2010年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会
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◆和田 治郎(岡山政経塾 九期生)
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『自衛隊体験入隊レポート』
今年で自衛隊体験入隊は3回目ですが、何事も積み重ねにより物事はよりよいものになっていくもので、3回目に体験入隊できた9期生を中心とした参加者はその恩恵を受けたと思います。
過去2回のレポートを読むと、「体力的にキツい」といった内容が多かったですが、今回は過去2回の自衛隊体験入隊とは重視されたプログラムに違いがあり、体力的プログラムは少なくなり(といっても日頃不節制な私には十分きつかったですが)、その代わりに頭を使うプログラム(国家、国防についての討議等)が増やされました。
職業や年齢にばらつきがあり、民間人である岡山政経塾生が、2日間程度肉体を極限まで酷使しても、日頃の不摂生の反省程度にしかならず、その反省のためなら今回の体力的プログラムでも十分に効果がありますし、自衛隊体験入隊以外の日常生活でも反省の機会はあります。自衛隊体験入隊の目的は、「日本の安全保障・危機管理の現場を学ぶと同時に、団体生活で規律心・協調心を体得する」ですが、今回のプログラムにより、自分も含めて参加した塾生は、体験入隊後においてもより真剣に国家や国防について考えることできる人間になったのではないかと思います。
今回の特別例会について、矢野中隊長は昨年の8月頃からどのような内容がよいかを検討し、プログラム内容と特別例会に参加させる隊員を決定したとのことでしたが、今回のプログラム内容や参加して頂いた隊員の方々のおかげで、大変有意義なものとなりました。
今回は事前課題が出されました。以下が事前課題と私の提出内容です。
@ みなさんが考える日本の国家目的について簡素に述べてください。
独立の維持
国民の生存、自由、財産の保護
A みなさんが考えた国家目的に鑑み、日本の国家目標を述べてください。
独立国家として存続するために必要となる人的、物理的、社会的条件を充足させ、国家としての役割及び機能を維持する。
・国力の維持のための国際競争力の維持強化
・出生率の向上、人材育成のための教育
・国の機能維持のための税制改革
・領土防衛能力の維持
国民の生存、自由、財産の保護のため、国内秩序(法制度等)を維持する。
B 10年後における我が国の脅威について考察してください。
技術力・経済力等の国際競争力の低下に伴う国力低下、財政破綻
中国の経済力・軍事力増大による日本国益の侵害
北朝鮮の武力行使
C 脅威に基づき、日本の安全保障戦略、特に防衛が担う役割を述べてください。
(軍事的)安全保障については、自国の安全保障のみならず、国際的安全保障の枠組みの中で、日本が求められている役割を考慮または利用しつつ、仮に軍事行為を受けた場合に独立維持のために必要な体制を構築する。防衛については、直接的な軍事行為からの防衛だけでなく、仮に相手国が直接的な軍事行為に及んだとしても目的を達成できない水準の軍事能力を維持することにより、相手国に軍事的行為の意思決定を起こさせないことを目的として体制整備する必要がある。
この事前課題には苦労しました。自分も含め一般的な国民は、国家や国防について突き詰めて考えたことはないだろうと思います。回答も「なるべく簡素な記載で」ということで、これまでも国家や国防については自分なりの考え方を持っているつもりではいましたが、具体的にかつ簡素な文章にするとなると、やはり自分の中で曖昧な部分が多くあり、時間を要しました。事前課題については与えられた時間は約10日間程度でしたが、書籍も何冊か読み、自分の考えをある程度整理してから体験入隊に臨むことが出来ました。
体験入隊は時間に追われている感覚で、あっという間に終わったという感じでした。それはやはり内容が充実していたからで、事前課題の討議前にさらに内容のある討議が可能となるように準備して頂いた矢野中隊長の精神教育「日本を取り巻く環境」、自衛隊の活動体験談を聞かせて頂いた三浦幹部の防衛講和「ハイチでの国際緊急医療救援隊での活動」、実際の訓練内容「特科の陣地占領」など、今回の特別例会のために、第十三特化隊 第一中隊の方々が準備して頂いた労力は大変なものであったと思います。また、1日目の懇親会は楽しい雰囲気で、当然のことですが「自衛隊員も同じ人間なんだなあ」と思いました。自衛隊というと何か異質な集団と思っている人が多いのも事実で、そういったなんとなく形成されたイメージを変えることも大切だろうと思いました。
今回の自衛隊体験入隊では、安全保障に対する考察や討議、また現場を見させて頂いたことにより、以前よりも当事者意識を持って国防を考えられるようになったと思います。また、自衛隊の方々に対する尊敬の念のほか、同情の念も禁じ得ないものがありました。
おそらく多く自衛隊の方々は、現在の日本の自衛隊に対する扱いや国民に対して、何とも言えない思いを持ちながら、任務にあたられているのではないかと思います。矢野中隊長は「任務であれば命をかける覚悟はできている。自分にも家族はいるが、命令であれば任地に赴く。私の部下もついてきてくれるものと思っている。」と仰っていました。過去の入隊体験レポートを読んでも自衛隊の方々は同じ覚悟を持たれていました。おそらく、多くの自衛隊の方々も同じ覚悟を持たれているのだろうと思います。それに対して、ほとんどの国民は自分の命をかける覚悟を持ってはおらず、命をかけることができたとしても国家のためというより、自分自身や家族のために、またはそれらのために国家を守る必要がある場合ではないかと思います。
多くの国民が当事者感覚を持たない中、自身はそれほどの覚悟を持ちながらも、「日本に軍隊はいるのか」、「自衛隊は違憲か?」といったことが議論されている。しかし、有事があった場合にはおそらく誰それなく自衛隊に頼るのは目に見えている。何とも割に合わない役回りだと思います。
普通に憲法を読めば自衛隊は違憲だと考えるのが普通で、解釈論で現状を肯定するというのは小手先というか、ごまかしのように思われ、平和憲法は理念としては素晴らしいですが、現実問題として有事の可能性は否定できないのであれば、より多くの国民が当事者として安全保障を考える状況にすることが必要であると思いました。
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