2005年 直島特別例会
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◆増田 留実(岡山政経塾 四期生)
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直島例会
直島から見る瀬戸内海の風景は、とても穏やかで美しい。その風景を見ながら、シーサイドギャラリーの大階段を上ってゆくと、その横腹にウォルター・デ・マリアの「Seen/Unseen Know/Unknown」が見えてくる。
つるつるの球は、今にも転がりそうな、そんな気さえする。何トンもあるこの球体が、転がるわけがないのに、見つめていると、本当に転がりだして、自分も一緒に海に転がり込んでしまうような不思議な感覚を覚えた。
なぜだろう。つるつるの球面に移りこんだ自分の動く姿が、球体が動いているように錯覚させたと言うことはすぐに気付いたのだけど、それでもやっぱり動いていたのは、球の方なのだと言いたい気がしてならなかった。自然とアートが響きあっている空間の間に、するりと入り込んでしまったのだろうか。
福武幹事は、「人間の最もより所になるところ」が直島であると話された。不易なもの、変わらないもの。杉本博司さんはそれを水平線に求めたそうだが、このウォルター・デ・マリアの「Seen/Unseen Know/Unknown」も、確かに変わらないものであるように思えた。
私が今回の直島例会で一番楽しみにしていたのは、二日目の豊島見学である。
大学に入学した頃に、弁護士の中坊公平さんの「私の事件簿」を読んでから、一度は行かなければならない場所として、気にかかっていた。
初めて豊島を見た中坊さんは住民に、なぜこんなに酷くなるまで放っておいたのか尋ねた。それに対しある住民は、「何もすることなく放っておいたわけではない。それでもギリギリになるまで待っていたのは、父である県が子である島の惨状をきっと何とかしてくれると思っていたからだ」と答えたそうだ。
その豊島の住民たちが、自分たちの島を取り戻すためにしたのは、一人ひとりが考え、自ら動くと言うことだった。石井県議は、講演の中で、豊島の住民たちが闘うことが出来たのは、共同体、そして自治が残っていたからではないかと言われた。
豊島と同じような問題は、全国各地で起こっている。でも、その中に、共同体や自治が残っているのだと言えるところはいくつあるだろう。
私たち4期生は、これからいよいよ分科会での討論を始めるが、4期共通のテーマはまちづくりである。皆で、当然のようにまちづくりを共通テーマにしたが、なぜ「まちづくり」なのか、もう一度考えてみたいと、豊島を見てそう思った。
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