2011年 直島特別例会

 
◆藤井 美子(岡山政経塾 十期生)
岡山政経塾  直島特別例会レポート
  『キラキラと輝く海と現代アートに抱かれた2日間』


 坂道を歩くと水辺に睡蓮が一輪咲いていた。地中美術館に入り、モネの睡蓮の前にただずみ、ジェームズタレルの真っ黒闇に戸惑い、犬島では自然の力を活かす建築と三島由紀夫に驚き、豊島では人間の欲と愚かさ、政治の責任を考えた。豊島美術館では自然の神秘、安らぎと生きる喜びを感じた、非日常の時間と空間。

 私は、福武總一郎幹事の想いを肌で感じたいと直島合宿に望みました。直島に着くと、赤いかぼちゃが私たちを出迎えてくれました。
 目の前には、焼杉板の壁面。中は真っ暗闇。座って前を見る。自分が目を開けているのかさえ疑問に感じてしまう静けさと暗闇。自分は何を試されているのだろうか?目が慣れてくると前方にスクリーンの様なものがうっすらと見えだす。スクリーンが私には月の表面に見えた。前に向かって静に進むとスクリーンと思っていたものが、実は光の空間であることを知る。
 私の想像や発想を大きく超えているアートの数々。自らの未熟さと小ささを思い知らされました。

 北川フラム先生の講演のタイトルは「瀬戸内芸術祭の背景」でした。次回は是非とも「瀬戸内芸術祭の目的と成果」についてお聞きしたい。時間が無かったのが残念。
 犬島の精錬所は10年という短い活動ではあったが、「在るものを活かし、無いものを創る」という福武幹事の言葉の通り新たに息を吹き返し、時代を先取りした太陽・風・地熱などの自然との素晴らしい調和と共に三島由紀夫のメッセージに悩み、考えさせられました。直島とは異なるメッセージを発信している犬島。

 豊かな島だから「豊島」。海が綺麗で緑が目に眩しい瀬戸内の海。これが「豊島事件」と騒がれたあの「豊島」とは結び付かなかった。
 私はそもそも、「豊島事件」というものを、産業廃棄物で問題になったというくらいしか知らなかった。内容を聞いていくうちに、とても腹立たしさで一杯になった。産廃を不法投棄することを許可し、住民の訴えを無視し続けた香川県。そして、不法投棄した業者が[罰金50万円・懲役10カ月執行猶予5年]で廃棄物を残したまま刑事事件が終わった。その後500億円を超える公費を投じて産廃を処理することになるが、このお金は、私たちの税金です。政治がきちんとしていれば、住民の訴えを早く聞き届けていたなら、500億円は県民の未来のために使う事ができたお金です。
 政治が間違いを犯しても責任を追及されない現実、今の政治に怒りがこみ上げてきました。間違いを犯したら、責任を明確にしなければ、人間はまた、同じ過ちを繰り返す。

 坂道を下りていくと、穏やかで真っ青な瀬戸内と棚田が目に飛び込んでくる。そこには[豊島美術館]が見えた。中に入ると、不思議と懐かしさを感じる空間があった。床から少しずつ水が湧き出て、流れ、立ち止まり、そして重なり合う姿をじっと見つめる私たち塾生。

 産廃問題や様々な問題を作り上げている愚かな人間よ、一度子宮に戻り新たに生まれ変わってもう一度世界へ飛び出していきなさいと言われているようであった。
 豊島=産廃ではなく、これからは豊島=豊島美術館のイメージを伝えたいとの福武幹事の想いを心にしまい込みました。

 「見る・聞く・体感する。考える力を見につける。発想の転換をする」直島合宿。多くのメッセージは、今の私には全てを消化しきれませんでした。
 この島々には、人間の未来に必要な多くのメッセージがある。これから、繰り返し訪問することによって学びを深め、自分を成長させていきたいと心に誓いました。
 帰りの船では、赤く染まった夕焼けが、私たちを見送ってくれました。