2013年 直島特別例会
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◆片山 準平(岡山政経塾 十二期生)
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岡山政経塾 平成25年7月6〜7日 直島特別例会レポート
『陰と陽、美と醜』
●はじめに
「見る・聞く・体感する。考える力を身につける。発想の転換をする。」今回の直島特別例会の目的である。
直島に来るのは今回で6回目だと思う。この合宿では地中美術館、ANDO MUSEUM、家プロジェクトを見学。今回は見学できなかったが、ベネッセハウスミュージアム、李禹煥美術館とすばらしい美術館、芸術作品が多く溢れている。
また、今回初上陸となる犬島、豊島にも美術館や様々な芸術作品が多く点在している。しかし、1980年代から始まった豊島産廃不法投棄問題は未だ解決していない。2012年までの処理期間を計画し、毎年何十億円もの税金を投じ処理を進めていたが処理しきれず。期間は3年間延長された。
アートと産廃。ここに陰と陽、美と醜を見た。
●アートとは
直島に点在する芸術作品たちは、訪れる度に毎回違った表情、音、温度、光、感覚を味わわせてくれる。共に鑑賞する人が違えば、違った見方ができ感じ方も変わる。それは訪れる時期、時間、天気によっても変わってくる。特に地中美術館にあるクロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品は顕著にそれを感じた。
森先生の講義ではVTS(ヴィジュアル・シンキング・ストラテジー)について説明していただいた。現代アートに対する感じ方は十人十色で、答えはないが、全てが答えである。自分がどう感じるか、人がどう感じているのか、しっかりとコミュニケーションをとり意見を交換しアートへの理解を深める。新しいアートの見方を教わり、これからもどんどん現代アートに触れて感じてみたいと思う。結局「アートとはなにか」についての答えは出ていないが、なにかヒントは得られたと感じた。
●アートと産廃
豊島に上陸し、最初に感じたこと、「アートも産廃も全然感じられない。」
産廃事件についての説明を受けても正直あまりピンとこなかった。しかし不法投棄現場を訪れた時、心をガツンと殴られた。「なんだこれは…」
劣悪な業者が他県・他国から集めてきた産業廃棄物・廃棄液。掘り返した地面に何メートルも積み重ねては燃やし、積み重ねては燃やし。処理すべき産廃の全量は推定90万トンを超えている。処理に必要な金額は総額約500億円。これはすべて国と香川県が税金から捻出している。
信じられない現状を目の当たりにし涙が出た。その時の心境は未だによくわからないが、とにかく心を殴られた感覚であった。利益のみを追求し自然環境のことは考えもしない。人間は快適さを求め便利な商品等を開発し手に入れるが、それと同時に失うものもある。目の前にある利益・便利さだけに目を奪われるのではなく、目に見えない部分にあるモノをしっかりと感じ取り、それについて考えるべきである。物事の本質もそこにあるのではないかと思う。
一方では豊島美術館や様々なアーティストによる作品が島のあちこちに点在している。豊島美術館では目の前に広がる綺麗な瀬戸内海、山の斜面には休耕地を復活させた棚田、そして美術館自体がアートであり、内部にはどこからか溢れる水滴が泉を作り出す不思議な空間。開口部からは風、光、音が流れ込み何とも言えない空間を作り出す。全てが美しい。
周囲約20km、人口も1000人に満たないこの小さな島で、陰と陽、美と醜を感じた。アートと産廃。
個人的な意見を言うと、豊島についてはもっとアートと産廃を近づけ、うまく融合させていけばもっといいモノが創りだせるのではないかと感じる。負の遺産、産廃。新たなる創造、現代アート。そうすればもっと産廃もクローズアップされ、産廃問題について考える機会が増えるのではないだろうか。
●最後に
この度の直島特別例会では、いろいろな面からアートに触れられ、また新たな一面を感じることができた。そして、絶対に風化させてはいけない産廃問題にも真剣に考え、様々なことを感じることができた。陰と陽、美と醜。全く逆の言葉ではあるが、どこか融合することができればまた違った表現ができるのではないだろうか。そうなればまた違った感じ方もでき、違った学びも得られる。その融合は自分の心で感じるものなのかもしれない。
今回の直島特別例会も非常に有意義に過ごすことができ、多くの学びをいただきました。小山事務局長をはじめ、OB西美さん、森先生、その他多くの関係者の方に心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
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