2013年11月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆嶋村 太郎(岡山政経塾 十二期生)   2013/11/12

『自衛隊生活体験入隊を終えて。』




はじめに

 今回の体験入隊にあたり、塾生にはあらかじめ事前課題が用意されていた。国家目的と目標、10年後の脅威およびそれに対する日本の安全保障戦略、特に防衛が担う役割についての考察である。上記課題に対して幹部自衛官の方がどういった考えをお持ちなのかを知る機会を頂けたことと、若い隊員の皆さんとの交流ができたことに感謝したい。


基本教練および精神教育

 着隊後、基本教練として整列と敬礼、行進をたたき込まれる。政経塾生はある意味お客さんなので、もの覚えが悪くても怒られはしないが、隊員と同等の迷彩服を着ている以上、緊張感を持った動作を意識させられる。午後から精神教育として、特科連隊長の村上一等陸佐による防衛講話があり、この国を取り巻く現状について概略的な説明を受ける。また、ご自身がイラクに赴かれた経験から、どのような思いで戦地に向かったかなど、我々が普段知る由もない切実な思いをうかがい知ることができた。アメリカ兵が死んでいく状況において自分もいつ死ぬかわからない。迫撃砲弾が飛び交う戦場に向かう際、人生で初めて遺書をしたためたという。温厚な人柄の中にも自衛官として、日本人としての覚悟を感じた瞬間である。


防衛問題についてのグループ討議

 次は中隊長の松下一等陸尉による災害派遣のお話と、事前課題を前提として2グループに分かれておこなうグループ討議である。松下一尉は防大卒業後、陸自の中で一番厳しいといわれるレンジャー部隊に所属していた強者であり、東日本大震災後の福島第一原発や新地町で行方不明者の捜索に当たられた方である。被災地の状況の話はよく聞くことがあるが、体育館で寝泊まりしながら捜索活動や復旧支援に当たった話など、今更ながら頭の下がる思いであった。そして私が一番興味を持ったのは、自衛隊の役割(緊急性、非代替性、公共性)についてである。私たちは災害が発生した時、自衛隊が来るのは当然のように思いがちだが、住民保護は市町村の責務なのであり、容易に災害があれば自衛隊という考えは改めなければならない。

 グループ討議では10年後の脅威について、おもにパワーバランスが2極化した場合のシミュレーションの1グループと、均衡分散した場合のシミュレーションの2グループに分かれて討議した。今回、私は1グループに所属したがそこに防大卒の柴田三尉が加わり非常に有意義な議論となった。内容については差し支える点もあるため割愛するが、現役幹部のコンプライアンスを重視した偏らない思考と的確な状況把握は非常に頼もしくもあり、わが国の防衛にとって大変望ましいものである。他国の侵略に対して自衛隊は最後の砦であり、混迷を極める世界情勢において今後益々その役割が増大することは間違いない。


体験入隊を終えての感想

 懇親会では幹部や若い隊員の皆さんと酒を酌み交わし率直な意見を伺うことができた。もちろん立場上本音では言えないことがたくさんあることは容易に推測できるが、非常に気持ちのいい方々である。
 また、組織という観点から思ったのは、階級による上下関係はあるが、指揮命令する側と実際に武器を運用する側、両方揃っての部隊であり、その点では優劣はないということ。要はどちらが自分の性分に合っているか。このことは自らの適性や役割について再考するきっかけにもなった。

 最後に、休日返上で我々岡山政経塾生のために指導、教育して下さいました陸上自衛隊日本原駐屯地の皆さんに心から感謝申し上げます。