2009年 直島特別例会
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◆工藤 値英子(岡山政経塾 八期生)
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ベネッセアートサイト直島合宿レポート
「直島例会を終えて・・・そして、分科会に向けて・・・。」
『100km歩行』『自衛隊体験入隊』という肉体的負担を要する合宿からやっと開放され、心待ちにしていた直島合宿でした。ところが、そんな時に限ってツキの無い私は、仕事と重なり1日目の直島は不参加となりました。
幸い、合宿の下見に参加させて頂けることになり、地中美術館やMuseumのアートは鑑賞することが出来ました。父親の職業柄、幼少時から古美術に囲まれて育ったからか、現代アートを『解る』ことは困難でした。どう観ていいものか、どう捉えていいものか、頭をひねり続けたまま答えを得ることなく帰路に着くこととなりました。が、数日間、鑑賞したアートを思い返していくうちに何か感じるものがあったのか・・・“もう一度あれを観てみたい。“という思いが生まれました。これまでのアートとは違い、答えのないアート。ここには物事を多角的に見ることの重要さが、秘められているのかも知れないとも思います。これから、何度か足を運んで鑑賞する楽しみが出来ました。
さて、実際の合宿参加は2日目の豊島でした。その中で、一番印象に残ったのは豊島問題です。このことについての詳細を、この日まで知ろうとしたことは一度もありませんでした。石井さんのお話は本当に衝撃的であり、思わず聞き入ってしまいました。昭和50年から25年間に亘る、島民の闘ってきた歴史を真剣に語られる姿と瞳にオーラ(輝き)を感じました。その島民の気持ちを裏切ることなく、最後まで中心になって闘われてきた石井さんの何度も立ち止まり、その都度冷静に原点に戻ってじっくり考えながら前だけを向いて進まれた姿が自ずと浮かびました。闘いの中で受けられたであろう挫折感や孤独感、そして忍耐力が尋常ではなかったことは、聞くまでもありません。お話を拝聴しながら、思わず深いため息をつき、人間の愚かさを感じました。保身のためなら平気で嘘をつける人間がこんなにいるのかと、この日本社会にガッカリもしました。子供の頃に大人から「人として絶対にしてはならない。」と強く言い聞かされてきたことを、今の大人が平気でしていることにショックを受けました。成人までに既に身につけている筈である道徳観や倫理観の欠如を目の当たりにしたことは、次世代への不安にもつながりました。
また、問題が積み重なり大きくなればなるほど、解決するために要する時間と労力が指数関数的に増すことに背筋の凍る思いをしました。“この豊島の問題がなかったら、島民の方々の25年はどうなっていただろう。”と考えると、闘い続けた人々個々の人生の重みを感じずにはいられません。彼らの25年の人生を取り戻すことは出来ません。
世間の誹謗中傷の中で、自分の正論を曲げないよう信念を貫くことは言葉では言い表せないほど大変なことです。それを貫かれた石井さんへ、私は敬意を抱きました。このような方がまだ日本にいらっしゃったことに安堵すると同時に、“本来、こんな人がこの日本社会には必要なのに・・・。”とも思いました。現在の日本社会での人の評価法に問題はないでしょうか。それは制度の在り方でしょうか、一般的観念の問題でしょうか・・・。
何れにせよ、もっと人間は、人の人生を、命を重く真剣に受け止めつつ社会を維持していく必要があるのではないでしょうか。そうであれば、このような豊島の問題は起こらずにすんだのかもしれません。『尊重』こそ、今の人間社会に忘れられた言葉のようにも思います。お互いを尊重し、相手の立場に立って考えれば、豊島問題の解決に費やしている何百億円を人の人生や社会をより良くするために使えた筈です。
まずは、“環境づくり”が重要と思います。一人一人が道徳観や倫理観を持ち、自ずとお互いを尊重しながら、助け合いながら生きることが出来る環境づくり。
その方法を、これから始まる分科会で考え、自分なりの提言にまとめていければと思っています。豊島の人々が言う、『何事も自分達でやっていかなければ、この島では生きては行けない。誰がしてくれるわけでもない。』という言葉も忘れません。豊かになりすぎた社会で生きてきた私達は、この基本的な姿勢を忘れてしまっていることも問題です。政治だけに頼るのではなく、自分たち一人一人が意識を持って、自ら社会環境を整えていく行動を起こしていく必要があることをこの豊島を通して感じています。
今回の合宿で観た、島と島から眺めた瀬戸内海の美しさは永遠のものであって欲しいものです。と同時に、その自然界と共存している人間社会も永遠に美しいものになっていくことを願いつつ、分科会に取り組んで行きたいと思います。まだ間に合うのでしょうか・・・。
この度も、心に残る合宿となりました。今でも時々、あの豊島を思い出しています。それほどに強烈な問題であり、心に響くものがありました。ただ心残りは、参加者の誰もが「感激した。」という福武幹事のご講演と手料理を戴けなかったことです。本当にツキの無い私です。
この度も、直島例会のためにご尽力下さった、事務局・幹事・OBの方々にに感謝します。そして例会担当の森田さん、吉田さん、渡辺さん、色々とお世話になり有難うございました。
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