2011年 直島特別例会
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◆中江 悠(岡山政経塾 十期生)
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岡山政経塾 直島特別例会レポート
『現代アートと過疎の島で出会った、心ふるわせるもの』
1はじめに
海を渡った先の小さな島で見て、聞いて、体感した2日間。まさに非日常の世界で感じたことは、「地域から日本を変える」を体現した島であることでした。そこには住民、企業、行政の垣根を越えて、この美しい島々への愛に満ちあふれていました。
2現代アート〜発想の転換〜
今回の直島合宿のキーワードの一つ「発想の転換」、それは自分の見ている切り口とはまた別の切り口を見つけること。
今回の合宿でいえば数々の現代アート、そして、瀬戸内海の何もなかったであろう過疎の島をアートの島にすることで元気にしようという、福武幹事の発想。自分の発想の限界をはるかに越えたそれらがまさにそうでした。
一つ一つのアートが「こんな見方・考え方もあるよ」とメッセージを発信しているのだということを今回学びました。「変だな。」「わからないな。」と思うことにそのアートの価値がある。世の中には自分の発想の外にあるような物や人が多様にあることを教えてくれているようでした。
自分の考えに固執し、異質な物を排除しようとする考え方になりがちな私たちの社会ですが、直島合宿では自分の考えとは違うものをありのままに受け入れること、そして、発想を変えることで大きな意味を生み出すことを学びました。
3北川フラム先生の講義
「価値の再発見」そして、「島の復興」。フラム先生の言われていたその言葉は私の心の中にストンと落ちて、この島のコンセプトを改めて知らせてくれました。
瀬戸内国際芸術祭において「現代アート」ということに目を向けられがちだが、本当の価値はそこにあるのではない。島のもつ本当の価値に気づくための手段としての現代アートである。「産廃の島」豊島にある豊島美術館。水の作り出す幻想的な空間にたたずみ五感を働かせてみると、肌をなでる風の感触、丸くあいた窓から見える木々、そして澄んだ空などアート以外の島本来の魅力に目が向く。産廃という言葉に消し去られてしまった豊島の魅力を教えてくれていました。
また、「島の復興」が目的であるからこそ人々の心を打つ。島を良くするための芸術祭に快く協力した漁協の方々、さらに、全国から集まったボランティア「こえび隊」。本来島とは関係ない人が集まり、お年寄りや島民の笑顔のために援助をしてくださったということでした。
島のため、お年寄りの笑顔のため、それはつまり、瀬戸内の小さな島々に幸せな社会を作るためにあった芸術祭だったからこそ、今フラム先生の講義を聴いても色あせず私の心をうつのだと思いました。
4自分たちの住む地域は自分たちでよくする
直島の家プロジェクトを見て回ると、そこにおられる地域のボランティアの方に出会います。また、どの家も庭がきれいだということに感心します。町並みの各所にちりばめられているアートにも負けない美しさが、どの家にもありました。島民の人が意識して庭をきれいにすることを心がけているのが外部から来た私たちにも見て取れました。だからこそ心地よい空間を維持できていることもわかります。
島を出る直前に銭湯「アイラブ湯」の近くのおばあさんに出会いましたが、私たちに記念撮影用に手ぬぐいを出してくれたり、様々なことを教えたりしてくださいました。この地域のことを誇りに思い、愛しているのがその幸せそうな笑顔からよくわかりました。
この島では自分たちの帰属する地域社会を自分たちの手でよくすることに目が向いています。ともすれば他者に責任を押しつけ、「誰かがしてくれるだろう」と思ってしまう現代社会の風潮は感じられませんでした。地域のことを自分たちの責任においてよくしようとしています。
このことは、まさに地球温暖化がしきりに叫ばれている現代の社会に警鐘を鳴らしているようでした。地球全体を社会として見たときに「地球人」として私たち一人一人が責任をもって行動していくべきでしょう。直島は面積こそ小さいかもしれませんが、そのモデルとして大きな意味を世界に向けて発信しています。
5終わりに
直島に見られる意味のわからない現代アートと島の復興、「壊して作る」我々の生活のあり方と政治の責任についての警鐘を鳴らす豊島、人の産業の跡と自然の偉大さを両立させた犬島の精錬所…今回様々なものを見て、聞いて、体感しましたが、そのどれもが発するメッセージはとても強烈で膨大で、正直なところ自分自身うまくは整理できていません。
しかし、この瀬戸内海の小さな島々が発信しているメッセージは、日本が、そして世界が考えるべき問題を含んでいることは確かだと思います。そして、その解決策の一つのモデルとしての価値も持っているように思います。
今回理解することができなかった数々のことについて、今後も足を運び学び続けます。そして、この世界の未来のために何が必要なのか考え続けて行きたいと思います。
最後になりましたが、この貴重な機会を与えていただいた岡山政経塾幹事の皆様、小山事務局長、先輩方、ベネッセ財団の方々、同期の皆に深く感謝致します。本当にありがとうございました。
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