2012年 直島特別例会

 
◆左子 敏憲(岡山政経塾 十一期生)
岡山政経塾  直島特別例会レポート
『強烈に考えさせられた2日間』



●はじめに
 アートとは何かと豊島問題について、予習をして参加しました。ネットや書籍で得た知識は、ほんの一部であり、現場で感じたものは強烈なものでした。体感することの大切さや現場でしかわからない事が数多くありました。2日間では時間が足りなかったので、また足を運んでみたいと思います。


●直島
 建築・不動産を仕事にしているため、建築物は建築技術やデザイン・素材に注目して見学しました。地中美術館は、常識を圧倒され、非常識が違和感や緊張感を生み出してくれます。明と暗、暖色と寒色、見事なコントラストが五感に刺激を与えてくれました。
 その空間にアートが展示され、初めて訪れた私は作品の前で息を殺して見ていました。
 教会や神社の中にいるようで、澄んだ水のように心が落ち着きました。
 途中、屋外に出て、島を見渡して思ったのがリゾート地によく見られる高層の建物が無く、人工物が自然より前に出ていない。島の主体は常に自然であるように思えた。
 打ち寄せる波の音、太陽の光、爽やかな風、自然現象が作り出す1/fのゆらぎが心地よさを私に与えてくれました。人間は自然と共に暮らすことで、心地よく生きていけるし、それが幸せだと強く感じました。


●犬島
 巨大な廃墟が、アートを通じて生き続けていた。いろいろな場所に作品があり、説明をしてくださる地元の方も笑顔で話をしてくださいました。元気なのがとても印象に残っています。歩いて移動しましたが、道にゴミは落ちてなく、家も庭も綺麗でした。洗濯ものも干している光景をほとんど目にしなかった。人に見られると美しくなる女性のように
 町全体が美しく見え、地域住民としてのアートに対する意気込みを感じられました。


●豊島
 産業廃棄物不法投棄事件の現場は当時の爪痕を残していた。最前線で行政と闘ってきた方の話を聞くと、涙があふれた。巨大な組織に対し、「かなわぬまでも一矢報いたい」という言葉、そして「お天道様はみてまっせ」の詩は私の心を揺さぶった。事件の始まりからもう40年が経過しようとしているが、行政が許可を出さなければ、もっと早く警察が動けばこんなことにはなっていなかった。事件が起こらないと動かない。起こっても動かない。この無責任が事件規模を拡大していった。今後このようなことが二度と起こらないように行政は、責任を明確にしていき、未然に防ぐことに力を注ぎ、情報開示していかねばならない。情報開示は原則すべてであると強く要求したい。


●講演

橋川講師おかげ横丁
 区画整理を行い、木の文化の危機感から木造建築にこだわった街づくりの講演をいただいた。「おもてなし」の気持ちをもって、金儲けのための観光をしないことが、成功の秘訣であると惜しみなく話していただいた。根底には文化という背景があり、それを起点に建物・人・商品をつくり活気溢れる街づくりを運営されています。ただ同じようなことを別の場所で行っても恐らく失敗する。地域の個性と文化を見過ごして作り上げてもそこには、魂が宿らない。魂を宿さない建物はただの建物でしかない。一昨年、おかげ横丁に行きましたが、今度は異なる視点からおかげ横丁を見にいきたいです。

 福武幹事講演
 将来、何のためにどうなりたいかという問いを投げてくれました。考える力の衰弱、努力不足が現代人には蔓延している。誰が何と言おうと、俺はやる。これが信念だ。凡人と非凡人の違いは、意外とシンプルで非凡人はやりたいことを決めている。すぐにやりたいこと5つ決めなさい。福武幹事の言葉が私の心に突き刺さりました。本当に心から沸き起こる気持ちをすくい上げ決めました。
 「世界を知る。」「幸せに生きる。」「故郷の復活。」「1/fの街づくり。」「サッカー日本代表の育成。」
 やることがたくさんできました。時間の使い方や行き詰ったときは夢に近い方を選択すること等、お教え頂き参考になりました。福武幹事には、このような機会を与えてくださり、本当に感謝致します。100k歩行と同じで、1歩1歩前へ進んでいきます。


●終わりに
 豊島に心臓のアーカイブというところがあります。自分の心臓音を録音して音と光で表現します。塾生皆、鼓動にあわせて光がついたり消えたりするのですが、私だけ変な鼓動で光がつきっ放し。左子の心臓音がおかしいぞとちょっとした騒ぎになりました。心配してくれているのかと思いきや皆涙を流し笑っていました。これもアートです。
 自然とアートと笑顔に触れた2日間でしたが、文化を忘れてはならないこと、信念を持つことが最も大切であると感じました。
 最後に、今回の合宿でお世話になりましたすべての方に感謝の気持ちでいっぱいです。
 本当にありがとうございました。