2004年 直島特別例会

 
◆小谷 仁志(岡山政経塾 三期生)

「瀬戸内の光のなかで感じたままに」



 入塾した以上、今年一年は他のことを犠牲にするのは覚悟のうえである。隣家で不幸があり、例会の初日が葬儀となった。かなり迷ったが、後事を父に託し、予定通り参加させていただくことにした。

 私にとって海は非日常の空間である。瀬戸内海の景色は素晴らしく、海からの風は心地よく、大自然を満喫することができた。
 直島では、地中美術館でモネの睡蓮等、二十世紀を代表する作家の作品を鑑賞する栄に浴し、光の織り成すなんとも不思議な世界に魅了された。「千年後に残るものを」という考えで作られたこの美術館をまたいつの日か訪れてみたい。そのときにどのような印象を受けるのか、今から楽しみである。

 福武幹事のお話からは、成功者としての自信というものを感じた。「哲学・思想のない人間はトップにはなれない」という言葉が特に印象に残った。私のレベルでは到底うかがい知ることもできないが、「経済は文化のしもべ」という言葉は、経済人として大成功を収めている方だからこそいえる言葉なのではないかと思った。

 石井県議の実体験に基づいた話には感動した。今までマスコミ等を通じて、豊島問題の概要くらいは承知しているような気でいたが、それが単なる思い過ごしであったことがよくわかった。「百聞は一見にしかず」という言葉もあるように、現場に足を運ぶことは大切だ。お話を聞き、現地を視察することによって、この問題について理解できたように思う。それにしても、いかなる理由があったにせよ初期における香川県行政の対応は、全く信じられない。それが大きなつけをまねいたのは、まぎれもない事実であり、行政に携わるものの一員として肝に銘じなれければと思った次第である。

 夕食後の分科会の討論では、お互いの酔いも手伝ってか、本音をぶつけあいすぎた。岡山政経塾は確かに素晴らしいし、塾生も自分を磨こうという志の高い人ばかりだ。ただ、いくら理念だ・ビジョンだと言ってみても、現実の社会や日常の生活とはかなりのギャップがあることはいなめない。立場は違っても、物事を実践していくうえで、理想と現実のギャップをいかにうめていくかが、私たちに共通する課題ではないだろうか。
 多くの刺激を受けたものの消化不良のまま、自分とはいったいどういう存在なのか、自分に何ができるのかを考えながら帰路についた。むろん、いまだ答えなど出るはずもない。

 瀬戸内の陽光を体感した直島例会での2日間に、お世話になったすべての皆様に心よりお礼を申し上げて結びとする。