2013年 直島特別例会
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◆坂本 裕貴(岡山政経塾 十二期生)
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岡山政経塾 直島特別例会レポート 7月9日
『よく生きるために考える』
●はじめに
私はこれまでアートというと絵ぐらいにしか触れたことがありませんでした。見た絵についても特に考えたことはなく、「なんかすごいけどこんなの誰でも書けるわ!」くらいにしか思っていませんでした。自分が思うアートについての価値観がどう変わるのかを楽しみに、現代アートと向き合おうと決めて参加しました。
●地中美術館
ここでいきなり衝撃を受けました。ジェームズ・タレルの『オープン・フィールド』です。階段を上ると、光と空間があるだけで他は何もありません。自分が今まで思っていたアートとは全く違いました。今まで生きてきて、自分の視野がいかに狭く、先入観で物事を見ていたかを思い知りました。
●森先生の講演
森先生のお話では、Visual Thinking Strategies(VTS)というアートの鑑賞方法を教えて頂きました。アートを見て感じたことをどんどん言い合うことで、作者の意図することが見えてくるということでした。今まで分からないとばかり思っていたアートが段々分かってくるのはとても楽しかったです。
ベネッセハウス ミュージアム
スロープを下りながら何気なく海を見ていると、事務局長に、これは上りの時も下りの時も海が見えるようになっていると言われて、なるほどと思いました。「そういう風にものを見るんだよ。ガハハハハ。」と言われ、ここでは全て安藤忠雄さんやアートの作者達の意図があるのだと気づきました。だから訪れた人にまた来たいと思わせるのかなと思いました。漠然とものを見ることが多かった自分に、考えるきっかけをもらいました。
●豊島
産業廃棄物の問題は、小学校の時に教科書で見たぐらいで今まで何も知りませんでした。
豊島について初めに感じた印象は、自然が美しくのどかな島という感じでした。バスの中で地元の方に、道の途中などに業者によって残された生々しい爪痕の話を聞くと心苦しくなりました。処理現場に着くと、沢山の土が積まれたり掘られたりしていて、ドラム缶なども捨ててあり、少し前の雨によってできた水たまりは黒色でした。その向こうには何事もないように瀬戸内海が広がっています。この下にもまだまだ処分の作業が難しい廃棄物が沢山あると聞き、現実を知りました。地元の方たちで作った資料館では廃棄物が詰まった地層が展示されていて、「この中に豊島のものは一つもない」と言われていたのが心に突き刺さりました。地元の方と弁護士の方との話や、業者や当時の香川県のめちゃくちゃさを聞くと涙が出そうでした。この問題をもっと周りに伝えていかないといけないと感じました。
豊島美術館の水滴のような建物は時間がとてもゆっくりと感じられて居心地が良かったです。自分が今回見たアートで一番感動しました。その後の店にあった豊島美術館の写真集で同じアートを見ましたが、特に感動しませんでした。今回のテーマの一つである「見る・聞く・体感する」ということの大事さを改めて感じました。
●まとめ
今回のテーマの「見る・聞く・体感する」「考える力を身につける」「発想の転換をする」というのは自分なりにできたと思います。特に考えることと発想の転換については大きな気付きになりました。
豊島を歩いているときに何人かの島民の方とお話しすることがありましたが、全員が笑顔で生き生きと話をしてくれました。その時に「この島に現代アートがなかったら?」「自分の地区のお年寄りはこんなに生き生きしてないかも。」「福武さんは現代アートで何を伝えたいのか?」「そもそも現代アートって結局何なん?」と疑問がわいてきました。そこでレポートを書きながら改めて考えた結果、現代アートとは、ベネッセグループの企業理念でもある「よく生きるために必要な考える力を身につける手段」という考えになりました。あまり自信がないので、また島に行ってみて色々感じてみたいです。
最後に、12期生の皆さん、西美さん、事務局長、島の方達、すべての関わってくれた方達のおかげで自分自身楽しい合宿になったのと同時に、沢山の事を学べました。本当にありがとうございました。
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