2009年6月 岡山政経塾 体験入隊 特別例会

 
◆渡辺 健太(岡山政経塾 八期生)

『命をかけて国民を守るという眼差し』




◇はじめに

 自衛隊体験入隊にあたり自分に言い聞かせていたことは2つ。岡山政経塾から提示された「日本の安全保障・危機管理の現場を学ぶと同時に、団体生活で規律心・協調心を体得する」という目的を自分なりに解釈し、1つは、「自分の五感をフルに働かせ自衛隊駐屯地の現場に浸かること。」もう1つは、「1秒でも早く本気のスイッチを入れ、自衛隊のルールに徹底的に従い、120%の力(体力、精神力)を出し切ること」であった。

◇日本に軍事は必要か

 小山事務局長から頂いた「色々と意見するのもいいけど、実際に自衛官と話すことに価値がある」というお言葉に象徴するように、今回の入隊体験の一番の価値は、実際にその任務を命ぜられ、職業としてその道を選んでいる現役自衛官と直接話ができたことだと強く感じた。
 1日目の体験訓練を終え、懇親会では2時間という時間があっという間に感じられる程、自衛官の方と濃厚な話をすることができた。その中でも、一番印象に残っている言葉は、「命をかけて国民を守る。それだけです。戦争は嫌ですけど日本人が殺されることはもっと嫌なので」というシンプルだが、とても深く強い言葉に正直、何も言い返せなかった。
 また、離隊後、帰りの車の中で同期塾生から「永岑先生に『日本に軍事は必要ですか?』という質問をしたら、『それは日本に経済や政治が必要か?という質問をしているのと同じレベルに聞こえるよ』と答えられた」という話を聞いた。改めて、我々の日本の防衛に対する意識が低く、このテーマについては、体験入隊をしたからこそ、今後も、引き続き各自で学び直す必要があると感じた。知識を深めることももちろんだが、考え続けることにこそ本当の価値があると思う。心身ともに体験入隊の記憶が新しいうちに具体的な学びを持ちたい。
 「命をかけて国民を守る」と語ってくださったN士長の眼差しに、「日本国民としてこの人たちがいてくれてよかった。自衛官は尊い存在だ」と心から思えるようになった。と同時に、二度と日本に戦争を持ちこませてはいけないと強く感じた。

◇本気のスイッチ

 「1秒でも早く本気のスイッチを入れ、自衛隊のルールに徹底的に従い、120%の力(体力、精神力)を出し切ること」という自身に言い聞かせていたテーマについて。
 基本教練の際に、早くもピリピリとした雰囲気が漂いはじめ、特に私が入った班の班長(N3曹)の喝はすさまじく、他塾生と共に震えながら訓練はスタートした。「もうやるしかない。」覚悟を決めた瞬間、自分の本気のスイッチは案外簡単に入った。「本気が格好いい」と信じ込めた瞬間だった。
 たかが、「前にならえ」「右向け右」「まわれ右」などの中学校や高校の体育でも経験したことのある内容が、ここまで「規律心」「次の動作に移るための予測・準備」を磨く訓練となるとは想像もできなかった。
 県内でも、新入社員研修の一環として何社もこの日本原駐屯地での体験入隊を取り入れているという話を聞いたが、特にこの基本教練で得られるものが大きいだろうと感じた。指示に従い機敏に正確に動くことと、軍隊をスムーズに動かすための指示を的確に出すという指揮官の役割を体感できたことを含めて、この訓練の意義があると感じた。

◇憧れのリーダー像

 いつか自分がリーダーという立場に立つとすれば、次のようなリーダーを目指したい。1点目は、「本気が格好いいと思える集団作りができること」。2点目は、「リーダーとは上に立つのではなく、皆よりも一歩先に前に踏み出す存在であること」だ。
憧 れのリーダー像を描けたのは、自身が生活体験者(政経塾生)より、年下であることに多少の迷いはありながら、2日間の間「鬼軍曹」を貫き通してくださったN3曹のおかげだと心から思う。
 集団は集団であるからこその力を発揮する。自衛隊でいう「統制」「掌握」はこの集団の力を発揮するために必要不可欠なことである。そのためにリーダーは時に嫌われ役に、また、先陣を切って一歩踏み出すことが必要である。

◇最後に

 今回の体験入隊の機会を与えてくださった、小山事務局長、永岑先生、OB山田さんをはじめ日本原駐屯地の皆様に心から感謝申し上げます。本当に貴重な経験ができました。ありがとうございました。
 日本の防衛については、引き続き学び続けることと、自衛官の方からの「渡辺は職業選択を誤った(=自衛官になれ)」「まだまだお前は体力が上がる」という助言にこたえ、自主トレを始めることをお約束し、今回の体験入隊レポートとさせていただきます。敬礼。