2011年 直島特別例会

 
◆竹田 康晴(岡山政経塾 十期生)
岡山政経塾  直島特別例会レポート
  『現代アートと愛。心と体で感じた、芸術の直島』



・はじめに
 直島例会の目的は「見る聞く体感する、考える力を身につける。発想の転換をする。」とある。
 果たして自分は芸術の良さがわかるのか。何かを感じ、得ることが出来るのか。

 不安もあったが、「考える力や、発想の転換」は、自分が伸ばしたいと思う能力。同志達と共に過ごして学ぶ2日間を、実りあるものにしよう。楽しみながら、学ぼう。そう思って直島の地へ出発した。

 直島港に着くと、赤い大きなかぼちゃがお出迎え。
 「なぜかぼちゃ???」最初、疑問だったかぼちゃだが、岡山に戻った今も強烈に印象がある。
 直島港に来た人を驚かせつつも、ほのぼのとさせてくれるかぼちゃのアートなのだ。

 緑と青空、海。瀬戸内の風景、島の美しさと昔ながらの町並み。
 初めて会う私たちに笑顔で言葉と挨拶を交わしてくれる人たちの温かさが、すごく心地良かった。


・「あるものを活かして、これまでにない新しいものを築く。家プロジェクト」
 古民家・寺・神社に現代アートが融合されていた。古民家の居間を掘り、水が敷かれていた「角屋」。たくさんの色の光と、数字がそこにあり、
 これまでにない古民家の姿に驚いた。
 目を閉じた状態と変わらないほどの真っ暗な闇だったはずの場所から光が現れる「南寺」。
 せまく暗い神社の通路から導かれるように瀬戸内の情景と眩い光に包まれる「護王神社」。

 光と闇の使い分けや、自然光を取り入れ、アートをそのままの状態で見せるこだわり。
 それは、季節や時間帯、天候、そして月日の経過に伴い、移り変わる。
 その時の状況や心境で、きっと感じ方が違う。
 この魅せ方もまた、アートなのだ。

 「存在しないと思っていたものが、実は存在している事」や、「いつも当たり前に見ていた物や風景が、もっと素晴らしく見える事」、そこに存在し、「あり続けてきたもの」が、「これまでにない、新たなもの」になっていた。
 芸術のわからないはずの自分が、「このアートはすごい」と思っている。
 見方や発想を変える事で作られた現代アートから、新たな発見と体感、感動があった。


・自然と人間を考える場所、地中美術館
 自然と人間との関係を考える美術館で、空から見ると、まるで遺跡のような外観。
 直島の風景を壊さないよう、共存するために地中へと作られていた。
 地中へとありながらも自然光が降り注ぎ、そこにあるアートは光と空間、そして直島の自然、瀬戸内の海と融合されていた。

 特に、ジェームズ・タレルの光のアートには、これまでにない驚きを体感させてもらった。
光に吸い込まれていくような感覚に陥る、幻想的で素晴らしいアート。
自然のありがたさ、光があることの素晴らしさを体感した。感動が詰まった美術館だ。


・生きることと、愛する事へのメッセージ、犬島
 精錬所でのアートは、すごくたくさんのメッセージを感じた。
 奥に行けばだんだんと寒く、心細くなっていったが、いつも後ろからは太陽に見守られ、たどりついた先には、笑顔で手を振る人たちがいた。
 「いつも一人ではない、精一杯生きよ」と呼びかけてもらっているような気がした。

 そして三島由紀夫氏の命をかけるほどの愛国心に感服した。
 自分が果たして大切なものを、命をかけて愛しているか、守れているだろうか。普段からそれだけの覚悟があれば、人はどれほど強いのだろう。
 魂のこめられた、メッセージ色の強い精錬所だった。

 犬島で特に感じたのは、「生と愛」だった。


・豊島の産廃
 農業・酪農・漁業が盛んな「豊島」。この豊かな島に、私利私欲から有害産業廃棄物が大量に不法投棄され、島が変わってしまった。
 廃棄物対策豊島住民会議の方から産業廃棄物の標本を見せていただき、産廃処理場で見学をした。壮絶な内容を知り、現場を見て、言葉が出なかった。
 産廃業者への判決は、「執行猶予」付きの、「懲役10ヶ月・罰金50万円」。あと2年ぐらいで有害産業廃棄物の処理は終わるそうだが、この60万トンを超える有害物質は500億円もの費用が必要とされる。島と海を汚し、人の心と体にも害を及ぼしてきたこの有害産業廃棄物の処理費用は、国民からの税金で捻出される。政治でもなく、産業廃棄物処理業者でもない。
 私利私欲に走り、後先を考えず、周りを省みなければ、取り返しのつかないことになる。
世の多くの人たちがこの問題を知り、同じ事が起こらないように、起こさないように教訓としなければならない。
 豊島美術館のあたりから見た瀬戸内の眺めの美しさは、また見に来たいと思った。
これからは、二度とこの島が破壊されることのないように、心から願った。


・最後に
 「あるものを活かして、ない物を作る。」
 直島の風景・街並み・建物を活かし、「アート」と「島」を融合して、直島は芸術の島となっていた。

 これから、自分が岡山で「考え」、「発想の転換」をして行動し、「直島例会」を活かしていくのだ。
この直島例会の最後、フェリーで思った事、「世の中の役に立ち、大きな愛を持って接する人。良く生きる人」に、私はなります。

この度、素晴らしい体験をさせてくださった小山事務局長はじめ岡山政経塾の皆様、同期の皆、直島合宿に携わって下さった皆様、
 そして福武幹事、ありがとうございました。