2012年11月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会
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◆宇都宮 嘉宏(岡山政経塾 十一期生)
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『自衛隊に対する考えが変わった2日間』
■はじめに
岡山政経塾の体験入隊に対し、様々な体験をさせてくださった日本原駐屯地の方々、そして岡山政経塾に深く感謝いたします。私は正直なところ、この体験をするまでは自衛隊に対して否定的な考えを持っていました。しかし、今回の体験を通して、防衛省や自衛隊に対する考え方が大きく変わるとともに、今の自分の安全な生活を日々守ってくださっている方々へ心から感謝することができるようになりました。ありがとうございました。
■体験したことと感じたこと、考えたこと
・基本教練
隊員の基本的な動き方を学んだ。人の命令に従って規律正しく動く、ということに初めは抵抗があったが、みんなできちんと動けたときの一体感や、指揮命令系統の明確さがよいなと感じた。統制する人がきちんとしていれば、組織としては、一番合理的で効率的な動きが可能であると感じた。
・精神教育(防衛講話、PKO、災害派遣講話、防衛問題についてのグループ討議及び発表)
日本の防衛に対する防衛省の考えについて、初めて学んだ。これまでは単にアメリカ任せなのかと思ってしまっていたが、日本として常に世界情勢を読み、その時々の状況に対応した体制作りや配備をしていたことを知り、自分が無知なだけだったのだと知った。予算的にもできるだけ強化するためにできるだけ多くするという方針なのかと思っていたが、日本の経済状況も反映させた形で常に体制作りや方針が決まっていると知った。また、東日本大震災での活動で明白なように、災害時における自衛隊の役割は計り知れないことを改めて感じた。
防衛問題については、事前課題が出されており、自分なりに考えて準備していった答えは以下であった。
Q1 あなたが考える日本の国家目的について簡潔に述べてください。
国民が幸せに生きること。
Q2 あなたが考えた国家目的に鑑み、日本の国家目標を述べてください。
国民の安全、安心の確保。戦争をしない。戦争に巻き込まれない。
国民主権。国民の自由の保障。
持続可能な社会の構築(環境面、経済面両方)。
Q3 10年後における日本への脅威について考察してください。
中国、韓国、北朝鮮、ロシアなど、近隣諸国との関係悪化。
日米安全保障条約に依存し過ぎ、国際社会から孤立すること。
経済の低迷による国力の衰退と治安悪化。
Q4 脅威に基づき、日本の安全保障戦略、特に防衛が担う役割について述べてください。
他国に攻め込まれたときに国を守るための軍事力の維持。ただし他国に対してアクションを起こすのではなく、あくまで防衛のためのみ。
国際社会での存在感の強化。アメリカだけに頼らない。国際社会全体と協力体制を組んでおく。
グループ討論及び発表を経て、上記の自分の考えではあげられていなかった、サイバーテロ対策や宇宙空間の領域問題などについても議論や考察をすることができ、有意義だった。
・戦車試乗、砲班の陣地占領(研修)、災害派遣品装備品展示
現役の自衛隊のすごさを知った。戦車は私が考えていたものよりも機敏に柔軟に様々な動きをした。砲班の訓練は、隊員の作業の早さ、正確さ、一致団結した動きに驚いた。また、何よりも、隊員の方々が私の質問にとても丁寧に答えてくださったことが印象的だった。戦車や大砲の機能、動かす時の具体的な作業、自衛隊に入った経緯など、隊員の方に直接聞くことができてよかった。
また、災害派遣品装備品については、阪神淡路大震災での教訓を生かして開発され、東日本大震災時にも活躍した持ち運び可能な人命救助用の装備などを見ることができた。そして、災害時にいつでも出動できるように、準備万端で待機しているトラックを見て、常に守られていることを感じた。
・自衛隊という組織について
懇親会では隊員の方とざっくばらんに様々な話ができた。これまで自衛隊に知り合いがいなかったから、というのが主な原因であると思うが、これまで自衛隊は閉鎖的な組織なのかと思っていたので、隊員の方とこんなにも親しく、こんなにも様々な話ができると思っていなかった。一緒に食事をし、一緒に酒を飲めば、いろいろとわかることがあるのだと感じた。
■終わりに
これまで私は、いくら国防のためとはいえ、多大なお金をかけて軍事力を維持したり強化したりする意義を感じられなかった。有事の際に国を守るといっても、軍事力を行使してしまっては負の連鎖を生むだけだし、力を持ってしまうと、行使したくなってしまうものなのではないか、と思っていたからだ。しかし、この2日間で様々な体験をさせていただき、自衛隊に対する見方が大きく変わった。やはり、自分の目で見て、触れて、体験して、つながることが大切なのだと改めて学んだ。
自分がよくわからないことはこわいし、何かよくないものだと思ってしまうものだと思う。よくわからないから排除しようとしたり、否定的な考えを持ったりする。これは、私が自衛隊に対して抱いていたものであるが、あらゆるものに共通する。例えば中国との関係悪化の問題であっても、中国人の友達がいる人と、中国人の知り合いがいない人では、同じ状況でも感じ方や考え方は異なるのではないだろうか。もし国レベルでは敵対してしまっても、個人レベルでつながりがあれば、過激な発想ではなく、どうにか平和的に解決したいと考えるはずだ。これはつまり、国や地域、宗教の違いを超えて、人と人が個人個人でつながることができれば、世界は平和になる、ということだと思う。どこの国の人だから、だとか、どの宗教だから、と線引きするのではなく、それぞれの価値観を認め合い、互いに相手を尊重さえできれば、そもそも国を守るために軍隊を整備する必要もないのだ。
いつか、各国が防衛のためにお金をかけるのをやめ、その分、食料問題やエネルギー問題の抜本的な解決、地球環境の保全など、世界レベルでの持続可能な社会の構築に、真に向かう日がくることを願う。
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