2003年 直島特別例会

 
◆栢菅 泰介(岡山政経塾 二期生)

直島合宿レポート



 まず私は、このような合宿に参加させて頂くのは私にとって初めてであり、何をどうしたらよいか、不安でいっぱいでありました。私の中では、直島と言うと三菱マテリアルの工場と夏場の海水浴場くらいの印象しかなく、ベネッセのあんなすばらしい施設があるなどとは夢にも思いませんでした。
 そんなすばらしい環境の中で、世界の建築家でいらっしゃる安藤忠雄先生、ベネッセの福武会長、豊島における産廃問題をテーマとした石井県議の講話等々自然の中で社会生活を営む人間が正面から考えなくてはならない事案ばかりで、大変参考になりました。



1.安藤忠雄先生講演

 私が先生の講演を拝聴させていただいて特に感じた事、共感を受けた事は、今の子供は、子供の時に子供をしていないという部分でありました。確かに現在の子どもたちは、対人関係が極めて希薄になっていると思います。人と人とがふれあい感じあわなければならない時期にTVゲームに没頭し、バーチャルリアリティの中に自分を置き、あたかも現実と仮想を混同する中で平気で人を殺すなど前後の見境がつかない中で行動しているのが現実ではないでしょうか。
 確かに、私の幼少期にもTVゲームはあり、実際に遊んでおりましたが、主には外でドロドロになるまで遊び、たまにはケンカもし、TVゲームなどでは収得しえないない友人との絆や子供なりの社会秩序というものを自然に得てきました。しかし、今の子どもたちにはそれが極めて希薄であり、バーチャルリアリティを、前後見境もなく現実へ持ち込んでくる始末であります。また、親が過保護になりすぎ、対人関係の形成はおろか、家族内でのコミュニケーションも希薄になっているように思われます。安藤先生のご講話の中にありましたが、自ら物を考え、感性を研き、未来を考える子供になってもらいたいです。これからの日本の将来を担っていく宝なのですから。
 とにかく事前に安藤先生の著書も読み、にわか勉強もしていたのですが講演では先生の作品の原点をお話しいただいたわけで、生き方というか、感性というか、こだわりを持つことの尊さに感銘を受けました。



2.福武總一郎会長講演

 福武会長の講演では、安藤先生の講演に相通ずるものがあるように感じました。福武先生の現在があるのは、幼少期のさまざまな出来事の影響が反映されておられるそうで、「より良く生きる」この意味を分りやすく説明していただきました。
 会長の言葉には特別重みが感じられました。高度成長期からバブル崩壊後の混迷し、あえぎ苦しんでいる社会に対して、“経済は文化のしもべである“とおっしゃられたときには全てを身をもって体験し自らのアクションプログラムを文化に導くところは会長の感性であり他の人には真似の出来ないオリジナリティに感動いたしました。
 脇役が主役になれる今こそユナイテッド・リージョンズ・オブ・ジャパンの意味する志があれば誰でも文化を持つことができ、その集合体の生み出す力が大切である。感激した瞬間でした。
 会長は、郷土岡山をこよなく愛しておられ、地方から世界へ情報発信することで元気な岡山を願っておられるように感じました。
 もっと地域を知り、自分の志を大切にと言っておられましたが、私も自分の志を曲げる事なく大切に、また、確実な物に育てていきたいと痛感いたしました。福武会長に、パワーを頂き、励まして頂いた感じです。



3.石井亨先生講演

 まず、先生から豊島の産廃に係る歴史を教えて頂き、その内容を知れば知るほど驚嘆することばかりでした。
 私は現在住んでおります地域は山上産廃処分場の下流に位置し毎日いかがわしい県外プレートのトラックやパッカー車が行き交う中で地元住民は本当に理解しているのだろうかとはなはだ疑問符を投げかけずにはいられません。
 お話の中に悪徳業者のこと、それに対する行政のあまい対応、住民の苦しみと、総合してみるとある種憤りすら感じました。先生の講演を拝聴させていたただいて、行政に対する不信感がある種色濃くなりましたし、先生のような勇気ある行動がとれる方が一人で多く行政に対して管理監督をしつつすばらしい自然を取り戻してもらいたいものです。
 国においてもゴミ問題は深刻な様相を呈しており、ゼロエミッション構想や資源リサイクルを唱えておりますが、いずれにしてもコストのかかる話で、快適な文化生活=ゴミというのでは高度成長時代の生産=公害と何ら変わらないように思えて仕方ありません。
 私の場合他人事ではないのです。ゴミ問題のまっただ中にいるのです。都市部のゴミを田舎の自然環境の整った山間部へ捨てる。これが行政のやり方だと思うと豊島とどこが違うのか甚だ疑問符を打たざるを得ません。岡山市の処分場はそれなりの対応が出来ていると思われますが、民間によって開発された処分場が次々と出来てきており、吉備高原開発はそんな意味で出来た物ではないはずなのに、そのアクセス道路である吉備新線は今やゴミロードといわれるほど変貌しつつあります。
 先生のお話を参考に新たな取り組みを模索してみたいと思います。



4.合宿を終えて

 企業人であってもなかなか聞くことの出来ない貴重なお話と、すばらしい講師の先生方と交流を持つことができたことは入塾者にとって最高のプレゼントをいただいたような気がいたします。今回の研修に参加できたことで自らに対し何らかの形で血となり肉となって少しは成長出来たのではないかと思います。ありがとうございました。