2009年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆山中 玲子(岡山政経塾 八期生)

『自衛隊体験入隊参加レポート』




自衛隊=Japan self-defense force
 自衛隊・・・。これまでの日常生活では、まず、意識しなかった組織。今回のカリキュラムを通じて、「自衛隊」、「国防」について考える機会をいただいたことに感謝したい。

自衛隊(現行法第3条1項)
1 .自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

事前講義
 自衛隊体験入隊に先駆けて、自衛隊OB永岑先生よりご講話をいただいた。心に残っていることは、講義の最後にお話してくださった、「日本における自衛隊の立場についてのこと」。「あなたのことは嫌いではない、でも好きでもない。」と言っている国民を、命がけで守ることへのジレンマ。悠久の大儀に生きる、とはいえ・・。私は、仕事をすることで、患者さんにありがとうと直接感謝してもらえる。このことは、仕事を続けていくうえで大きなモチベーションになっている。でも、これがなかったらどうだろうか?国民のために、社会のためにという自負心をもって働いていても、その仕事の存在意義さえも認めてもらえなかったら・・・、政治に翻弄され続けたら・・・。自衛隊の方は、どのような気持ちで仕事をしているのだろうか?私にとって、これが一つの疑問となった。

体験入隊
 懇親会では、一般の自衛隊員から生の声を聞くことができた。2つの話が、印象に残った。
 一つ目は、高校時代不登校であったが、自衛隊に入って立ち直ったという若い隊員の話。自衛隊に入隊してからも紆余曲折はあったが、家族や自衛隊の仲間の支えにより、何とか乗り越え、今は自衛隊生活を楽しんでいるとのこと。さらに、若者の間で、自衛隊員は女性からもてるらしく、いい思いをしているとのこと。規則正しい生活、肉体の鍛錬、仲間との近い距離感が、人間を正常に戻し、成長させるのではないかと思った。「健全な精神は、健全な肉体に宿る。」「国防」など難しいことは無しにして、自衛隊は、体育会系の若者にとって天職であろうと思った。うまく社会と折り合えない人が増えて、不可解な事件が次々と起こる現在、自衛隊のような組織で全ての国民が体験をすることができれば、何かが変わるかもしれないと思った。小中学校での修学旅行や自然の家と同じように、自衛隊体験入隊も学校のカリキュラムに入れるのはどうだろうか?

 2つ目は、指揮官に、事前講義のこと、自衛隊の仕事について質問をしたときの回答。「国民が自衛隊のことをどう思っていようと、そんなことは言っていられない、我々は有事のときに国を守れるように、目の前の訓練をただ健気にやっていくのみ」、とのことだった。シビリアンコントロールの意味を考え直させられた。本来、シビリアンコントロールは、「職業軍人でない文民が、軍隊に対して最高の指揮権を持つこと。軍部の政治への介入を抑制し、民主政治を守るための原則。」、どちらかというと軍を抑制する意味合いが強いであろう。しかし、自衛隊が現行法第3条1項のようなものであり、前述の指揮官のように純粋にその職務に励むものがいるのであれば、彼らが気持ちよく仕事に打ち込めるように、我々、文民が自衛隊の存在を受容し、感謝して、up-regulateしていくことも、シビリアンコントロールの一部ではないかと思った。また、それが自衛隊に国を守ってもらい、災害時に助けてもらっている国民の努めではないかと思った。

まとめ
 自衛隊体験入隊を通じて、団体生活での自律心・協調心を学び、身体・精神の鍛錬ができたのはもちろんのこと、日本国、自衛隊、国防などについて意識し、考えることができた。
 考えてみれば、黒船がきて開国し、それぞれの藩が一つになって日本という国ができてから150年も経っていない。日本は、国として未熟な状態で日清、日露、第一次世界大戦で勝利してしまい、軍部をコントロールできなくなった。例えば、よちよち歩きの小さな子供が、周りの大人から身を守るために、使い方も分からない拳銃を持つような状況と同じだったのかもしれない。当然、第二次世界大戦で大失敗し、日本は武力を持つことそのものに抵抗を感じるようになった。しかし、日本は国として様々なことを経験して成長し、今や経済大国となって、強大な力もうまく使いこなせるようになっていると思う。自衛隊は、国を守るため、災害時に国民を守るため、国際貢献や外交のために、必要不可欠な組織であると思う。また、自衛隊のような規律正しい組織での経験は、教育が崩壊している今の日本で、社会のひずみを修正する力をもっているような気もする。一日本国民として、自衛隊に関心を持ち続け、理解することが必要であると感じた。
 最後に、この体験入隊にご尽力いただいた全ての皆様に感謝させていただきます。ありがとうございました。