2010年 直島特別例会

 
◆井上 和宣(岡山政経塾 九期生)
松下政経塾・日本青年会議所・岡山政経塾  直島合同合宿レポート
  『直島例会 魅力的な空間と時間の中で』



●はじめに
  今回の直島例会で、3回目の訪問となりました。地中美術館、家プロジェクトに代表される現代アート作品の素晴らしさ、美しい瀬戸内海の自然と芸術が融合して日本と世界が一体化する魅力は、私なりに認識していましたが、大きな一つの疑問が心の底にありました。
 「なぜ、直島の島民は、この壮大な事業の中で、主役に近い立ち位置で、主体的に取り組むことが出来たのだろうか? 不思議な一体感はどこから醸し出されているのだろうか?」

 初日の、直島文化村 副社長 笠原良二直島プロジェクトの概略説明を聞かせていただき、その答えが見つかりました。もともと直島に、瀬戸内海国立公園の自然を活かして島の南部をリゾート開発区域とする構想があったこと、長年に渡るその実現に向けた努力が、先代福武氏との運命的な出会いにより動き始め、その遺志を継いだ福武総一郎氏の壮大な構想力と、「地域」に視点を置き、「地域から日本を変える」「地域から日本をよくしていく」という理念が、それを可能にしたのだと感じました。あるものを壊し、新しいものを創るのではなく、あるものを活かし、新しいものを創るという考え方が、島民の心に火を灯したのでしょう。


●素晴らしい講演

(希望)
 慶応大学 清水浩教授による初日の講演第一部では、日本で発明・実用化されたリチュームイオン電池をはじめとする技術が、有限である化石燃料に変わる太陽エネルギーの実用化を可能にしていること、さらには、教授が社長を務める会社が開発を続ける電気自動車の世界普及に大きな貢献を果たすことを学びました。何より、資源・エネルギーを持たない日本の生命線である科学技術により、日本は世界でさらに輝くという希望を得ました。

(覚悟)
 続く福原慎太郎益田市長の講演第二部では、益田市の現状と未来をお話しいただきました。トップとして政策を実現するための心構えとして、共鳴を得られる「理念と哲学」が必要であること、現場で人・現実を知ることとが重要であること、そして、やり遂げる「覚悟」が不可欠との教訓をいただきました。まちづくりには、「あるものを活かして新しいものを創る」という、まさに直島のありかたと同じ理念が根底に流れており、その正しさを再確認いたしました。
 
(人)
 翌日の同志社大学 村田晃嗣教授による講義では、政治史分析から導き出された政治の現状と今後について学びました。さらに日本とはどんな国かをよく考える時だ。資源が「人」である日本は、今100年に一度の人材不足に陥っているとの警鐘を鳴らされていました。国が成長を続けるための要因として、
 1) 技術革新
 2) 優秀な人材を集めること
 3) それを可能にする土壌として、寛容性・多様性
を示していただきました。


●魅力的な空間と時間の中で
  いずれの講演も、非常に質の高いものであり、改めて、岡山政経塾の素晴らしいネットワークを築き維持されている幹事の皆様、小山事務局長と、歴史を積み重ねてこられた先輩の皆様に感謝の念を禁じ得ません。

 直島の自然と芸術が一体となった空間と、価値ある講演の連続という時間に身を置くことによって、多くの気づきを得ました。

 地域から日本を創る時代を迎えていること。そして、あるものを活かして新しいものを創る発想が、地域・日本を彩る鍵だということ。
 資源・エネルギーも広大な領土も有しない日本の資源は「人」であること。その「人」が新たな発想、発明、技術、を生み出すためには、現代美術家ジェームズ・タレルの作品に象徴される、既成概念の打破が不可欠であること。

  私も日本の資源の一人として、日本を愛する一人の地域人として、

  さらに一層の成長を心に誓った二日間でした。