2007年 直島特別例会
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◆榎本 尚子(岡山政経塾 六期生)
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直島合宿レポート
陰と陽、見るべきを現地にて見い出す
地域とアートの融合の島
直島には何度か行ったことがあるが、今回のようにガイド付きは初めてで、同じものを見ても、その作品ができるに至ったルーツを聞きながら見ると、見方が不思議と変わってくるものである。本村地区は今回初めてで、HPで見るのとはまた違う印象を受けた(HPで見る限りではタダの理解しづらい現代アートが並んでいる、という風にしか見えなかった。「意味不明」な現代アートアレルギーもあるのかもしれないが)。一つ一つの作品を、直島の人と作家が一緒に作ってきたという思いが伝わってくる。直島をアートで彩るようになってから、住民の方が自宅の軒先に同じデザインの「屋号」を飾るようになったというのが、とても羨ましく感じた。最近あちこちで見かける「のれん」が飾られている家もあったり、町が「おもてなし」の雰囲気でつつまれている気がした。
福武幹事が、直島がここまで変るのに10年かかったという話をされていたが、偶然私は10年以上前の直島も知っている。直島に来るたびに少しずつ、「ただの瀬戸内海にある島ではない」という雰囲気が出てきたように思う。その影に色んな人たちの努力が積み重ねられているのだと今回改めて感じさせられた。
北川フラムさんの越後妻有の話も新鮮だった。エリア的には「自分が今何を考えるべきか」と考えたとき、自宅のある美咲町(旧柵原町)について、何か自分ができることはないか、という気持ちになった。閉山された柵原鉱山のある町はすっかり過疎化しており、昔の見る影もない。柵原鉱山公園が行政の手によって作られてはいるが、助成金で成り立っているようなものであり、私自身住み始めて5年になるが、一度も行ったことがないし、興味もわかなかった。企業に依存してきた町が閉山とともに廃れ、行政に依存せざるを得ないというのは非常に寂しいことである。これまでの経過、今ある問題点を今一度考え直す必要があると感じた。
産廃の島
豊島の産廃問題は以前からニュースで見ていて、「大変そうだなぁ」という見解ではあったが、実際どこにあるのかも地図で確認したこともなく、瀬戸内海の一つの島ぐらいで起こっている事件としか認識がなかった。今回石井さんの解説により、豊島は私が思っているよりもすぐ近くで、しかもそこでとても恐ろしいことが起こっていたということを認識した。そして、整備された処理施設も今あるノウハウで作られたものであり、100%完璧なものではない、ということも初めて知った。
豊島は私が幼い頃よく海水浴に出かけていた宝伝・牛窓からも程近いところであり、しかも私が家族で出かけていた時期に産廃はだらだらと瀬戸内海に流されていたのだった。香川県の人は県内で起こっていた状況をハラハラしながら見ていたのかもしれないが、岡山県側しかも海に近いエリアの人がこの話をどこまで真剣に受け止めていたのか。すっかり「他人事」だったように思う。ダイオキシンなど多くの有毒物質が流出していたというデータが出ているが、私の体の中にもその一部が海水とともに入り、奥深くに残っているかもしれないと思うと怖くなる。
この事実をできるだけ多くの人、家族や友人・知人にに伝えていこうと思う。そして、教育者の友人には、ぜひ子供たちを豊島へ連れて行き、身近なところでどんな酷いことが起こっていたのか、ということを見せておくべきだと伝えたい。
今まで気づかなかったことに目を向けること
隣接する2つの島に、身近で起こっていることの陰と陽を一度に見た気がした。そして偶然直島に来られていた渡辺行革大臣と他のお二人の貴重なお話が聞けたこともラッキーであった。そして参加したメンバーとも様々な話をじっくりすることで、新たな発見が多くあったように思う。こんなに濃い体験を2日でできるなんて、私はなんて恵まれているのだろうと思った。
岡山政経塾に参加する前には考えられなかったことが体験できていて、政治や行政・地域に関する興味も湧いてきた。今までと同じものを見ても、見方も随分変った。自分とは全く関わりのなさそうな環境に自分の身を置くことの意義を改めて感じている。
最後に、直島例会という貴重な機会を設けてくださった方々、本当にありがとうございました。そして例会担当の方々、事前準備を含めてお疲れ様でした。
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