2010年 直島特別例会

 
◆賀門 俊裕(岡山政経塾 九期生)
松下政経塾・日本青年会議所・岡山政経塾  直島合同合宿レポート
  『瀬戸内海の島 直島での発想の転換』



0.はじめに
 直島は2004年7月に「地中美術館」が開館して以来、6年ぶりの訪問となりました。今回の例会の目的は、考える力を身につけること,発想の転換をすることですが、自分にとって不得手な後者に目的意識を持って臨みました。


1.直島プロジェクト
 初日に直島文化村の笠原副社長より、直島プロジェクトについてのご説明がありました。このプロジェクトの至った背景や経緯を聞いた上で2日目にベネッセハウスミュージアム,地中美術館を見学したことが、新たな気づきを誘うことになりました。
 それは、この直島でしか体験・体感することのできない美術作品が展示されていることに感動したことです。従来の博物館や美術館の固定概念に捉われない“発想の転換”があったからこそ、創造することができた直島ならではの現代アートであることも理解できました。
 家プロジェクトは今回が初めての訪問でしたが、人口3,300人の直島に多くの外国人観光客を見かけました。また、直島に暮らす多くの方々のご厚意により成り立っていることも実感できました。多くの人たちが集まり、町が賑わい活力がある直島。地域のまちづくりの良いお手本として考察を深めていきたいです。


2.慶応義塾大学 清水 浩教授のご講演 「21世紀社会と電気自動車」
 電気自動車開発の背景やその経緯,他の事例も取り上げてご説明いただき、とてもわかりやすいお話でした。「この技術を世界中に広げることが日本の役割。技術で勝って利益で負けているのが日本」というお話は印象的でした。リチウムイオン電池を日本が実用化できれば、日本が世界的にイニシアティブを取ることができます。
 実用化には幾多のハードルはありますが、太陽電池で発電してリチウムイオン電池で貯めるという発想は課題解決策の一つであると認識しました。新しい技術を開発しても、それを供給する術がなければ実用化はできません。
 今後のモノづくりとは新しい技術を開発する能力に長けていることに加え、実用化する方法まで考えられる人材、すなわちディレクター型ではなく、プロデューサー型人材が求められると受け止めました。
 「情報は発信すればするほど返信がある。情報を隠すよりも広げる方が日本の国益になる。これからは、1社だけが勝ちということはない」というお話は、「松下が大きくなるためには、業界全体が大きくならなければならない」という松下幸之助氏の考え方とも共通します。
 清水先生の科学者としての技術力だけではなく、経営的な視野の広さとその考え方にも感銘を受けました。 


3.福原 慎太郎 益田市長のご講演 
 一番印象に残ったお話は、「松下政経塾で得たこと、それは『今後何を学ぶか』を学んだこと」です。知識やスキルを習得することは大切ですが、物事に対する考え方や取り組む姿勢に最も共感します。福原市長の考え方や取り組む姿勢を端的に表現された格言ではないでしょうか。
 指導者に求められる資質として、“人間観”,また、政治家や経営者が持つべき要素の一つとして、共感できる“理念・哲学“を挙げられました。
 福原市長のお話から、共感できる“理念・哲学“を導くための多くのヒントがありました。自分なりに考えたことは、(1)事実を正確に把握すること,(2)自分の考えが理解され納得を得られるように考え抜くこと,(3)成果物やゴールのイメージをわかりやすく説明できること,(4)実現可能であること,(5)想定できるリスクとその対応策があること,(6)他人任せではなく、自らも率先垂範して取り組むこと等です。自分の立場に置き換えて、実践していきたいです。
 

4.同志社大学 村田 晃嗣教授のご講演
 政治や世界経済の具体的な事例を取り上げてご説明いただき、とてもわかりやすいお話でした。同時に、仕事の進め方や物事を考える上での課題の捉え方,逃してはならないタイミングの大切さ,知っておかなければならないこと等、多くの学びがありました。
 “タイミング”を逃さない。自民党麻生政権における衆議院解散のタイミングを逃したことで、昨年の総選挙では200の議席を失い政権を譲ることになりました。劣勢な情勢で捲土重来を期待できない状況下では、損失を最小限に食い止める勇気ある決断の大切さを学びました。止血を最小限に抑えていれば、好転する機会を伺うことも可能であり、回復も早いです。
 “日本のナショナルアイデンティティがなくなることの方が大きい”ことについて、日本のGDPは中国やインドに追い抜かれ、いずれ第4位になるというお話がありました。村田先生は「歴史的なトレンド」と語られましたが、日本が世界第2位の経済大国でなくなることに悔しさを感じます。これは長い時間軸で考えればトレンドかもしれませんが、日本経済が好転しそうな兆候が一向に見えにくいことに危機感を覚えます。経済危機ではなく、この危機を打破できる人材が不足しているというお話はとても説得力があります。今年の大河ドラマ「龍馬伝」が高視聴率なのは、新しい日本をつくっていった幕末の志士のようなヒーローをいまの多くの日本人が求めていることも納得できます。
 岡山政経塾の塾生として、地域や日本を新しく変えていくことのできる龍馬のようなスケールの大きい人間になることを目指したいです。知・得・体のバランス感覚を養い、グローバルな視点で考え、ローカルに行動することを心掛けたいです。


5.最後に
 直島例会の研修の場を与えていただき、ありがとうございました。岡山政経塾の今後の活動では発想の転換に注力し、今回の研修内容がどの場面で活かせるのかを都度考えて行動し、成果につなげていきたいです。