2012年 直島特別例会

 
◆野村 優作(岡山政経塾 十一期生)
岡山政経塾  直島特別例会レポート
『直島・豊島・犬島で感じた、地域社会のあり方』



●瀬戸内海の島々の魅力

 研修が終わり、一週間がたった今、瀬戸内海の島々の事を思い返すと、なんともいえない、柔らかな心地よさが広がります。
 何故なんだろう?
 直島の洗練されたアートの数々、犬島の穏やかな街並みの中に点在する荒々しいメッセージ性の強いアート、圧巻の精錬工場跡地
 豊島の産廃、許されるはずない行政、人の腐敗、それに問題を問いかけるような大地と一体化したかのような美術館
 全てのアートがすっとそこに置かれたような、そんな自然さが心地よく
 まず島があり、人があり、そこにアートがある。
 それを穏やかな海が優しく包み込む。
 いまあるものに花をそえる、その魅力に気づき今度は島民の人々みづからが島を変えて行く。
 そんな考え方、在り方が瀬戸内海の島々の魅力であり、今の心地よい気持ちを作っているのだなと思いました。


●福武總一郎氏?橋川史宏氏の講義を聞いて

 両氏から共通して、あるものを活かし無い物を作るという考え方を感じました。何故あるものを活かすのか?
 いまあるもの、それは一朝一夕にして出来たものではなく、繰り返される生活の中で出来上がった文化、歴史的建造物、美しい地域など、そこには歴史や人々の思い〈郷土の誇り、思いで〉が詰まっており深い価値がある。
 無い物を作るとは?そこに新たな工夫?考え方を加えることで、いまあるもの本来の魅力を損なうことなく、若者にも受け入れやすい、時代にあった新しい文化の創造ではないかと思いました。
 その結果、多くの若者?観光客が訪れ、文化を知り、地元のお年寄りとの交流を図る事により、古き良きモノの素晴らしさを体感する。地元の方には郷土の魅力の再発見と自らがより良くして行こうという自助の精神が生まれる。
 福武さんのお話の中で年を取るほど幸せにとありましたが、私は今の世の中は世代間によって分断されていると感じています。若者は若者だけでお年寄りはお年寄りだけで、しかしそこには偏った考え方しか存在せず、自分達でさえ気づかないままに、自分さえ良ければ良いという考え方が蔓延しています。
それでは何か疲労した社会・・・
 将来の不安?孤独など、それを抱えて生きていくという事が幸せだとは私は思いません。
 〈人は幸せなコミュニティの中にいなければ、本当に幸せにはなれない存在である〉
 若者はお年よりとふれあう事で日本の伝統、文化、知恵を体感する
 お年寄りは若者とふれあう事で明日への活力を体感する
 幸せを皆が体感出来る街づくり
 これを直島で実現された福武さんに深い尊敬を覚えました。

●ARTとは?

 直島例会の前に小山塾長からアートとは?について定義してこいとの宿題を頂き、その時出した答えは、ARTとは驚き、頭の中のあるイメージを現実に作り出す魔法、この二つでした。
 しかし直島でたくさんのアート、貴重な講義、豊島問題などを聞いて、観て、感じて、今思うアートとは、表現する事、自分の中に眠っていたモノを気づかしてもらうもの、またあらゆる主義主張からは、多くのの支持を得られても、多かれ少なかれ不支持を得てしまう、しかしアートというフィルターを通したものならば、皆が受け入れやすいのではないかと思います。それはアートが思考を超えた感覚を揺さぶるものだからだと思います。
 また既成概念を作らず観る事で、観た人、観た年齢、一緒に観た人などにより感じ方は、その時々により姿を変える。
 もしかしたらARTとはの答えは一生でないのかもと思いました。


●終わりに

 多くの気づきを得た例会となりました。
 また同期と海に飛び込んだり、共に過ごした2日間はとても楽しい思い出になりました。
直島には親しい友人を連れてまた訪れたいと思います。
 最後になりましたが、このような素晴らしい合宿を準備、運営してくださった全ての関係者の方々、本当にありがとうございました。