2009年 直島特別例会

 
◆多田 英起(岡山政経塾 八期生)
ベネッセアートサイト直島合宿レポート
  「犬島、直島、豊島で感じた大切なこと」



 「見る、聞く、体感する。考える力を身につける。発想の転換をする。」
今回のテーマの中で私が一番大切にしたことは、「考える力を身につける」ということだ。五感を研ぎ澄まし、体感した。見るもの、聴くもの、体感したもの、自分自身何を感じたか、何を学んだか。三島で感じたことは、以下の3点である。
【1】 感じるまで繰り返す。
【2】 自分がここに生きているのは両親、祖父母、先祖のお陰。
【3】 地域を愛す。

「感じるまで繰り返す。」
 私は以前直島に1度訪れたことがある。それ以来現代美術に興味を持った。実際広島の美術館やフランスのポンピュールセンター等に足を運んでみた。今までは、作品に触れても何かを感じるということはなかった。「これは好き」、「これは嫌い」というレベルである。今回の犬島、直島では「何かを感じよう」、「感じることが出来る」と自分自身に期待をしていた。しかし、残念ながら作品から何かを感じ取れることはほとんどなかった。1つだけ心に響いたのは、直島文化村のシンボルである草間彌生さんの「かぼちゃ」である。このかぼちゃは、非日常的に感じた。普段の生活の中では、このような大きなかぼちゃが存在するはずがない。しかし、直島には存在する。私達はかぼちゃに触れることが出来る。このかぼちゃは、日常で私達が見落としている大切なものを教えてくれているのだろう。時計を買う時はデザインをかなり重要視する。購入してからは、時間にしか着目しない。試しに時計をスケッチしたらどうだろう。一日何回も目にする時計だが、完璧にスケッチすることは出来ない。私達はデザインよりも時間にフォーカスしている。スケッチした絵と実際の時計を比べた後、「時計の長針はどこを指していましたか」という質問をされたらどうだろう。おそらく答えられない。なぜなら、スケッチした絵と実際の時計を比べる際は、デザインにフォーカスしているからだ。時計という現実はそこにある。でも私達は1部分にフォーカスしまう。草間さんの「かぼちゃ」は、「あなたの見ている現実は、本当に正しいものですか?」と問いかけをしているのではないかと感じた。現代美術の答えは1つではない。個々によって感じ方は違う。この「かぼちゃ」から感じたことが5年後には変わっているかもしれない。でもそれで良い。何かを感じるまで何度も何度も足を運ぶこと。その繰り返しで感性が磨かれていくと学ばせて頂いた。

 「自分がここに生きているのは両親、祖父母、先祖のお陰。」
 福武幹事の講和から多くの学びを頂いた。その中で特に印象に残ったのは、感謝するということだ。私が今ここにいるのは、両親のお陰であり、祖父母のお陰であり、先祖のお陰である。100キロ歩行の数日前祖母を亡くした。私が100キロを完歩出来たのは、祖母のお陰だったのかもしれない。祖母は生前本当に私をかわいがってくれた。祖母は商売人だった。祖母の血が私には濃く受け継がれているのだろう。私は商売人としての一歩を踏み出した。
 今ここに生きている確率は天文学的な数字であると教えて頂いた。先祖から命というバトンを受けた。命を活かす。本気で毎日を生きることが先祖に感謝することだと思う。自分自身を高めること。明確なビジョンを持ち、自分を高められる生活スタイルを築くことからやっていかなければならない。私には本当に心の底から府に落ちているビジョンがない。福武幹事に「ビジョンを持つにはどうすれば良いですか」と聞いてみた。その回答は、「常にどうなりたいかということを常に考えなさい。」というものだった。また政経塾の仲間に問いかけてみなさい」と教えて頂いた。自分自身が本気で考え、また、議論することで自分自身の命を燃やせるビジョンを持ちたい。先祖から授かった命というバトンを最高の形で次へつなげるために、まずは時間の使い方の現状分析をし、自分自身が思う最高の時間の使い方と現状のギャップを埋めることからはじめていく。

 「地域を愛す。」
 豊島の産廃問題について、実際自分の目でみた。シュッレーダーダストの山、産廃の匂い、テレビや新聞で目にするのと実際の現場に行くのでは感じ方が全く異なる。豊島問題に対する当事の香川県の対応には苛立ちさえ覚えた。しかし、実際に自分が当時の担当者だったらどうだろう。同じような対応をしていたかもしれない。裏で何か大きな力が働いていたのかもしれない。重要なことは、同じ過ちを繰り返さないことだ。豊島に学び自分自身これから何が出来るか。産業廃棄物が増えるのは、我々が快適な暮らしを求めてきた結果だ。今日、リサイクル、エコという文字を目にしない日はない。国民全員が豊島問題を勉強することが必要であると感じる。国民1人1人の意識が変え、本当に自分が住んでいる地域を愛することが出来なければ、リサイクルやエコというワードが単なる流行語で終わってしまう。今、宇宙船地球号に乗せてもらっている。しかも日本で災害の少ない岡山という非常に良い席に座らせて頂いている。この席をいつかは譲らなければいけない。今の地球号はタイタニック号のように氷山に気付かず進んでいる状態かもしれない。「国政がどうだ」とか「地方がどうだ」と責任を行政に問うのではなく、自分自身の問題として考え、地域を愛し、まずは出来ることから行動していきたい。

 「最後に」
 今回の特別例会で感じたこと、考えたことを忘れることなく、日々の生活に慣れてしまうのではなく、考え考え考え抜いていきたいと思います。非常に価値のある体験をさせて頂きました。これからの人生を生きるヒントを与えて下さった福武幹事、自分1人では経験することの出来ない貴重な体験の場を与えて下さった小山事務局長及び西美さん、その他今回の特別例会にご尽力して下さった方々に心から厚く御礼申し上げます。