常を考えて行動する。

(3)一致団結しろ
…自分の間違った判断や行動は、団結を乱すことになる。常に仲間のことを考える。

 米ソの冷戦が終わり、現在は非国家であるテロ集団との戦い,常連理事国以外の核保有国,中国の経済成長に支えられる軍事力強化によるアジアへの脅威等、新たな問題も起きています。
 しかし、今後は外交,国際経済,環境活動等などを通して、軍事力だけに依存しないスマート・パワーの時代に移行することが、世界的な平和につながると認識しました。これは軍事力の相対的な低下を意味するものではなく、国際的に多岐にわたり優位性を保つことが、国家としての国力を積み上げていくことができると考えたからです。


2.事前課題のグループ討議から導く国家目標・国家戦略

 いまの自分の曖昧な知識だけで、この課題に取り組むことはできないと判断しました。防衛省のホームページで安全保障や危機管理,国家の防衛等を確認した上で課題をまとめました。この事前課題があったことで勉強する機会があって良かったと思います。
 グループ討議の3時間はとても早く感じました。討議内容は、「自国の危機管理能力を高めて国家の防衛態勢を整えながら、日米安保体制を堅持する」という結論に至りました。
この結論はどのような国家にしたいという目標に対して、どのような戦略を立案するという裏づけが必要です。独立国家を維持するためには、自国は自分で守る防衛力を整備することとアジア周辺諸国における軍事的なバランスを取ることにあると考えました。



3.基本教練

 基本教練を通じての学びは、一人でも規律が乱れると全体に支障をきたすこと,指揮官は状況を正確に把握して的確な指示を出すことで、一人ひとりの力が大きな力に結集できることです。
自衛官の方々は、常に有事を想定して日々訓練にあたっているからこそ、国家や人の生命や財産を守ることができると認識しました。
 また、指揮官からの権限移譲に責任を持って遂行する自衛官の誠実さ,実直さに感動しました。このように当たり前のことこそ、真剣に取り組む姿勢の大切さを再確認しました。


4.戦車乗車および特科の陣地占領(展示)の見学

 戦車に乗車できたことにも感動しました。テレビや写真で見るよりも大きく迫力は十分過ぎるくらいありました。最高速度60km/hにも驚きました。
 戦車乗車後は、第13特科隊の陣地占領の展示を見学しました。日頃訓練している演習を生で見ることも生まれて初めてでした。大砲の射程圏内が28kmと聞いて驚愕しました。
 トラックで大砲を運び、発射態勢を整えるまでの機敏な動作と協力しながら自分の役割をこなす姿勢は、矢野中隊長がお話された「一致団結」そのものでした。常に有事を想定して規律を重んじ、迅速に行動する姿勢にも感動しました。
 国家の防衛に戦車や大砲は必要ですが、実際の戦場に駆り出されることがないことを祈りたいです。

5.最後に

 矢野中隊長からの「任務であれば、国民を守るために命を捧げる覚悟はできいている。自分の家族も大切だが、任務を全うすることにためらいはない。これは私だけでなく、53名の部下も同じ覚悟を持っている」というお話がありました。強い責任感に深い感銘を受けました。同時に国家の防衛に対して、これまで真剣に考えたことがなかった自分が恥ずかしく思えました。
 何事も最初は目的意識を持っているつもりでいますが、途中から惰性に流されることがあります。決まったことだから実行するではなく、自分が担うことによってどんな価値を創造することができるのかという目的意識を持って取り組んでいきたいです。