岡山政経塾 チーム21
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◆岡山市中心市街地の現状と未来への取り組み◆
〜市民の声から〜
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第二章 取り組むべき現状と課題、そして未来のための対策
第1項
6期生 西美 篤
(1)市民が求めている商店街の現状と課題
内環状内の構成要素の一つとして、商店街があります。古くから商いのあるところに人は集まってきました。人の営みに必要なものだからです。しかし、今、商店街は衰退の道を歩んでいます。岡山市が行っている商店街の通行量調査によると、平成20年の通行料は、調査地点によっては、昭和41年の10分の1以下の人数になっているところもあります。(※表1)
そこで、衰退する商店街を時代に即した形で新しく生まれ変わらせることは、有効な活性化の手段の一つだと考えました。商店街が新生するとは、買い物客が集まり、消費が生まれ、それによりお店には利益が出て、賑わいが創出されること。それがすなわち活性化ということです。では、どうすれば商店街は活性化するのか?
※岡山市経済局産業課 岡山市商店街歩行者通行量調査 昭和41年度以降通行量推移
より一部抜粋
a 商店街の現状
現在、内環状内には、大規模な商店街と呼ばれているものが4箇所あります。「表町商店街」「駅前商店街」「奉還町商店街」岡山駅地下の「一番街」。そして、商店街と言うよりは商業フロアに近い、近年できた岡山駅構内の「さんすて」も商店街と考えれば、合計5箇所になります。
アンケート調査もかねて、12月のクリスマス直前の週末に、実際に各商店街を歩いて見ました。その時、まず一番感じたのは、商店街によってかなり格差があることです。また、1つの商店街の中でもその場所によって格差があることも、同時に感じました。
では、各商店街の格差を、最もわかりやすい人通りで比べてみましょう。
最も人通りの多いのは、「さんすて」と「一番街」です。それに付随する「ビックカメラ」「高島屋」「オーパ」を通り、「ビブレ」までを結ぶ通りもかなりの人の流れがあります。
続いては、「表町商店街」です。こちらも同様に、それに付随する「フィッツ」「ロフト」「クレド」を結ぶ通りにも多くの人の流れが発生しています。
それに比べ、「駅前商店街」は、「ビックカメラ」をその入り口としているにもかかわらず、ほとんど人通りがなく、閑散とした状態です。
また、その人通りの年齢層にも特徴がありました。先の「さんすて」や「一番街」では、学生・OLを中心とした若年層が多く、反対に「表町」では、主婦などを中心とした壮年層が多くいました。これは、その商店街を構成している店舗の特徴、コンセプトによって差ができていると思います。
最後の「奉還町商店街」に至っては、人通りは若干あるものの、その人たちは商店街の買い物客というより、車の来ない安全な歩行者・自転車道として利用している通行人と言う感じで、商店街としては、こちらも円滑に機能しているとは言えない状態です。その為か、閉店している店舗もあちこちに見られ、一部では、いわゆるシャッター商店街の雰囲気があります。
また、「表町商店街」は8つの小さな商店街から成り立っていますが、各商店街単位で見ていくと、人通りは「天満屋」を中心とした「中之町」「下之町」に集中しています。そして、「天満屋」から離れるに従い、「上之町」や「栄町」では人通りは少なくなり、「紙屋町」以南では、数えるほどしか人通りがありませんでした。
(表町MAP)
では、これを感覚ではなく、具体的な数字で確認しましょう。
岡山市経済局産業課は平成20年3月23日(日)と24日(月)の2日間、各商店街の主要地点、計72地点(144方向)で歩行者通行量調査を行いました。この調査は1966年より、隔年毎に行われており、現状の把握と前回との比較を行うのに、有効なデータと言えます。
このデータ内の「標準化した通行量」によると、平均通行量を100とした場合、休日の表町地区は103(商店街のみは120)、駅前地区は135(地上部103、地下部206)、奉還町地区は54(商店街のみは20)という結果でした。

また、「休日/平日比の推移」によると、前回(平成18年)の124.3%に対し、今回は118.3%という結果でした。これは、調査箇所(中心市街地)の魅力が薄れ、郊外へ人が出ている事が要因と考えられます。平成4年には144.1%であったものが、年によって上下はあるものの,全体としても減少傾向にあることがわかります。

同じく表町地区を細かく見ていくと、休日の「天満屋アリスの広場前」の通行人数が18,944人なのに対し、「アムスメール上之町入口」が4,585人、西大寺町時計台角の「まつだビル」では、5,109人となっています。
では、市民の方々はどう感じているのでしょうか?
第1章のアンケートの問4.「中心市街地の空洞化が叫ばれていますが、活性化のために何が必要だとお考えですか?」との問いに、「商店街の活性化」と答えた人が415名。総回答数のなんと49%が商店街の活性化は必要だと、感じている結果が出ています。これは裏を返せば、商店街は確かに衰退しているが、もう一度頑張れば、まだまだ活性化は可能だ。と思っている人が多いということではないでしょうか?
B 商店街の問題点
まずはその成り立ちです。商店街を構成しているのは、1つ1つ単体の商店とその商店主であります。つまり、各々が1国1城の主である人達が商店街を構成しているので、自ずとその組織の結束力は強くはなりません。例えば、自分たちの商店街のイベントや新規事業を計画したとき、その意思統一は非常に難しいものがあります。なかには、「そんなことはめんどうくさい」と、最初から計画そのものに興味を示さない店主もいると聞きました。
その背景には商店主の高齢化に伴う、収入増加の意欲への減退、跡継ぎ不在による店舗経営継続の意志薄弱などが挙げられます。
次に、貯蓄などがあるために、商店経営が「生業」ではなく、「兼業」となっている商店主も少なくないことがあります。「昔からやっているから、とりあえず続けておこう」とか、「無理して、しんどい思いまでして、儲けなくていいや」という人も少なくありません。
同様に、店舗以外の配達や企業契約販売などで十分採算が取れるため、店舗の小売を軽視している人もいます。
他には、老舗と呼ばれるお店の中には、店主が変な誇りを持っており、接客マナーに問題がある。と言う話も聞きました。
そういったことも含め、消費者のニーズに即した変化が出来ない、しようとしない一部の商店主のために、志のある商店主の活動が妨げられていることが問題です。
あわせて、商店街の地価が高い、または賃貸料を高くしている為、仮に空き店舗ができても新規参入の機会が失われている、もしくは阻害されている傾向があります。その点は特に「モール」と呼ばれる郊外商業地域と大きく違うところです。
利便性の問題という点では、構造が横長の商店街では、消費者が購買商品を持って歩き回る必要があることが挙げられます。
また、「表町商店街」では、その道幅が広いゆえに、両側の店舗を全て見て歩くには往復しないといけないという事もあります。
他には、営業時間の問題です。夜7時〜8時にはほとんどの店が閉まってしまうという事です。平日はともかく、週末も閉店時間は変わりません。
快適性と言う面では、自転車利用者のマナーも問題になっています。「表町商店街」では、その道幅の広さゆえ、自転車に乗って通行する人が多く、特にベビーカー利用者や子供にとって危険な通りとなっています。
過去には駐車場の不足が問題点の一つと言われて来ましたが、現在ではいわゆる100円パーキングの増加等もあり、駐車場が問題とはいえなくなってきています。
次に消費者の購買行動の変化が挙げられます。近年、中心市街地のドーナツ化現象に加え、モータリゼーションが進み、郊外店舗が増加しました。それらは品揃えの多さ、安さ、ディスプレイの美しさなど、消費者をひきつけるに十分な魅力をもっていました。
あわせて、消費者の生活様式・意識の変化も起こり、例えば、スーパーで加工品の個別パック商品が増加するにつれ、商店街での品揃えの貧弱さが顕著になっています。また人間関係の希薄化につれ、顔の見える接客がわずらわしく感じる若い消費者が増え、お店に一度入ったら買わないと出にくい感じがする。などと、ますます商店街は敬遠されるようになってきています。
次の原因としては、飲食店の少なさです。「一番街」では、「美味の小路」として、飲食店を1箇所に集約している場所がありますが、「表町商店街」等では、飲食店が点在しており、どこで何が食べられるかが分かりづらいです。その上、核となる人気店舗がない為、食事を目的に来た人の購買を促すということができなくなっています。たくさんの店舗数でなくても、良い店・行列ができる店が何店舗かあればよいのです。この点も「モール」と比べて劣っている問題点です。
他には通信販売、いわゆるネットショップの普及があります。最大の特徴である、自宅にいながら商品が購入でき自宅に届く、と言う利便性に加え、一定金額以上の購入による送料の無料化、ポイント制度による割引、店舗を持たない故の低価格など、実際の店舗における購入と同じ、もしくはそれ以上の特典が得られます。実際に12月の売上で「楽天市場」では1日に30億円売上げたり、佐川急便のクール便が過去最高の取扱量を記録したりしています。また、通信販売はほとんどが、「目的購買」(目的のものだけ購入して、他のものは買わない)であり、「衝動購買」(予定していないが見たら買いたくなった)ではありません。この買い方に慣れた人が、商店街をぶらぶら見て歩いて、気に入ったものがあれば買う。という行動は取らないと思います。
では、これらの問題を解決していけば、商店街は活性化するのでしょうか?そのために今、実際商店街はどんな取り組みをして、何をしようとしているのでしょうか?何をしなければいけないのでしょうか?
第1項 (2)商店街の活性化策について
さて、商店街がこれから活性化していくためには何が必要で、何をどうすればよいのでしょうか?
まずは、全体的に見ていくと、大きく駅前&駅中と、表町の2箇所を中心に考えることができます。奉還町商店街はその立地とその長さの問題から、今のままでは商店街全体の活性化は難しいと思われますが、現在行われている西口再開発に合わせ、タイミングを逃さず、適切な対策を考えることで、発展していく大きなチャンスがあります。
さて、駅前&駅中と、表町の2箇所ですが、その2箇所を繋ぐように、県庁通りを整備し、2つの商店街に周遊性を持たせることが必要です。
ただし、買い物客は荷物を持っていることを前提で考えると、徒歩で移動するのは難しいので、何らかの移動手段が必要です。現在、路面電車が岡山駅前⇔県庁通り間の運賃を100円(通常140円)にし、利用促進を図っていますが、同様に路線バスの値引きや、コミュニティーバスの運行の検討の余地もあります。
ここで今一度、アンケートの結果を確認してみましょう。
第1章のアンケートの問6.「各商店街に空洞化が目立ちます。どのような商店や商店街を希望されますか?」とたずねたところ、「飲食」が40.2%、「ファッション」が23.0%、「品揃えを多くする」が15.6%、「食料品」が5.7%、「家電」が2.4%という回答がありました。
この市民の意見も踏まえ、前に挙げた問題点の解決策を考えてみます。
40%を超える「飲食」。これは先の問題点でも指摘しましたが、「モール」と呼ばれる施設と大きく異なり、劣っている点です。「モール」発祥のアメリカを始め、倉敷の「イオンモール」など国内の「モール」でも飲食施設の整備には力を入れています。倉敷イオンモールでは、今冬オープン以来の改装を行い、より一層の強化を行いました。また、アメリカでは店内に「スターバックス」等のカフェを併設した書店も多く見られたり、IKEA(家具店)内のレストランのミートボールが人気となり、家庭でも食べられるように商品化され、店内で販売されたりしています。最近では、岡山にもカフェを併設した書店が出てきました。「飲食」を強化する目的は、食事を提供する事で滞在時間を長くしたり、食事を目的としたお客さんを呼んだりすることで、その商店街での販売機会を増やす効果が見込まれるからです。
次に商店街内の連携で言えば、統一性のあるポイント制度や、地域クーポン・地域通貨の発行が挙げられます。現在では、ポイントカードは店舗ごとに発行されており、単体の店舗ごとの特典しかなく、商店街共通の特典はありません。
年に何回かイベント的に、購入額に応じた抽選会が行われている程度です。
ポイントが貯まれば、商店街共通のクーポン券と交換できるとかのシステムがあれば、消費者も1つの商店街内で、いろいろなものを購入するでしょう。
また、インセンティブをつけた地域通貨の発行でも同様の効果が得られます。すでに全国のいくつかの地域では、定額給付金の配布を見越して、地域通貨の発行を決めています。備前市では市内の小売店で使用できる10%のプレミアム商品券の発行を予定しています。また、高松市丸亀町商店街では地域通貨「KAME」を発行し、成功を収めています。「表町商店街」でも2003年に「サーフィス」という地域通貨の実験を1ヶ月間行いましたが、結果的には、実現していません。商店街で使える地域通貨を成功させるためには、商店街全体が協力し、組合なり連合会なりが強力なリーダーシップを取る事が必要になってきます。
※ 丸亀町商店街発行『KAME』
他には、「表町商店街」内の「栄町」の青年部が中心となって、活性化に取り組んでおり、「表町あきんど塾」(経営勉強会)を始めとし、表町サポータークラブの結成やイベントの計画など、いろんな試みを行っています。
また、アンケートにもあった「営業時間」ですが、現在「表町」では、核施設となる「天満屋」が夜7時半までの営業と言う事で、商店街のほとんどの店舗も時間をあわせて閉店しており、夜8時前には人影がほとんどありません。生活スタイルが夜型に移行してきている今の時代。それに合わせた変化もしていかなければいけません。
次に各商店街独自の魅力作りです。いわゆるオンリーワンの商品・商店の不在が、消費者にとって「どこで買っても一緒」「安いほうが良い」「簡単に手に入った方が便利」という意識につながり、郊外店舗や量販店、ネット販売にその購買先が移行しているのです。特に、品質に大きな違いのない商品については、商店街より安い値段で他が販売しているとなると、商店街で購入する理由はまったくなくなります。
成功例としては、古い店舗のまま、もしくはレトロ感のある店舗作りによって、売上を伸ばしている店舗もあります。今「昭和レトロ」は地域活性化のキーワードのひとつです。もちろん「表町商店街」にも何店舗かは成功しています。確かに、新しいもの、流行を追っていくと、キリがありません。頻繁に店舗や商品構成をかえていかなければならないので、そのコストも手間もかなりかかります。いっそのこと、古いまま立ち止まっていれば、新規の設備投資が不必要な事も事実です。
その上で、他施設との連携を取っていけばよいでしょう。例えば、朝市や産直市との連携。これは地産地消の推進にも有効です。または、若い世代の購買を促す為に、娯楽施設との連携。他には、地域住民だけでなく、郊外からの購買客、県外からの観光客の取り込みも必要です。岡山らしさのある商品開発や岡山を感じさせる施設の整備によって可能です。海外からのお客の取り込みにはデューティーフリーの制度も有効です。すでに一部のスーパーや量販店では実施しています。
活性化策についてはすでに全国的にいろんな試みがなされています。もちろん成功したところも、失敗したところもたくさんあります。しかし、成功した事例をそのまま持ってきても、成功するとは限りません。人と一緒で商店街も十人十色。しかし、その成功の要諦は、立地ではなく、店舗でもなく、行政の協力でもなく、すべては各商店主のやる気につきます。変わろうとする気がなければ、どんなにお金や時間をかけても、変わることはできません。魅力ある商店の集まりが魅力ある商店街。魅力ある商店街には自ずと人が集まり、売上が増え、その利益で改装ができ、その効果でより一層繁盛し、その結果後継者問題は解決し、末永く店舗は継続でき、ますます活性化していきます。
その商店街の活性化は、中心市街地の活性化のおおきな要因となると確信しています。
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