2012年11月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆岸川 達士(岡山政経塾 十一期生)

『日本という国を守るということ』




1.はじめに

 私は人生で初めて自衛隊の方々と接する貴重な機会を頂いたと同時に、日本の国の目的・目標、そして国防・自衛隊の意義をしっかり考える有意義な機会に恵まれました。私が30歳直前にアメリカに渡る時、日本が有事の際に、家族や親戚、知り合いが国外に頼れる場所を築いて、日本の若者が海外の拠点となる第二の故郷を作ろう、というおぼろげな思いがありました。しかしながら、今こうして日本に戻ってきて思うのは、極東における日本という国、自衛隊の役割、国民の役割をしっかり理解せずに国外で暮らしていても、単なる自己満足の延長でしかなかった、ということです。海外に出てからわかる日本の良さ、とはよく言われますが、それはほとんどが表面的な事を捉えているに過ぎず、日本の存在意義、役割、また日本を愛する人々の思いを理解するのは日本しかない、と強く感じています。また、日本国民の幸せを目的とするならば、日本はその手段に溢れていて、機会に恵まれていて、何より郷土を愛する同士に巡り合える素晴らしい環境であることも再認識しています。


2.精神教育

 初日は精神教育の時間が多く取られ、一番楽しみにしていた防衛問題についての講義と討論の時間がありました。河合中隊長の防衛に関するご説明は、冷戦時、ポスト冷戦時、ポストポスト冷戦時、といった世界情勢と日本の防衛の在り方の変遷が非常に判り易く、防衛費の逓減と多様で複雑化した不安定要因に対する動的防衛力への構造改革の解説は、事前勉強でもやもやしていたものが、パッとクリアになった瞬間でした。しかし、22大綱、23中期防、自衛隊の組織や仕組み、階級などをもっとしっかり調べ、理解しておくべきだったと後悔しました。また、グループ発表の質疑応答の答える立場の時、「専守防衛」という言葉がすぐに出なかった自分は、事前準備が足りなかったと反省致しました。

以下は、事前課題に対する私の答えの要約です。
Q1 あなたが考える日本の国家目的について簡潔に述べてください。
   国体護持

Q2 あなたが考えた国家目的に鑑み、日本の国家目標を述べてください。
   1)経済的繁栄
   2)国連活動の支持と協力による安全保障の安定化
   3)軍事防衛力の整備
   4)日米安全保障の堅持による安全保障強化

Q3 10年後における日本への脅威について考察してください。
   1)北朝鮮弾道・核ミサイルによる被害
   2)中国・韓国との領土問題に発する小競り合いから大規模武力衝突への発展

Q4 脅威に基づき、日本の安全保障戦略、特に防衛が担う役割について述べてください。
   1)日本の安全・安心の確保
   2)アジアの安全保障環境の安定化
   3)世界の安全保障環境整備の協調
   4)世界平和の安定確保に対する貢献

 グループ討議では、国家の目的では皇室の堅持、国体護持、といった皇室に関する話もあると思っていました。しかし実際グループメンバーと話していると、皇室といった日本の象徴的なものに対しての思いよりも、国民が幸せに暮らすことや安心・安全に生活できることへの思いがずっと強いことがわかりました。果たして自分は皇居に行ったり、皇室アルバムの放映を見るのかというと、確かに全く無関心であったわけであり、皇室に対する思いというのが国民の中で少しずつ確実に変わってきているんだな、と実感しました。


3.終わりに

 今回、合宿担当だったことから、私は光栄にも全体リーダーを仰せつかりました。着隊と離隊の式では、岡山政経塾生代表として河合中隊長に対し申告する、という緊張した時でした。幸いにも予行練習の機会に間違いを修正して頂いたお陰で、本番では言い淀むことなく申告ができ、なんとかお役に立てたとホッとしました。ただ離隊申告の直前では、表彰式を見つめながら頭の中で暗誦を繰り返す予定でしたが、まさか体力測定の表彰を受けるとは思わず、大変な驚きとともに大変嬉しく、河合中隊長より有難く記念品を頂きました。
たった二日間の入隊ではありましたが、日本原駐屯地を出る時には、大変お世話になった自衛隊の皆様から心温まる見送りを受け、本当に目頭が熱くなりました。厳しくご指導頂きながらも、愛情ある言葉に支えられ、教えられ、この場を借りまして心から感謝致します。また、今回の合宿は、2年振りに開催されるということで、小山事務局長には大変お世話になりました。本当に有難う御座いました。